綾小路くんがハーレムを構築する話
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清隆くんのお宅訪問 佐藤編
3月中旬の朝。
チュンチュン……
佐藤「あれ……?ちょっと待って……も、もう朝?」
私、佐藤麻耶はベッドで寝ていた状態から、一気に布団をはねのけて慌てて時間を確認した。
ヤバい……全く寝れてない!!!
確か……昨日の夜寝るとき、明日が私の番だと思ったら凄く緊張しちゃって……
明日に備えて早く寝なきゃって考えていたら妙に頭が冴えちゃって気付いた時にはもうこんな時間に……
佐藤「うぅ……今からこんなに緊張してたら身が持たないよね?」
でも、しょうがないじゃん?綾……き、清隆くんを知れるチャンスなんだもん!
この機会を逃す訳にはいかないもん!
逃す訳にはいかないんだけどさ……?
問題が大アリなんだよね……私の場合。
なぜなら……私は………
清隆くんに一度告白して見事に撃沈しているから……
佐藤「あーーーもうーーーなんであの時告白しちゃったの~私~//////戻りたい戻りたいよ~今すぐあの日に戻りたいよーーー!!!」
私は叫びながら、ベッドの上で頭を抱えていた。
本当にあれは私の判断ミス……恋は盲目と言うけど、勢いで即告白しちゃうなんて~~//////
私のバカバカバカ~~。
ふぅー……今更過去を変えられるわけじゃあるまいし、こんなこと考えていてもムダだね……。
私は少し落ち着いて冷静になった後、顔でも洗おうと洗面所に向かった。
顔を洗ってすっきりして、鏡を見てみると隈が無かったので安心した。緊張して眠れていないおかげで気分はあまり良くないけど……
佐藤「はぁ~せっかく綾……清隆くんと前より距離が近くなれた気がするんだけどさ…」
私は洗面所で制服に着替えながら言った。
だってさ?清隆くんって呼べるようになったし!
まぁ、私は清隆くんに名前で呼んでもらってないけど……
私なんてあの美少女軍団の中では空気も同然だから仕方ないんだけどね……
むしろあの軍団と一緒に清隆くんの近くに居れるだけで奇跡みたいなものだし……
佐藤「それに……もし今、清隆くんと二人っきりになったとしたら気まずいなんてもんじゃないし…私のほうがなんか色々思い出して辛いかもだし」
今回は、いや……私の場合もう脈無しなんだからあがいたりするのはもう止めようかな……
うん……そうしよう…。ここらで折り合いつけて前を向くいい機会にしよう。
昨日の夜のうちにそう決断しとけば、徹夜しないで済んだのに……やらかしたなぁ。
自虐気味にそう思いながら、私は最悪の気分で学校に向かった。
昼休み。
佐藤「はぁ~………」
篠原「今日は随分ため息多いけど……佐藤さんなにかあった?」
佐藤「え?そ、そうかなー……あはは。」
松下「確かにー。いつものノリと違うしー元気ないよね?具合でも悪いの?」
私は今、篠原さんと松下さんと教室で机を囲いながらお昼を食べていた。
ため息の多い私を見兼ねて二人は心配してくれているようだった。
佐藤「大丈夫大丈夫。具合とか悪いわけじゃないから!……はぁ~」
篠原「ほら!また、ため息してるし。なにか悩み事でもあるの?」
松下「私たちで良ければ相談乗るよ?遠慮なく頼ってよ、佐藤さん!」
二人は私なんかのために力になってくれるようだった。
本当にこの二人と友達になれて良かったと心から思った。
佐藤「うぅ……うぇーん、ありがとう。」
私は気づけば涙ながらにお礼を言っていた。
松下「え?ちょっとちょっと……泣くほどのことでもないっしょ?ねぇ、篠原さん?」
篠原「そ、そうだよ。これくらい当然だよ?だから泣かないでー!」
二人は私が泣いてるのにびっくりしたのか背中を撫でてあやしてくれた。
佐藤「ぐすっ……急に泣いちゃってごめんね?」
二人のおかげで落ち着いた私は鼻をすすりながら二人に大丈夫だと伝えた。
篠原「私たちは全然大丈夫だよ?」
松下「それで?一体何に悩んでるの?」
佐藤「あー…うん。えっと……」
松下 篠原「??」
私は相談しようとしたところで、言葉に詰まってしまった。
えっと……どうやって説明すればいいかな?
