ハッピークローバー
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第四十九話 ラフな格好をその三
そうしてだ、その冷麺を作るが。
かな恵がキムチを切るのを見てだ、スープを作る先輩は言った。
「手際いいわね」
「包丁捌きいいですか」
「ええ、前からよかったけれど」
「今はですか」
「よりよくなったわ」
「普段からやってるからですかね」
かな恵は切りながら応えた、目は包丁とキムチにある。
「だからですか」
「お家でもお料理してるのね」
「お母さんを手伝って」
「それね」
まさにとだ、先輩は応えた、スープは鳥ガラである。
「やっぱり」
「そうですか」
「毎日やっていたら」
それでというのだ。
「やっぱりね」
「上手になりますね」
「お料理もね」
「そうですよね」
「それも怒られずに」
それがなくというのだ。
「萎縮しないでいられたら」
「余計にいいですか」
「お母さん怒る?」
先輩はかな恵に問うた。
「お料理の時は」
「怪我をしない様に言われていて」
かな恵は先輩の問いにこう答えた。
「不注意で怪我したら怒られます」
「危ないからよね」
「そうですが」
「そうじゃないと怒られないのね」
「切り損ねたり味加減間違えても」
それでもというのだ。
「別にです」
「怒られないのね」
「はい」
そうだというのだ。
「怪我とか事故になりそうな場合以外は」
「それだとよ」
「上手になりますか」
「傍に鞭持った人いて集中出来ないでしょ」
「何かあったらすぐにぶたれるから」
「怖くてね」
人間とはそうしたものだ、傍に恐怖が存在するとその恐怖にばかり気が向き集中なぞ出来なくなってしまう。
「そうなるからよ」
「上手にならないですか」
「怖がって気がそっちにいく分ね」
「そうなんですね」
「怪我とか事故を怒るのはいいわよ」
「不注意のね」
「けれど失敗で殴るとか怒鳴るだと」
そうなると、というのだ。
「どうしてもね」
「上達も襲いですか」
「そうなるから」
「うちはですか」
「いいと思うわ」
「ですね、お母さんが言うには自分もよく味付けとか失敗するから」
かな恵は母の言葉を思い出しつつ話した。
「ですから」
「それはいいって言われてるのね」
「別に皇室の料理人でもないし」
「ああ、日本の」
「あそこまでなると」
「失敗は許されないわね」
「そうですよね、まあそもそも」
かな恵はキムチを切りつつ先輩に話した。
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