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イベリス

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第七十六話 狭いが多彩な街その八

「淋病になって懲りるまでそうだったってね」
「淋病って」 
 咲はこの病気の名前を聞いただけで心から引いた、高校一年でしかもそうした経験がない人間であるからだ。
「性病よね」
「そうよ、何でも付き合ってた相手からなったって言われて」
「それで検査したら」
「合格って言われたらしいわ」
「それ合格?」
 そもそもとだ、咲は聞き返した。
「一体」
「悪い意味でね」
「ああ、そっちで言うとなのね」
「合格でね」
 それでというのだ。
「お母さんはね
「叔母さん言ったの」
「そこから治療受けて」 
 淋病のというのだ。
「もうそんなこと止めてね」
「一人の人となの」
「その時付き合ってた人達皆と縁切ったそうよ」
「性病になって」
「その治療大変だったそうでね」
「痛いのよね。おしっこしたら」
「それ男の人だから」
 男性の場合だというのだ。
「女の人は痛まないの」
「そうなの」
「けれど治療は結構時間がかかってね」 
 それでというのだ。
「性病の怖さもお医者さんから聞いて」
「同時に色々な人とのお付き合い止めたの」
「暫くそうしてね」
「叔父さんと?」
「付き合って結婚して今でもね」
「浮気はしてないのね」
「性病の怖さ知ったそうだから」
 淋病になってというのだ、尚この病気は聖書にもある。コロンブスがもたらしたという梅毒とはそこが違う。
「そこから一人だけとね」
「お付き合いする様になって」
「それでね」
 そのうえでというのだ。
「お父さんと知り合って」
「一人だけとお付き合いして」
「今に至るそうなの」
「そうだったの」
「だからね」
 愛は強い声で話した。
「そのことからお母さんに言われたの」
「自分を尊敬するなって」
「それなら他の人尊敬しろってね」
「言われたのね」
「同時に何人の人とお付き合いして」
 つまり浮気も普通にしてというのだ。
「それでね」
「性病になるとか」
「そんな人間よりももっと立派な人をね」
「尊敬しろって言われたのね」
「そうよ」 
 まさにというのだ。
「言われてね」
「叔母さん自分を尊敬するなって言ったの」
「お父さんには笑ってこんなしょぼくれたおじさん何処がいいんだって言われたわ」
 自分の父からはそう言われたというのだ。
「それで終わりだったわ」
「そうなの」
「まあそれで私も親は親でも」
 このことは普遍でもというのだ。
「そこまで言うならって思って」
「それでなの」
「お父さんお母さんじゃなくてね」
「他の人達を尊敬することね」
「ある人はプロ野球の監督さんを尊敬してるわ」
「あっ、ファンで」
 咲はそれは何故かすぐにわかった。 
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