素直に清隆くんのことで悩んでるって正直に言えばいいかな?でも、この二人は私が清隆くんに告白して振られた経緯を知ってるからな~……
それだけに今更清隆くんで悩んでるなんて言いづらい……
松下「私、佐藤さんが何に悩んでるか分かったかも!」
佐藤「え……?」
篠原「えーホント松下さん?」
私がどう言おうか悩んでいたら、突然松下さんがイスから立ち上がって言った。
私まだなにも言ってないんだけどなー……
松下さんはテンション高めで自信満々なようだから……何もツッコメない…
ここはとりあえず、流れに乗って話しを聞いてみようかな?場を和ませるために冗談を言うだけかもしれないし。
松下「佐藤さんのその感じは……ズバリ!男のことで悩んでるでしょー?」
佐藤「!!!」
松下さんは私にズバッと指を差して言った。
その瞬間……私は肩を震わせてビクッと驚いてしまった。だって……
まさか……こんなにピンポイントで当てて来るなんてー//////
篠原「えーーー!そうなの?佐藤さん!」
佐藤「あわわ……そうだけどそうじゃなくて//////」
松下「え?嘘、まぢ?当たり?」
松下さん本人も私の驚いた様子をみてびっくりしていたようだった……
篠原「適当だったんだ……」
松下「まぁ、ぶっちゃけただの勘だし?それでそれで?誰で悩んでるの?」
篠原「私も気になる!だれだれ?」
こうなってしまっては、恋話に敏感な二人を欺くことは出来ないだろうと私は悟った……ここはちゃんと正直に話すしかないよね?
佐藤「えっと、松下さんの言う通りある男の子のことで悩んでて……」
松下 篠原「「うんうん。それで?」」
恐ろしくハモって言う二人に驚きながら、私は腹をくくって二人に言った。
佐藤「綾……清隆くんのことなんだけどさ、あはは//////」
松下 篠原『『!!』』
案の定、二人は驚いていた。それは当たり前だと思う。
だってクリスマスの時に告白して玉砕してるのに未だにウジウジ悩んでるなんてさ……
普通なら、とっくに諦めて違う人を好きになったり、振られた男の子を見返すような気持ちで自分を磨いたりするのにね……
はぁ~二人は呆れて何も言えないんだろうな……
佐藤「えっと……驚かせてごめんね?未だに悩んでるなんて私もバカだよね?気にしなくていいよ、二人とも。今のは忘れて!……あはは。」
雰囲気悪くなっちゃうと二人に悪いから、元気良くいつもの軽いノリで言った。
すると二人は……
松下「なに言ってんの!そんな状態の佐藤さんを放っておけるわけないじゃん!」
篠原「そうだよ!松下さんの言う通り。」
二人とも机を押し出すように私に向かって言った。
佐藤「え?」
松下「悩んでるなら話してみ?力になれるか分からないけど……」
篠原「私も相談乗るよ?」
二人はまた背中を撫でて優しく言ってくれた……
佐藤「うぅ……ありがとう。二人とも~……」
松下「あーもう泣かないのー!よしよし♪」
また涙が込み上げていた私をあやすように二人は頭を優しく撫でてくれた……
今日の私は涙腺崩壊してる気がするなぁ……
そんなこと思いながらようやく落ち着いたので……
佐藤「ぐすっ……もう大丈夫。落ち着いたから。」
篠原「そう?良かった良かった。」
松下「ふぅ~……それなら良かった!それじゃあ、早速聞いてもいい?」
佐藤「う、うん。」
松下「佐藤さんと綾小路くんが何があったか私たちは色々知ってるんだけど……佐藤さんは立ち直れたの?」
篠原「確かに……結構デリケートな問題だからねー…綾小路くんが相手の場合は特に。」
松下「あ、別に無理して答えなくてもいいからね?」
私が落ち着くまで、待っていた二人がやんわりと聞いてきた。
私に対して二人は気を遣って傷つけないように言ってるのが伝わる。
だからこそ……私は素直に今の自分の気持ちを言おうと思った。
佐藤「……正直まだ完全には立ち直れてはないと思う。……でもさ、簡単には諦められないんだよね。こんなに好きになった男の子初めてだったからさ。だからさ…相談乗ってくれないかな?」
私は朝からずっとウジウジ悩んでたけど、
やっと決心がついた。
そうだよ……初めて好きになった男の子なんだもん。やっぱ、簡単には諦められないよ!
