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星河の覇皇

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第八十二部第五章 撤退する者達の焦りその十二

「勝てはしない、進撃は重要だが」
「はい、それでもです」
「素早い進撃と迂闊な拙攻は違います」
「進撃は速くとも慎重であれ」
「周辺と整備、捕球には気を使え」
「それも常にといいます」
「それでだ」
 この鉄則があるからだというのだ。
「いいな」
「承知しております」
「そのことは我々も」
「ならですね」
「ここは迂闊に進まず」
「次の戦いの後は」
 一気に進まずにというのだ。
「一旦進撃を中断してもいい」
「まずはですね」
「整備と補給の基地を整える」
「足掛かりを築きますね」
「まずは」
「そしてそのうえで、ですね」
「再び進みますね」
「そうする、最初からだ」
 まさにというのだ。
「その戦略だったがな」
「サマルカンド星系攻略前にですね」
「一旦ティムール領内に軍事拠点を置く」
「そしてそのうえでさらなる進撃にかかる」
「その予定でしたね」
「そうだった、そしてその予定通りにだ」
 まさにというのだ。
「進むということだ、だが」
「だが?」
「だがといいますと」
「計画や予定は緒戦は机上のことだ」 
 これだけのことだったというのだ。
「所詮な」
「現実は違う」
「左様ですね」
「だからですね」
「現実はその通りにはいかないですね」
「そうだ、むしろだ」
 アッディーンはさらに話した、それはまさにこれまで多くの戦争を経てそれを知っているからこそ言えることだった。
「机上通りにいくなぞ」
「滅多にないですね」
「実際の戦場では」
「戦場は常に動きます」
「予想していなかったことも起こります」
「そうした場所なので」
「机上通りには」
 幕僚達も話した。
「机上で立派でもです」
「実際の戦場ではどうか」
「そこで負ける様な者もです」
「普通にいます」
「そうだ、若し机上で出来たことが常に完璧に出来るなら」
 戦場でとだ、アッディーンは話した。話すその間も顔は戦場を知る者の顔であった。まさに実際のそこをだ。
「戦争は楽だ」
「全くですね」
「それはですね」
「これ程楽なことはないですね」
「全てが机上通りにいくなら」
「何と楽なものか」
「だがそれは違い」
 現実の戦争はというのだ。
「やはりな」
「どうしてもですね」
「机上は机上であり」
「現実は違い」
「それで、ですね」
「机上を完璧と思うなら」
「それは戦争を知らない者だ」 
 アッディーンは断言した。 
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