ハッピークローバー
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第三十七話 夏の食べものその十
「阪神があったらな」
「それだけで幸せよね」
「あそこまで好きになれる存在があったらな」
それだけでというのだ。
「本当にな」
「人生幸せね」
「特に誰にも迷惑かけてないしな」
「あの子妹さんはカープファンなのよね」
一華は梅酒をロックで飲みつつ話した。
「やっぱり凄いファンで」
「所謂鯉女だね」
達川が応えた。
「妹さんだから」
「そうよね」
「俺その娘知ってるよ、何でも人にもの貸したり教える時にね」
「ちゃんとそうしたことするの」
「優しい娘らしいけれど」
それでもと言うのだった。
「その前に絶対に今のカープの監督さん誰とか背番号八は誰とか」
「聞いてくるの」
「答えられなかったら自分から言ってね」
そうしてというのだ。
「貸したり教えたりするらしいよ」
「そうして覚えてもらうのね」
「そうみたいだよ」
「そこまでカープ好きなのね」
「身に着けてるの赤でね」
カープの赤である、言うまでもなく。
「毎年お正月は厳島にお参りらしいよ」
「筋金入りね」
「その娘も幸せだろうね」
「そこまでカープが好きだったら」
「お兄さんと一緒でね」
「必死に応援出来る、好きな相手がいたら幸せね」
「夢中になれたらね」
それでというのだ。
「成海っちもそう言ったけれど」
「ヒロ君もなのね」
「そう思うよ」
実際にというのだ。
「本当にね」
「そうなのね」
「それに兄妹の仲は悪くないらしいし」
応援しているチームはそれぞれ違うがというのだ、これによって揉めることがあるのも人間というものだ。
「いいよね」
「ああ、阪神も広島もね」
一華は話を聞いて納得した顔で達川に応えた。
「お互いはね」
「嫌いじゃないね」
「嫌いなのはあくまで巨人」
邪悪の権化にして全人類普遍の敵であるこのチームだというのだ。
「そうよね」
「そうだからね」
「ああ、兄貴の方強烈に巨人嫌いでな」
成海がまた言ってきた。
「阪神が巨人に負けるとな」
「不機嫌になるんだな」
「無茶苦茶な」
「それ妹さんもだよ」
達川も言ってきた。
「そのことも有名らしいんだよ」
「兄妹で強烈なアンチ巨人らしいんだな」
「そうなんだよ」
これがというのだ。
「お互いに負けてもちょっと言い合う位でもな」
「巨人にはか」
「敵対心丸出しでな」
「負けると怒るんだな」
「そうらしいな」
「やっぱり敵は巨人か」
「幾ら弱くても巨人は巨人だからな」
このことは変わらないというのだ。
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