私は二人に向かって頭を下げながら言った。
松下「そっか……佐藤さんの気持ちはよーく分かったよ!私たちが力になるよ~だから顔を上げて!」
篠原「そうそう!今更畏まらなくてもいいじゃん!友達なんだから。」
佐藤「!!!。あ、ありがとう二人ともー///」
私は感極まって二人にダイブするような形で抱き締めた。
二人も驚きながらも私のことをしっかり抱き締め返してくれて嬉しかった。
松下「もう~お礼を言うのはまだ早いよ、佐藤さん!」
篠原「さてと、まずはどうするか考えないとね!」
佐藤「う、うん!そ、そうだね。」
篠原「でもさー……こういう場合どうしたらいいんだろ?」
松下「うーん……確かに。綾小路くんっていま付き合ってる人は居ないよね?」
佐藤「……居ないと思う。ただ、それも時間の問題な気がするんだよね…」
篠原「え!誰か綾小路くん狙ってるの?」
松下「いやいや……その次元じゃないよ、篠原さん。今、綾小路くんの株が急上昇してるの知ってるっしょ?」
篠原「あー!あの動画のことね。確かにクラスの皆も綾小路くんのこと歌上手いとか言ってたもんね……私は別に興味無かったけど。」
松下「えーそう?私はびっくりしたよ?普段の綾小路くんから想像出来ないからさ。ギャップってやつ?」
篠原さんの言う通り、清隆くんがカラオケで歌っている動画が学年の女の子たちに広まって今や一気に人気が高まっちゃったんだよね…
私も動画を即保存して今も時々……いや、かなり頻繁に聴いてるのは仕方ないよね//////?
カッコいいし//////
松下「あ、そっかぁ……篠原さんは池くんに夢中だもんね~♪?興味無くても仕方ないかー。」
篠原「ちょっと、松下さん!な、なんで池が出てくるのよ//////アイツとはまだそういうんじゃ……」
松下「はいはい、分かった分かった♪」
篠原「もう~//////。それより今は佐藤さんの話しでしょ!」
篠原さんは池くんの話しになって焦っていた……
私から見てもお似合いだと思うから上手く行くといいなぁ……
松下「あはは♪ごめんごめん。佐藤さんも話しを濁してごめんね?」
佐藤「ううん、全然大丈夫だよ。」
松下「うーん……とにかく今は綾小路くんと二人きりの状況は止めた方がいいかも。立ち直れてないなら尚更ね。」
佐藤「うん…。」
篠原「でも、それだと現状何も変わらなくない?」
松下「う……確かに。」
篠原 松下『『うーん……』』
二人は真剣に考えてくれているようだった。
申し訳なく思ったので、私も何とか自分で打開策を考えてみたけど……
どう頑張ってもネガティブ思考が邪魔してしまってダメだった……すると、松下さんが……
松下「ん?あれって……みーちゃんと平田くん?なにやってるのかな?」
皆で悩んでいたら急に松下さんが指を差して言った。
私と篠原さんも振り向くと、教科書を持ったみーちゃんが平田くんに何か聴いてる様子だった。
篠原「あぁ、あれはね…みーちゃんは平田くんに授業の分からないところ聞いてるみたいだよ。前に教えてくれた。」
松下「へぇ~頭良いのに勉強熱心だねー……」
篠原「まぁ、私たちもあれくらい一生懸命になんないとヤバいかもね~。」
松下「まぁ、そうかも……あーーー!!!」
佐藤 篠原『『え??』』
松下さんは突然席を立って言った。私と篠原さんは全く同じタイミングで驚いた声を出した。
何か思い付いたのかな?篠原さんの話しを聞いて……
松下「いま、思いついた!!!これなら上手くいくかも♪そうと決まれば早速……」
松下さんは私たちを尻目に平田くんのもとに向かっていった。
平田くんと何話してるんだろ?
