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イベリス

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第六十八話 午前と午後でその五

「権勢欲が強くて民主主義が嫌いで」
「そうした人だってだね」
「イメージがあったんですか」
「昔はどうかな」
「違います、別に女好きでもなかったですね」
「お妾さんはいたよ」
 部長はそれはと答えた。
「今で言うと愛人さんだね」
「そうですね」
「けれど奇麗な人を見ても」 
 それでもというのだ。
「美人だなって言って終わりだったよ」
「それだけだったんですよね」
「小山さんも知ってたんだ」
「伊藤さんは女好きで」
 兎角このことで今も話題になっている。
「何かと言われてるけれど」
「それでも揉めることはしなかったですよね」
「無名の芸人さんとだけ遊んでね」
 女好きでもだ。
「それで誰とも揉めない様にしたんだ」
「そうだったんですね」
「そしてね」
 部長はさらに話した。
「女の人を見ても美人だなって言って」
「終わりですか」
「そうだったよ」
「そうですか」
「けれどお妾さんがいても」
 それでもというのだ。
「女の人のお話はね」
「なかったんですね」
「うん」 
 そうだったというのだ。
「これがね」
「そうでしたか」
「権勢は持っていても」
 それでもというのだ。
「別にね」
「それを利用することはなかったんですね」
「あの人もね」
「そうでしたか」
「それで生活も」
 山縣のそれもというのだ。
「衣食住は生真面目でも」
「質素でしたか」
「伊藤さんは極端でも」 
 その質素はというのだ。
「山縣さんもね」
「質素だったんですね」
「パン一枚で」
 それでというのだ。
「朝を済ませたこともあったし」
「それ私も聞きました」
「小山さんもだね」
「はい」 
 咲はそれはと答えた。
「聞いています」
「国を動かす位の人でも」
 それだけの権勢があろうともというのだ。
「そんなのだったんだ」
「凄いですね」
「まあ別にね」
 部長はこうも言った。
「総理大臣が三千五百円のカツカレー食べても」
「いいですよね」
「普通に仕事してくれてたらね」
 それならというのだ。
「あとパンケーキ食べても」
「いいですよね」
「それ批判してる野党の議員さんもね」
「贅沢してますね」
「カツカレーで怒ったマスコミがね」
 総理大臣がそれを食べてだ。 
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