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イベリス

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第六十八話 午前と午後でその四

「誰とも気楽にお話するし挨拶もする人だったらしいね」
「とても総理大臣に思えないですね」
「そうだね、けれどこの人は確かにね」
「生活水準変わらなかったですね」
「公の場ではちゃんとしていたけれど」
 それでもだったのだ。
「お家ではね」
「食べられるといいって感じだったそうで」
「これ山縣さんもだったらしいね」
 伊藤と並ぶ実力者であった彼もだったのだ。
「お家には凝ったけれど」
「やっぱり質素だったんですね」
「あの人は武士って意識が強かったから」
 常に自分は一介の武辺と言っていたという。
「しっかりした身なりでもあったけれど」
「生活水準はですか」
「質素だったよ」
「そうだったんですね」
「汚職の話も多いけれど」 
 奇兵隊の給与をピンハネし商人と結託したりと何かとある。
「蓄財はしなかったんだ」
「それで贅沢はしなかったんですか」
「政治資金にしていたから」
 だからだというのだ。
「それでね」
「政治って」
「いや、シビアに言うけれど」
 部長は咲に話した。
「政治ってお金かかるから」
「それ現実ですか」
「そう、現実だよ」
 まさにというのだ。
「何でもお金がかかって」
「政治もですか」
「お金がかかるんだよ」
「そうですか」
「だからね」
 それでというのだ。
「あの人もね」
「政治にお金をかけたんですね」
「汚職をしてね」
 そのうえでというのだ。
「やっていたんだ」
「あの、汚職は」
 そう聞いただけでだ、咲は話した。
「やっぱり」
「悪いことだね」
「絶対にそうですよね」
「だから山縣さん生前は徹底的に嫌われていたよ」
「当然ですよね」
「けれどね」
 それでもというのだ。
「自分はね」
「質素な生活で」
「それでね」 
 そのうえでというのだ。
「汚職はしてもだったんだ」
「政治資金にしていたんですか」
「何をするにもお金が必要で」
 それでというのだ。
「政治もでね」
「お金ですね」
「それがね」
「山縣さんも同じだったんですね」
「そういうことだよ」
「だから自分は質素でもですね」
「あの人元老でね」
 日本のだ、当時日本は大日本帝国憲法が制定されてもそれでも元老という柱が必要であり山縣はその一人であったのだ。
「権力にあっても」
「汚職はしてもですか」
「自分を律してね」
「武士道で、ですか」
「そうしてね」 
 そのうえでというのだ。
「国政に携わっていたんだ」
「そうだったんですね、何か」 
 咲はここでこう言った。
「私から見たら」
「何かな」
「はい、山縣さんて謀略家で」
 それでというのだ。 
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