レーヴァティン
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第二百七十四話 その時が来てその十
「地獄に堕ちるよりな」
「辛いな」
「俺としてはな」
「だからだな」
「餓鬼にはなりたくないな」
絶対にというのだ。
「本当にな」
「地獄の方がましか」
「ああ、お前はどう思うんだ?」
「同じだ、地獄には悪人が堕ちるが」
それでもというのだ。
「餓鬼の方は浅ましい屑が堕ちる」
「お前の親戚の人はか」
「確実にだ」
まさにというのだ。
「そっちに堕ちている筈だ」
「まあそうだろうな」
「それに相応しい、そしてあいつが堕ちているからだ」
「餓鬼道にか」
「俺は布施餓鬼なぞしない」
英雄は言い切った。
「何があってもな」
「その親戚がいるからだな」
「そうだ」
まさにというのだ。
「絶対にするものか」
「その親戚は餓えと渇きに苦しみ続けろか」
「そうだ、精々苦しめ」
英雄は冷淡に言った。
「生まれ変わるまでな」
「そういうことだな」
「兎角最低の屑だった」
その親戚はというのだ。
「人間何かいいところがあるというが」
「それは違うか」
「それは『人間』の話だ」
英雄はこう久志に言った。
「餓鬼の話ではないな」
「ああ、その親戚は人間の人生を送っていてか」
「既にだ」
「餓鬼になっていたんだな」
「今はそう考えている」
まさにというのだ。
「そしておそらくこれからもな」
「そう考えるんだな」
「そうして生きるだろう、普通に言う悪人以下の屑はな」
「餓鬼になるか」
「地獄の亡者は救おうと思う」
英雄としてはだ。
「しかしだ」
「餓鬼はそうは思わないか」
「全くな、どうにもならない浅ましい最低の屑は餓鬼になり」
今自分が言っている様にというのだ。
「そしてだ」
「ずっと苦しむんだな」
「そして人間だった頃のことを想えば」
「当然か」
「そう考えている」
「それも一つの考えだな、まあ俺もな」
久志自身もだった。
「餓鬼についてはな」
「布施餓鬼はしないか」
「そこまでは考えてないけれどな」
それでもというのだ。
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