星河の覇皇
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第八十二部第五章 撤退する者達の焦りその十三
「軍人ではない」
「それでは」
ここで幕僚の一人が言ってきた。
「長平の戦いの」
「古代の中国のか」
「はい、戦国時代の」
東周時代とも言う、当時中国の天子とされていた周王室が東に遷都してから滅ぶまでの時代であるからだ。
「あの時の戦いですが」
「秦と趙のだったな」
「あの戦いでは最初は」
「趙の将軍は廉頗だったが」
「秦の策に乗り」
「机上の空論だけの戦争を知らない者が総大将になった」
「それも初陣の」
そうした者であったのだ。
「そしてその趙に対して秦はというと」
「白起を出した」
「秦で一番の名将であり戦を知る」
「その彼が出てな」
「はい、そして」
そのうえでというのだ。
「趙は机上の通りに動き」
「白起に囲まれてな」
「四十五万の大軍を失いました」
その大軍が全て囲まれそして降った者達も殆どが生き埋めにされたのだ、これが秦の統一を決定付けたとされている。
「廉頗が将軍のままなら」
「趙はそうはならなかったな」
「はい、今でも言われていますが」
「実に愚かな話です」
「幾ら机上でよくともだ」
優れた駒の動かし方をしてもというのだ。
「戦場は違う」
「その通りですね」
「だから予定通りにはだ」
その様にはというのだ。
「いくものではない、しかし」
「予定はですね」
「立てておくことだ」
例えその通りにいかずとも、というのだ。
「道標になるからな」
「その立てた戦略が」
「だからだ」
それ故にというのだ。
「この戦争でもだ」
「計画を立てていましたね」
「そうしていた、逆に戦争を行うにあたって計画を立てないことは」
「有り得ないですね」
「まずは机上でもだ」
それが現実でなくともというのだ。
「やはりな」
「まずはですね」
「計画を立てておく」
「そしてそれを道標にし」
「現実を見てですね」
「現実に合わせて臨機応変に動いていきますね」
「そうしてだ」
そのうえでとだ、アッディーンはさらに話した。
「戦争を進めていく、それでだ」
「ティムール軍の次の防衛ラインを突破すれば」
「その時はですね」
「ダマスカス星系に拠点を築き」
「そこに整備施設も物資も集積し」
「サマルカンド攻略の拠点としますね」
「サマルカンド攻略と共に」
それに加えてというのだ。
「ティムールの残る領土もだ」
「占領、攻略していく」
「その戦略もあるので」
「だからですね」
「ここはですね」
「あの星系を拠点として」
「腰を据えていきますね」
「バグダートはサハラの中央にあり」
開戦前に首都機能を移転させたこの星系の話もした。
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