そして、松下さんは案外早く戻ってきた。
松下「おーい!平田くんがさ、今の時間なら綾小路くんは屋上にいるかもだって~早速屋上に向かうよー♪」
佐藤「え……えーーー//////?ちょっと待ってよ、松下さん!」
松下「まぁまぁ♪私にいい考えがあるから大丈夫、早く行こう!ほら、篠原さんも行くよー」
篠原「え?う、うん!」
松下さんはその肝心の考えを私たちに話さず、先に教室を出ていってしまった……
篠原さんも私もよく分からないまま、慌てて松下さんに付いていった。
そして不安になった私は一緒にいる篠原さんには聞こえないくらいの小声で呟いた。
佐藤「大丈夫かなぁ……?」
屋上。
松下「お~来たね、二人とも。綾小路くん居たよー!」
松下さんは先に屋上に着いていたので、扉の前で清隆くんがいる方向に指を差して言った。
私も確認したら、清隆くんは缶コーヒー片手に空を見ていた。
篠原「……何か声掛けづらくない?」
松下「それ……私も思った。」
二人は清隆くんを見て困惑したように言った。
二人は清隆くんとあまり喋ったことないもんね……まぁ、雰囲気的にも声掛けづらい状況なのもあるんだけど。
篠原「それで?松下さんは何を思いついたの?」
私が聞きたかったことを篠原さんが小声で代弁してくれた。
松下さんは何も言わずに急に屋上に向かっちゃったからね……
松下「うん、えっとねー……あ、やば!綾小路くんもう屋上降りるっぽい!」
佐藤 篠原『『え??』』
私は慌てて扉の隙間を確認すると確かに清隆くんはこっちに向かって来ていた……
えーー待ってよ~……松下さんの考えなんも聞いていないのに~。
松下「こうなったら説明してる暇ないね……当たって砕けろだね!」
佐藤「ええー?ちょっと待っ……!」
ガラッ……
綾小路「ん?佐……麻耶?」
佐藤「綾……き、清隆くん//////!あ、えっと……あはは。」
綾小路「?」
心の準備も何も出来ていなかったので、少し不自然な感じになってしまった……
だってしょうがないじゃん~//////こんなの普通みんなもテンパるでしょ?
どうやって場を繋ごうか必死に考えていたら……
松下「やっほー綾小路くん~。私たち綾小路くんのことずっと探してたの。ね?篠原さん!」
篠原「う、うん!平田くんが屋上にいるって教えてくれたから来たんだー!」
私がアワアワしてるのを見兼ねて、二人が助け船を出してくれた。
綾小路「そうなのか?……なんで俺を探してたんだ?」
佐藤「それは……」
松下「えっとね~私たち綾小路くんに勉強教えて貰おうと思って頼みに来たんだー。」
松下さんは私に向かってウインクをしながら言った。
ここは……松下さんに任せた方が良いよね?
私たちは何も聞いてないし……下手に話しに首を突っ込むと松下さんに迷惑かかるかも。他力本願になっちゃうけど任せよう。
綾小路「勉強を?どうして俺なんだ?松下たちは平田に教えて貰っていたよな?」
松下「うん、そうなんだけどねー……平田くんにはさっき頼んでみたんだけど、その平田くんは今日何か用事があってダメらしいんだよね~。それで~勉強得意な人いない?って平田くんに聞いたら綾小路くんなら力になってくれるよ!って教えてくれたんだ。」
綾小路「そうだったのか……だが俺は平田ほど勉強出来るわけではない。教えるのに不向きだと思うんだが…」
松下「それでも私たちより勉強出来るでしょ?ちょっと助言してくれる程度でいいからさ。」
綾小路「………」
松下「もうすぐ特別試験も始まるし、期末試験で出来なかったところを復習しときたいからさ。だからお願い~!」
篠原「あ、私からもお願い!」
佐藤「き、清隆くん//////。私からもお願いします!」
綾小路「………」
二人は綾小路くんに向かって上目遣いでお願いポーズをしていた。
私も二人に便乗して一生懸命お願いした。
清隆くんをチラリと見ると少し戸惑ってるように見えた。
まぁ、確かに……こんなこと急に言われたらびっくりするよね。
私も居るから気まずいのかもしれないし…はぁ……やっぱりダメかも。
綾小路「……平田みたく上手く教えられるか分からないが大丈夫か?」
佐藤「え!!!い、いいの?」
綾小路「あぁ。」
松下「ありがとう~綾小路くん。それじゃ、今日の放課後よろしくね~♪」
綾小路「分かった。」
清隆くんは了承した後、階段を降りていった……
やった……うわぁーい!やったー//////!!
