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展覧会の絵

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第十二話 ジェーン=グレンの処刑その一

                第十二話  ジェーン=グレンの処刑
 次から次にだ。藤会の構成員達に対する無残な連続猟奇殺人が行われていた。その酸鼻を極める事件に対して。
 警察は焦りを感じていた。それで今回の事件現場でで話すのだった。
「今日もまたか」
「今日は七人か」
「七人がまたミンチになったのか」
「今回も酷いものだな」
 藤会の系列事務所の一つだった。今日はそこで殺されていたのだ。今回も辺り一面鮮血で染まり無残な屍が幾つも転がっている有様だ。
「相変わらず内蔵を引きずり出したり目をくり抜いたりな」
「首や手足をぶった斬るなり」
「この死体なんか腹で真っ二つだぞ」
 切断された部分から内蔵を出してドス黒い血の中でだ。人相の悪い男がこと切れている写真もある。他の写真にしてもむごたらしいものばかりだ。
 その死体達を見てだ。あのトレンチコートの刑事が言った。
「どう考えても同じ奴の仕業だな」
「はい、そうですね」
「そうとしか思えませんね」
 部下の制服の警官達もだ。その死体達と事件現場を見て刑事に応える。
「この有様は」
「どう考えてもですね」
「そうだ、最初からそう思っていたがな」
 連日連夜の殺人を見てだ。それが確信になったのだ。
「バラシ方といい手際のよさといいな」
「ですね。しかも証拠を一切残していなしい」
「そこまで見れば」
「同じ奴の仕業にしか思えない」
 これが彼等の結論だった。そのうえでだ。
 刑事はここでだ。こうも言ったのだった。その言う言葉とは。
「しかし。これで藤会はだ」
「はい、壊滅状態ですね」
「本部の神戸でこの有様ですから」
「全国規模の組織だがな」
 その藤会ですらだ。本拠地の神戸で徹底的にやられればだというのだ。
 それでだ。彼等は話すのだった。
「これで終わりだ」
「そうですね。とんでもない奴等ですけれど」
「これで終わりですね」
「本当は警察がやらないといけないんだけれどな」
 刑事は難しい顔で言う。
「ヤクザだの何だのは警察で取り締まるべきなんだ」
「それがこの殺人鬼によって為されてますからね」
「情けない話ですね」
「全くだ。しかしこれは明らかに犯罪だ」
 連続猟奇殺人、それに他ならないというのだ。
「このホシは絶対に見つけ出す」
「そして捕まえますか」
「そうしますか」
「絶対にな。法律を破った奴を放っておけるか」
 警察は焦りと共に危機を感じていた。連続猟奇殺人に対してだ。
 このことは警察の外にも伝わっていた。当然八条学園や他の場所にもだ。それは十字のいる教会も同じだ。
 教会で神父から警察の焦りや危機感の話を聞きだ。十字は淡々と述べた。
 彼は今イタリア風のコーヒーを飲んでいる。そうしながらだ。こう言ったのである。
「神の御教えはこの世の法律より上にあるよ」
「はい、そうですね」
「その通りだよ。神の御教えこそがね」
「最も尊くですね」
「守られるべきものだよ。だからこそ彼等はね」
「裁かれた」
 そうなったというのだ。
「この国の警察は色々と言っているけれど」
「捜査をしていますよ」
「わかっているよ。けれどね」
 だがそれでもだというのだ。十字は。
「そんなものは何にもならないよ」
「その通りですね。枢機卿に対しては」
「この国の警察は確かに優秀だよ」
 十字はこのことは認めた。やぶさめではないという態度で。
 だがそれでもだ。彼はこうも言ったのだった。
「けれど僕の手掛かりを掴んだり捕まえることはね」
「できませんね」
「決してね。できないよ」
 あくまで淡々として述べる十字だった。
「彼等にはね。それでだけれど」
「はい、藤会はですね」
「藤会はもう潰すべき場所は潰していってるよ」
 そうしたというのだ。 
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