レーヴァティン
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第二百七十四話 その時が来てその九
「俺はな」
「そうなんだな」
「そういうことだ」
「成程な、そうした事情があったんだな」
「そういうことだ」
「ずっと気になっていたけれどわかったぜ」
笑顔でだ、久志は英雄に話した。
「お前の鉄仮面がな」
「鉄仮面か」
「ああ、そのこともな」
「成程な、俺は鉄仮面か」
「表情が変わらないってのはな」
そうした者はというのだ。
「そう呼ぶんだよ」
「そうした表現もあったか」
「知らなかったか」
「ポーカーフェイスは知っている」
この言葉はというのだ。
「そちらはな」
「よくそう言うな」
「しかし鉄仮面はな」
それはというのだ。
「あまりな」
「知らなかったか」
「ああ、今までな」
「そういう言葉もあるんだよ、納得したか」
「した、言われてみればそうだな」
「無表情だとそうだな」
「鉄仮面だ」
その通りだとだ、英雄も答えた。
「そうも言えるな」
「そうだろ」
「ああ、俺は鉄仮面だな」
「そうなるぜ、俺から見たらな」
「そしてそうなった理由はだ」
再びこの話をした。
「親戚を見てだ」
「そういうことか」
「南港かダムの底で冷たい思いをしているな」
「死んでな」
「魂は生まれ変わってだ」
そうなってというのだ。
「餓鬼になっている」
「そうなっているな」
「話を聞く限りそうだな」
「地獄に落ちるか」
若しくはというのだ。
「それかだ」
「餓鬼道か」
「そちらに堕ちる」
「餓鬼の方が嫌だな」
ここまで聞いてだ、久志は言った。
「俺も六道のことは知っていてな」
「餓鬼道と地獄道のこともだな」
「知っているけれどな」
「餓鬼道の方が辛いな」
「堕ちればな」
「地獄に堕ちたら生前の罪の報いを受けるさ」
このことは余りにも知られていることだ、人間生きていて地獄の話を聞かなかった者もそうはいないだろう。
「そうなるさ、けれどな」
「餓鬼道はな」
「やっぱり生前の罪を受けるさ」
「浅ましい行いのな」
「その受ける報いがな」
餓鬼のそれはというのだ。
「相当にな」
「辛いものがあるな」
「ああ」
実際にというのだ。
「俺が見てもな」
「そうだな」
「ずっと飲めず食えずで渇いて餓えてな」
「苦しみ続ける」
「そんなのはな」
どうしてもというのだ。
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