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暴力男

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第二章

「あの、ひょっとしてですが」
「久美子ご主人に虐待されてませんか?」
「あの娘最近凄く暗いですが」
「会っても殆ど喋らないですし」
「いつも何かに凄く怯えてる感じで」
「おかしいんですが」
「実はな」
 まずは彼女の父が話した。
「結婚してから娘は実家に帰ってないんだ」
「連絡はあるけれど」
 母もも話した、二人共怪訝な顔になっている。
「貴女達の言う通り凄く暗いの」
「わし等も心配していたんだ」
「貴女達もそうなのね」
「だったらな」
「あの、虐待されているなら」
 友人の一人が言ってきた。
「何とかしましょう」
「あの娘助けましょう」 
 別の友人も言った。
「そうしましょう」
「このままだと何があってもわかりません」
「鬱になってる感じですし」
「このままいったらもっと酷いことになりますよ」
「ここは何とかしましょう」
「私達で」
「そうだな」 
 久美子の父が頷いてだった。
 すぐに両親と友人達が菅野が勤務している時間に彼女が彼と共に暮らしている家に行ってそうしてだった。
 家で暗い顔をして何かに怯えている感じの久美子に声をかけてだった。
 そうしてだ、家から出した。そのうえでまずは医師に診せると。
 医師は久美子の両親に深刻な顔でこう話した。
「いけません、身体が痣だらけで三十ヶ所以上打撲傷があります」
「三十ヶ所以上!?」
「そんなにですか」
「煙草の火を押し付けられた跡もあります」
 医師は驚く両親にさらに話した。
「そして極度のノイローゼになっていてフラッシュバックも見られます」
「身体だけでなく心もですか」
「痛め付けられていますか」
「日常的に酷い暴力を受けています」
 医師は断言した。
「鬱状態で食事もかなり減っていまして」
「栄養状態も悪いのですか」
「そうなのですか」
「はい、ですから」
 それ故にというのだ。
「すぐに入院して治療に入りましょう」
「わかりました、では」
「そうします」
 久美子の両親はすぐに答えた、そして。
 二人は医師の後を離れてだ、深刻な顔で話した。
「離婚させよう」
「そうね」
「そしてだ」
「ええ、訴えましょう」
「娘をここまで痛め付けたんだ」
「絶対に許せないわ」
 夫婦は久美子を菅野と離婚させてだった。
 彼を娘への暴行と傷害で訴えた、そして。
 彼女の友人達も夫婦に全面協力した。
「私達も証言します」
「久美子のことは」
「久美子にあんなことして許せません」
「報いを受けさせてやりましょう」
「絶対に許せないです」
「あんな暴力を振るって」
 こう言ってだった。
 二人の菅野への告訴刑事のそれに全面協力した、菅野は忽ちのうちに裁判に追われることになったが。
 その話を聞いた彼が勤務している中学の生徒の一人が友人達に話した。
「菅野訴えられてるらしいぞ」
「えっ、そうなのか?」
「あいつ以前にも増して機嫌悪くて俺達を怒鳴って殴るけれどな」
「蹴り回してな」
「何でかって思ったら」
「あいつ訴えられてるのか」
「何でも奥さんに暴力振るっててな」
 その生徒は自分が聞いた噂をそのまま話した。 
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