ハッピークローバー
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第四十九話 ラフな格好をその四
「皇室の料理人の人達の腕なんて」
「世界屈指ね」
「そうですよね」
「私の国もうそうした存在ないけれど」
「イタリアは」
「今は共和制だから」
二次大戦までは王制だった、だがそれがその時を境にして変わったのだ。そのこともまたイタリアの歴史である。
「だからね」
「それで、ですね」
「王室がなくなって」
「そちらの料理人の人達はですね」
「いないけれど」
それでもというのだ。
「やっぱりそうしたお家の料理人に採用されるとなると」
「相当なものですね」
「滅多なもの口に出来ない人達でしょ」
「皇室の方々は」
「王室でもね」
皇室即ち皇帝と王室つまり王では格が違う、皇帝は王の上に立ち王の位を認めることが出来る立場にあるのだ。
「だからもう変な間違いなんてね」
「しない位のですね」
「レベルよ」
「そうですね」
「私達なんてね」
先輩はスープを見つつ話した。
「そんな人達と比べたら」
「子供みたいなものですね」
「這い這いどころか生まれたばかりの」
そのレベルのというのだ。
「存在よ」
「そうですね」
「それでお家で作る位なら」
「それならですか」
「多少の間違いがあっても」
「いいですか」
「時々ね、国を代表する人達に食べてもらう訳でもないし」
そうしたことはなくというのだ。
「それで売ることもないでしょ」
「はい、別に」
「だったらね」
それならというのだ。
「いいわよ、それで鈴木さんのお母さんの教え方はね」
「いいですか」
「そう思うわ、のびのびでね」
それでというのだ。
「鈴木さんにも合ってるわよ」
「私にもですか」
「怒られたら委縮する方でしょ」
「はい、実は」
かな恵もその通りだと答えた。
「何か言われたら身体が固まる方です」
「だったらね」
「お母さんみたいにですか」
「味付けでなくてね」
「怪我に注意する風に言うのがですか」
「いいわ、結構お店だと修羅場になるけれど」
調理自体がだ、だからこそわりかし以上に荒っぽい行動や言葉が出ることも今も時としてあるのだ。
「それでもね」
「お家だとですか」
「そこまでじゃないしね」
「お母さんみたいにですか」
「怪我にさえ注意って言うのでね」
それでというのだ。
「いいのよ」
「そうですね」
「そう、だからね」
「これからもですね」
「お母さんに教えてもらったわいいわ」
「お料理のことは」
「そうよ、何かいいお母さんみたいね」
先輩は笑ってこうも言った。
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