私が心の中でガッツポーズをしていると、二人がハイタッチする構えをしていたので私は……
松下 篠原 佐藤「「「いぇーい!!!」」」
ハイタッチを二人と交わしながら、盛大に喜んだ。
篠原「やったね!佐藤さん。」
佐藤「うん!ありがとう篠原さん!」
篠原「いやいや……私は何もしてないよ?全部松下さんのおかげっしょ。」
佐藤「松下さん、ありがとう~♪」
松下「いやーそれほどでも~。どういたしまして♪」
篠原「ねぇねぇ、松下さん。この作戦いつ思いついたの?」
私はお礼を言った後、篠原さんと同じく私も気になった。
私たちは松下さんが思いついた作戦を知らなかったからね……
松下「えっとね~ヒントを貰ったのは平田くんとみーちゃんだね。あ、あと篠原さん。」
篠原「え?わたし?」
松下「うん。みーちゃんが平田くんに勉強で分からないところを教えて貰ってるって篠原さんが言ってくれたから思いついたんだ~。」
篠原「へぇーそうだったんだ。松下さん、スゴいよ!」
佐藤「うん!」
松下「まぁ、はっきり言えば、賭けだったんだけどね~…」
佐藤「え?そうだったの?」
私は驚いた。松下さんの話すそぶりから見ても、そんな感じしなかったから。
むしろ上手く事が運んでいたように見えたんだけどなぁ。
松下「だって、ほら私たちは綾小路くんと親しくないから、急に勉強教えてって言われても断られる確率の方が高かったからね~」
篠原「た、確かに。」
佐藤「なるほど…」
松下「まぁ、何はともあれ上手く行ったから良かった~さあ、私たちも教室戻ろ!放課後頑張るよー二人とも。」
篠原 佐藤「おー!!」」
放課後。
全ての授業が消化して、私たちは清隆くんの下に向かった。
篠原「綾小路くん、今日よろしくね!」
松下「綾小路くん~よろしく♪」
綾小路「あぁ、よろしく。」
佐藤「清隆くん今日はよろしくお願いします!……それじゃ、行こ?」
綾小路「そうだな。」
清隆くんはそう言ってから、私たちと一緒に教室を出た。
教室を出て廊下に出ると……清隆くんに注目が浴びているのが分かった。それも主に女子の視線。
やっぱり今の清隆くんの女子人気はスゴいなぁ。そしたら清隆くんが……
綾小路「何処で勉強するんだ?」
篠原 松下「「あ。」」
綾小路「決めてなかったのか?」
松下「そう言えば、すっかり忘れてた……どこにしよっか?」
篠原「パレットでいいんじゃない?」
松下「でも、この時間結構混むんだよねー……」
篠原「じゃあ、図書室?」
松下「図書室って飲食禁止だからなー…」
二人は勉強する場所を考えながら、歩いていた。確かに場所までは頭回らなかった……
ん?あれ?……これって清隆くんを自分の部屋に招き入れられるチャンスなんじゃ?
そうだよ!今なら何も不自然なことないよね?場所も決まってないし、それに松下さんたちと一緒に居るとき私の部屋に集まるのが多いし……
ここまで二人に任せっぱなしだったんだからここで勇気出さないと!
よ、よーーし!!!
