イベリス
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第六十九話 恋愛について考えだしてその五
「かなりです」
「痛くて辛くて苦しくて」
「地獄の様なもので」
それでというのだ。
「あくまで酷い場合ですが」
「それを癒されないとです」
「駄目ですか」
「自殺することもありますし」
その場合もというのだ。
「そうでなくとも心が壊れることもです」
「あるんですね」
「だから怖いので」
「店長さんとしてはですか」
「来られたら」
その場合というのだ。
「占わせて頂きます」
「それで救われますか」
「出来る限りと言いましたが」
それでもというのだ。
「必ず救うとです」
「そのおつもりで、ですか」
「占わせて頂きます」
「そうですか」
「目の前が真っ暗になるまでの絶望を経験しますと」
そうなると、というのだ。
「人間どれだけ辛いか」
「私そこまではないですが」
「それは幸いです、それを乗り越えることも難しいです」
速水はこうも話した。
「非常に」
「難しいですか」
「はい、ですから」
それでというのだ。
「及ばずながら」
「店長さんがですか」
「その助けにならせて頂きます」
「そうなんですね」
「人を救えれば」
切実な言葉だった。
「これ以上有り難いことはありません」
「それが出来れば」
「店長さんは嬉しいですか」
「人を救うことが出来れば」
「失恋でもですね」
「そうです、占いもまた人を救う為にあるものですから」
それ故にというのだ。
「私としてはです」
「失恋でも救えたらですね」
「嬉しいです、ただ絶望に陥るのは失恋とは限らないことがです」
「それが人間ですか」
「その通りです、人間程複雑で難しいものはありません」
速水は咲に話した。
「ですから恋愛だけでなく」
「他のことでもですか」
「絶望もするのです」
「そうなんですね」
「ですから」
それ故にというのだ。
「素晴らしくもあります」
「複雑で難しいからですか」
「そうです、ですから」
「素晴らしいんですか」
「魅力的です、これ以上はないまでに醜く」
優しい目と声で話した。
「そして美しい」
「それが人間ですか」
「そのことを覚えておいて下さい、あらゆることに絶望しても」
それでもというのだ。
「人間そして世の中に対して絶望することはありません」
「人間や世の中自体にはですか」
「例えどれだけ絶望的な状況でも」
それに陥ってもというのだ。
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