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展覧会の絵

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第十三話 ベアトリーチェ=チェンチその十

「時間が経つことを早く感じるんだ」
「そういうことだよね」
「そうだよ。じゃあ」
「今から後片付けだね」
「他の部員の人は今日は来なかったね」
「あっ、部長が外に誘ったんだ」
「外に」
「そう。野外デッサンにね」
 それに誘ったというのだ。他の部員達を。
「だからいないんだ」
「そうだったんだ」
「そうなんだ。部長は野外が好きなんだ」
 芸術は部屋の中にあるだけではない。外にもあるというのだ。即ち芸術は至る場所に存在しているということだ。決して一つの場所にだけあるものではないのだ。
「だから。皆をね」
「そういえば僕にもメールが来てたかな」
「誘いに乗らなかったんだ」
「この絵のことがあるから」
 今描いているベアトリーチェ=チェンチ、それにかかっているからだというのだ。
「だからね」
「僕もね。彫刻のことがあるからね」
 和典はそちらだった。彼もすることがあるのだ。
「残ったんだ」
「成程ね。それじゃあね」
「うん、二人で後片付けをしようか」
「掃除はいいことだよ」
 その掃除についてもだ。十字は言ってきた。
「清めることだから」
「ああ、汚したその後で」
「そう、清めることだからね」
 だからいいというのだ。掃除もまた。
「むしろそれを最後にしないことは何かをしたことにはならないよ」
「清めることが大事だからなんだね」
「そう。じゃあ掃除をしよう」
「うん、それじゃあね」
 こうした話をしてだ。そのうえでだった。
 十字は和典と共に部室を掃除した。そうして最後に清めたのだ。その夜彼はまた出掛けた。翌朝また世間を騒がせる事件が報道されていた。
 朝のアナウンサー達がだ。蒼白になった顔で言っていた。
「今度はお店が、ですね」
「はい、深夜に急に襲われてです」
「そしてそのうえで、ですよ」
「また神戸で殺人事件です」
 青い顔になっているアナウンサーにだ。コメンテーター達が答える。
「それもまた滅茶苦茶に殺してるらしいですね」
「店長も店員も全滅らしいですよ」
「現場は壮絶らしいです」
「凄いみたいですよ」
「本当にあれじゃないですか?一連の事件って」
 それがどうなのかとだ。彼等は話していた。テレビの中で騒然となっている。
「同じ犯人じゃないですか?」
「というか殺し方同じですよ」
「じゃあやっぱり同一の犯人じゃないんですか?」
「こんな殺し方する人いませんよ」
 他にはだというのだ。
「だから間違いないでしょ」
「これ、藤会系の事務所襲ってる犯人と同じですよ」
「同じ犯人に決まってるますよ」
「その可能性は高いですね」
 アナウンサーもだ。コメンテーター達の言葉に頷いた。
 そしてだ。彼はこう言うのだった。
「もう何十人も殺してますけれどね」
「それも普通はないですよね」
「シリアルキラーですよ」
 所謂精神異常の殺人鬼ではないかという言葉も出て来た。
「それが今神戸に出てるんですよ」
「大変なことですね。今度は誰が殺されるのか」
「恐ろしいことになってますよね」
「全くですよ」
 彼等はテレビでこんなことを話していた。そしてだ。
 新聞でもネットでも話題はこのことで持ちきりだった。とにかく誰もがこの連続殺人事件について話をしていた。そしてその中でだった。  
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