佐藤「あのさ…勉強する場所決まってないならさ……私の部屋にしない?」
松下「お!いいね~♪私は賛成~♪」
篠原「私も賛成!勉強とか何かするとき、いつも佐藤さんの部屋だもんね。」
私は一呼吸置いてから、勇気を出して言った。
二人は快諾してくれて少しホッとした。あとは清隆くんの返事だけ……私たちの視線は清隆くんに集まった。
そして清隆くんは……
綾小路「……俺が行ってもいいのか?」
佐藤「う、うん!全然OKだよ//////」
綾小路「それなら……お邪魔してもいいか?」
佐藤「……//////!」
松下「良かったね~佐藤さん!それじゃ、早速いこいこ!」
佐藤「うん//////♪」
清隆くんはあまり気乗りじゃなさそうだったけど、最終的に来ることが決まった。
うわぁーい、やったーーー//////!
勇気出してみて良かった……緊張したけど。ここから、頑張らないとね!
私は朝の重い気分とはうってかわって、ルンルン気分で自分の部屋に向かった。
私の部屋。
ガチャっ……
佐藤「さ、皆入って入って♪」
松下 篠原「「お邪魔しまーす♪」」
松下さんたちは慣れた感じで自分の部屋かのように、先に上がっていった。
綾小路「……お邪魔します。」
佐藤「ど、どうぞ//////」
一方、清隆くんは遠慮気味に入ってきた。
その後、しっかり靴を揃えてるところを見ると、やっぱり几帳面なんだなーと思った。
私は清隆くんをしっかり誘導してから、部屋に入った。
松下「おー……なんかいつもより片付いてない?」
佐藤「え!そ、そうかなー?気のせいじゃない?あはは……」
松下 篠原「「?」」
部屋に上がっていた二人はいつも通りの場所に座ってくつろいでいて、松下さんが部屋を見渡しながら言った。
言えない……清隆くんを呼ぶために昨日はりきって掃除を細かくやっていたなんて言えない……//////
佐藤「い、今お茶淹れるね?清隆くんも適当に座ってていいからね?」
綾小路「……手伝うか?」
佐藤「ううん、大丈夫!今から勉強教えて貰うわけだし、これくらい私がやるよ!」
私はキッチンに行ってコーヒーの準備をした。
清隆くんたちを待たせる訳にはいかなかったので、手早くコーヒーとお菓子をテーブルに持っていった。
佐藤「お待ちどおさま。コーヒーどうぞ。」
松下「ありがと~♪佐藤さん。」
篠原「お菓子もあるのは流石だね♪」
綾小路「色々すまないな、麻耶。ありがとう。」
佐藤「ど、どういたしまして…//////」
清隆くんは急にお礼を言ってきたので、私は照れてしまって顔を逸らしてしまった。
その様子を観ていた松下さんが……
松下「あれあれー?お二人さん仲良いねー?私たちはやっぱりお邪魔かな♪?」
佐藤「ちょ、ちょっと松下さん~…//////」
綾小路「?」
案の定からかってきた……もう~//////
篠原「綾小路くんも困ってるみたいだし、早速教えて貰おうよ。」
松下「それもそうだね~それじゃ佐藤さんのためにも取り掛かりますか♪よろしくね~綾小路くん?」
綾小路「平田のように上手く教えられるか分からないが……こちらこそ、よろしく頼む。」
勉強中……。
二人とも、意外にも清隆くんに解らないところをきちんと聞いて勉強していた。
正直二人がここまで集中して取り組むとは思っていなかった……
てっきり勉強会は建前で、清隆くんにあれこれ質問するもんだと思っていたから……
その清隆くんは私たちの解らないところを分かり易く教えてくれた。
まぁ、松下さんと篠原さんはテストでクラスの中間位の順位だから、私とは元々の出来が違うんだけどね……。
ちなみに私は清隆くんの隣で教えてもらっている//////
松下「綾小路くんさー……勉強教えるの上手だね!」
篠原「確かに!説明も分かり易いし丁寧に教えてくれるし。」
綾小路「そうか?そう言ってもらえると助かる。」
松下「いやいや、助かってるのはこっちだよ!今度から個別で綾小路くんに教えて貰おっかな~?」
篠原「あ、それ私もお願いしよっかな~?」
佐藤「ええ?ちょっと二人とも~」
二人はニヤニヤしながら、私の方をみてからかうように言った。
松下「あはは♪佐藤さん取り乱しすぎ~」
佐藤「だ、だって……//////」
松下「まあまあ♪これからも私たちは綾小路くんに教えてもらえばいいじゃん?」
篠原「確かに!平田くんと一緒の勉強会だと色々大変だしね…」
松下「だねー……」
綾小路「……何か問題があるのか?」
二人の話しを聴いていた清隆くんが不思議そうに聞いてきた。
