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展覧会の絵

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第十三話 ベアトリーチェ=チェンチその十一

 雪子は朝にそのニュースを自分の家で忌々しげに聞いていた。そしてだ。
 共に食事を摂る一郎にだ。こう言うのだった。
「これでまた一からやりなおしね」
「薬の入手ルートだね」
「そうよ。誰がやったのよ」
 こう言うのだった。自分の向かい側の席に座っている彼に。
「藤会だけじゃなくてあのお店もって」
「そうだね。これでまたね」
「薬の入手ルート。どうしようかしら」
「心当たりがあるかな」
「そうね。後はね」
 考える顔になってだ。雪子は答えた。
「中国系かしら」
「チャイニーズマフィアだね」
「中華街に行けば会えるかしら」
「いや、我が国の中華街は健全だからね」
「会えないのね」
「そうだよ。国によっては違うけれどね」
 アメリカ等では中華街によってはマフィアの温床になっているのだ。その為深刻な問題になっているケースもある。だが日本の中華街は健全でそうした組織はいないのだ。
 だからだ。一郎も言うのだった。
「この神戸にしても横浜にしてもね」
「あと長崎もなのね」
「そうだよ。期待しない方がいいよ」
「じゃあ外国人街はどうかしら」
 神戸は港であることから外国から来ている者も多い。そこはどうかというのだ。
「そっちは」
「ああ、そちらもね」
「期待できないのね」
「今度はイタリア系のマフィアだよね」
「あっちの方が薬をよく扱ってるでしょうし」
「それはそうだけれどね」
「日本には入ってきてないのね」
「そうだよ」
 こちらもだった。いないというのだ。
「それこそ。薬を手に入れようと思ったら」
「そう簡単にはいかないみたいね」
「この神戸だと繁華街の裏手かな」
 そうした場所で怪しいやり取りが行われるのは神戸だけではない。東京でも大阪でもそれは同じだ。賑やかな世界の裏にこそ悪があるのだ。
「そこになるかな」
「東京で言うと歌舞伎町よね」
「そう、あそこなら簡単に手に入るだろうね」
「神戸よりも楽にだよね」
「あそこはまた特別だよ」
 日本の首都であり世界有数の繁栄した街であるのは伊達ではない。悪も多い街なのだ。
「そこに行けばね」
「神戸よりずっと簡単に手に入るのね」
「そうだよ。けれどだよね」
「遠過ぎるわよ」
 むっとした顔になってだ。雪子は言った。
 そのうえでコーヒー、朝のそれを飲みながらだ。こう兄に言った。
「大阪ならともかくね」
「大阪に行く?それじゃあ」
「行こうかしら。今神戸は藤会もああなったし」
「それにあのお店も壊されたしね」
 だからだ。入手ルートが破壊されたというのだ。
「どうしようもないからね」
「じゃあ神戸jじゃなくて」
「大阪がいいかしら」
 真剣にだ。雪子はあの街に行くことを検討していた。
 そしてだ。苦々しい顔でこう言ったのだった。
「けれど。とにかく腹が立ったわ」
「気持ちはわかるよ」
「何かむしゃくしゃしていらいらしてきたわ」
「じゃあストレスを解消しないとね」
「今日。ちょっと学校休もうかしら」
 あっさりとだ。雪子は言った。 
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