イベリス
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第八十話 夏祭りが近付きその四
「これ位はね」
「そうなの」
「そうよ」
まさにというのだった。
「本当にこれ位はね」
「じゃあこれからも」
「お願いね、しかしね」
「しかし?」
「いや、あんた前から思っていたけれど」
こう前置きしてだ、母はこうも言った。
「遠慮がちよね」
「そうかしら」
「謙虚ね、それはいいことでも」
それでもと言うのだった。
「水臭いことはね」
「駄目なの」
「親子なのよ」
この間柄だからというのだ。
「それならね」
「これ位はなの」
「本当にね」
「いいのね」
「親子で一々遠慮されたら」
それならというのだ。
「いいわよ」
「そう、だからね」
それでというのだった。
「これ位はね」
「何でもないのね」
「そうよ」
別にというのだ。
「これ位はね、親子ならね」
「遠慮はよくても」
「水臭いことはね」
このことはというのだ。
「止めてね」
「遠慮はよくても」
「水臭いことは駄目だから」
「じゃあ気をつけるわ」
「まあ図々しいよりいいけれどね」
「私図々しのはね」
どうかとだ、咲はむっとして答えた。
「嫌いだから」
「そのことも昔からよね」
「凄いの見たことあるしね」
「図々しい人で」
「普段ふんぞり返って底意地悪いのに」
そうした態度だがというのだ。
「人に仕事押し付けてばかりでね」
「人にもの頼む時や借りる時はなのね」
「へらへらして鞄の中漁ったりするから、借りる時に」
「それはかなりね」
「下衆に思えたから」
そこまでというのだ。
「だからね」
「そうした人になりたいないから」
「気をつけてるの」
「そうなのね」
「図々しいイコール下衆だってね」
「そこまではいかないわよ」
母はそれは否定した。
「幾ら何でもね」
「そうなの」
「ええ、けれどね」
それでもと言うのだった。
「謙虚なこと自体はね」
「いいことで」
「逆に水臭いことはね」
「よくないのね」
「そう覚えておいてね」
「水臭いは駄目ね」
「そうよ、そうされた方が嫌だから」
「お母さんにもなの」
「謙虚はよくても」
親子中でもというのだ。
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