まぁ、私も期末テストの時は平田くんの勉強会に参加したから何が問題なのかは多分解っている。それは……
松下「うん。あ、平田くんの教え方は分かり易いし、何も問題ないよ?だけど……周りの女子がねー…うるさくて勉強に集中出来ないんだよね。」
綾小路「そうなのか?」
篠原「ペーパーシャッフルの時はそこまでうるさくなかったんだけど……今は平田くん軽井沢さんと別れてフリーでしょ?みんなして距離縮めようと必死になる女子が多くてさー……」
篠原さんと松下さんはテーブルに頬杖をつきながらぼやいていた。
実際その通りだからなー……ぼやくのも分かる。
平田くんの勉強会は圧倒的に女子比率が多いから、そうなるのも必然だしね…
綾小路「何となく想像ついた。大変そうだな……平田。」
松下「純粋に勉強に集中したいからさ……私たちのためにもこれからも教えてくれると嬉しいなぁー?」
佐藤「お、お願いします!」
綾小路「……考えとく。」
篠原 松下「「いぇーい♪」」
清隆くんは案外簡単にOKしてくれた。
や、やったー//////
これで今度からこれを理由にテスト期間中とかでも一緒に居れる!
ほんと、松下さんたちのおかげで全てが良い方向に向かってるよ~!
この二人にはお礼も兼ねて何かご馳走しなきゃね!
佐藤「き、清隆くんここ教えてくれないかな?」
綾小路「ん?あぁ、ここなら……」
気を良くした私は積極的に勉強教えて貰うように清隆くんに話し掛けたりした。
まぁ、さっきから二人はニヤニヤしながら、頑張れーって感じの視線がスゴく伝わってきてやりづらいけど……
私のためにここまでしてくれてるんだから、これくらいは許容範囲だね……
綾小路「……今日はこれくらいにしとくか?」
松下 篠原「「賛成~…」」
佐藤「お疲れ様!コーヒー淹れ直すね?」
松下 篠原「「よろしく~…」」
二人ともぐったりと疲れきった様子で言った。まぁ、かれこれ二時間近く勉強してたから無理ないね……。
かくいう私は疲れと言うよりは緊張感と楽しさがあったからか、いつもより勉強に集中出来たかも!
綾小路「俺も手伝おう。」
佐藤「え?清隆くんずっと私たちに勉強教えてくれてたから疲れてるでしょ?コーヒーのお代わりくらい私一人でも……」
綾小路「俺なら平気だ。麻耶の方こそ疲れてるだろ?麻耶一人に押し付けるのも忍びないからな……これキッチンに持っていくぞ?」
清隆くんは空になったマグカップを持ってキッチンに向かっていった。
こういう気配り出来るから清隆くんはカッコいいんだよね……//////
佐藤「あ、ありがと//////」
私は清隆くんにお礼を言ってから、二人で準備した。
清隆くんとの共同作業……ヤバい顔がニヤけちゃう//////
私はコーヒーのお代わりを注いで、マグカップは清隆くんが運んでくれた。
佐藤「二人ともお待たせ!」
松下 「ありがと~……はぁ~生き返る。勉強終わりのコーヒーの一杯は格別だね~♪」
篠原「そうだね~。」
佐藤「清隆くんもお疲れ様!」
綾小路「あぁ。だが、言うほど俺は疲れてないぞ?」
清隆くんは坦々とコーヒーを飲みながら言った。
いつもの無表情だから疲れてるとかは良く分からないけど、私たち三人を相手に勉強教えていたのだから大変だったと思うんだけど……
二人もきょとんとした顔で清隆くんを見ていた。
綾小路「……俺、何か可笑しなこと言ったか?」
私たちの視線が気になったのか、そう聞いてきた。
佐藤「えっと、おかしなことは言ってないと思うけど、私たち三人相手に教えてたから大変じゃなかったのかなぁって……」
綾小路「そんな事は無かったぞ?三人とも真面目に取り組んでくれたのもあって俺はやり易かった。」
佐藤「そっか……迷惑じゃなかったなら良かった!」
はぁ~良かった……そんな風に言ってくれて。
私なんてこの中じゃ一番バカだから呆れられたらどうしようかと思ってたから……
綾小路「それにしても、三人とも凄い集中力だったな?」
佐藤 松下 篠原 「「「いやいや、それほどでもないよ~♪」」」
清隆くんに褒められるなんて思わなかったなぁ……//////
今日は苦手な勉強でここまで集中出来たのは間違いなく清隆くんがいたからだな~♪
頑張った甲斐あったよ~♪
綾小路「まぁ、三人ともよく授業終わりに予習復習してるもんな……この集中力も理解力も納得だな。」
佐藤 松下 篠原「「「え???」」」
私は心底驚いた。どうして清隆くんがそのこと知ってるんだろう?
清隆くんの言う通り、期末テストが終わった後、私たちは定期的に授業終わりの休み時間に三人で集まって解らないところを話し合ったり相談していたりした。
短い時間なんだけど、私にとってはそれが結構有意義な時間だったりする。
まさか、その事を清隆くんが知っていたなんて……
松下さんたちも同様に驚きを隠せないようだった。
佐藤「え?綾小路くんなんで知ってるの?」
綾小路「ん?それは……麻耶たちはよく松下の席に集まってるだろ?俺の席からだと話してる内容が聞こえるからな。」
松下「あー確かに綾小路くんの席って私と距離近いもんねー。」
篠原「なるほどね、納得。」
綾小路「盗み聞きするつもりは無かったんだが……気を悪くしたならすまない。」
佐藤「そんなこと思わないから安心して!清隆くん。」
なるほど……そういうことだったんだね。
私はちょっと嬉しかった。清隆くんからしたら、たまたま私たちの内容が聞こえていただけかもしれないけど……そういう細かいところを見ていたくれたと思うと私は嬉しかった。
綾小路「そうか、それなら良かった……それじゃあ、俺はそろそろ失礼する。またな。」
清隆くんはそう言った後、自分の荷物を持って立ち上がった
松下「うん!お疲れ~綾小路くん。また明日ね♪」
篠原「また学校でね~今日はありがと!」
二人は嬉しそうに、清隆くんに別れを済ませていた。
佐藤「み、見送るよ!清隆くん!」
玄関に向かっていった清隆くんを私は慌てて追いかけた。
その際に二人から『頑張ってね~』っとニヤニヤしながら手を振ってエールを送ってきたのが気になったけど……
玄関先に向かった清隆くんは靴を履き終えていま、まさに出ようとしていた。
佐藤「ま、待って清隆くん!」
綾小路「ん?どうした?」
清隆くんはドアを開けようとした手を止めてこちらを向いた。
佐藤「あ、えっと……//////!」
綾小路「?」
私が清隆くんを引き止めたのはちゃんと今日のお礼をしたかったからなんだけど……
今日初めての二人きりの状態にスゴく緊張してしまっていた//////
た、ただお礼を言うだけなのにどうしてこんなに心臓がうるさいの~//////?
落ち着いて私!最後くらいしっかりしなきゃ!
佐藤「き、清隆くん//////今日はお疲れ様!本当にありがとね!」
綾小路「あぁ、麻耶もお疲れ様。また明日な。」
佐藤「う、うん//////またね!」
清隆くんはドアを開けて周りを確認してから部屋を出ていった……
はぁ~……良かった~清隆くんにちゃんとお礼を言えた//////!
おおげさだと思うけど、私にとってこれは新たな一歩だと思う。
今までだったら気まずくてこんな風に面と向かって話せなかっただろうし、また勉強を教えて貰おうとも思わなかった筈だから。
本当に二人には感謝しかないよ~♪
佐藤「これからは少しずつ……ほんの少しずつでいいから、こんな風に清隆くんと過ごせるように頑張ろう!」
私は小さな決意を胸に二人の元に向かった。
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