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ドラゴンボールZ~孫悟空の娘~

作者:setuna
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第85話

 
前書き
孫悟飯ビーストは個人的には好きな方ですが、変身している悟飯の素の力がそこまで強くないのが個人的に…強力な変身には相応の負担があると思います。 

 
セルは悟林達とセルマックスの戦闘を離れた場所で観察しながら少々の物足りなさを感じていた。

自分を基にしただけあり、パワーだけは大したものだが、頭はからっきしの獣であり、動きに慣れさえすればもうほとんどワンサイドゲーム状態となっている。

「うおりゃあああっ!!」

セルマックスの拳も尾による攻撃も悟林はかわして脳天に拳を叩き付け、地面にめり込ませると後ろの3人が気弾で追撃をする。

悟飯の気もかなりの量が溜まっており、このままセルマックスを弱らせれば悟飯の一撃でも倒せそうだ。

しかし、それではつまらない。

闘いとは予想外なことも含めて楽しいものなのだ。

ふと、セルは悟飯を視界に入れる。

かつて悟飯は激怒したことで秘められた力の一端を見せた。

自分も同様にサイヤ人は感情の高ぶりによって戦闘力が変動する種族。

サイヤ人の混血の潜在能力は高い。

あの最も若い超サイヤ人の2人がどんな方法を使ったのか知らないが、セルマックスとの闘いに参加出来る程にまで進化している。

ならばあの底知れない力を秘めた悟飯が進化すればどこまで化けるのか…試したくなった。

セルの指がゆっくりと動き出す。

「よし!ピッコロさん!トランクス君!悟天!合わせて!!」

悟林がギャリック砲の構えを取り、トランクスと悟天もかめはめ波の構えを取る。

そしてピッコロも気功波を撃とうと構えた瞬間であった。

ピッコロの胸を気弾が貫いたのは。

「え…?」

「がは…っ!?」

気を溜めていた悟飯が信じられない光景に目を見開いた。

同じく気功波を放とうとしていた3人も振り返り、驚愕する。

「ふん…隙だらけだな」

「貴…様…っ!」

振り返ったピッコロが気弾を放つよりも遥かに速く、指先から気弾が連続で放たれ、ピッコロの体を貫いた。

「ピッコロさーんっ!!」

気を溜めるのを止め、ピッコロを助けようと飛び出した悟飯だったが、セルは2本の指をピッコロに突きつけると大爆発を起こした。

黒煙からボロボロとなったピッコロが力なく落下していく。

その姿に悟飯は愕然となりながらセルを見つめる。

「ククク…孫悟飯、良い勉強になったろう。油断をするとあのようなボロクズになる」

「……ゆ、許さないぞ…っ!良くも…良くも…!うああああああああっ!!!!」

セルの嘲笑を浮かべながらの言葉に悟飯は頭が殺意で染まり、本当に久しぶりに心の底からブチギレた。

老界王神の潜在能力解放と悟飯の怒りによる急激な力の変動が上手い具合に噛み合い、悟飯を究極を超えたステージに到達させた。

白いオーラが紫の禍々しいオーラに変わり始める。

「ほう…っ!」

変化を終えた悟飯の姿を見たセルは驚くのと同時に歓喜した。

髪型はどこかセルゲーム時の超サイヤ人2を思い出させるボリュームのある髪。

その髪の色は銀色に染まっており、目はまるで悟飯の激情を表現するかのように深紅に染まっていた。

そして悟飯から発せられる気の量は何だろうか?

セルマックスの気が霞んで見える程に莫大で強烈な威圧感を放っている。

「もう…許さないぞ…!セル…!!」

「良いぞ…孫悟飯…!これだ…これが私の望んでいた貴様の姿だ…!」

まるでセルゲームの時のような、それ以上に強烈な殺気にセルは自分に流れるサイヤ人の血が歓喜で滾るのを感じた。

「だああああっ!!」

オーラを迸らせながら悟飯はセルに突撃する。

それに対してセルも笑みを浮かべながらブルーセル2のオーラを迸らせて応戦した。

悟飯の拳をギリギリで交差させた両腕で防ぐセル。

「ぬう…っ!」

腕に走る痛みと痺れに表情が歪むセルに対し、悟飯は続けて回し蹴りを繰り出す。

それも何とか受け止めるが、受け止めた腕が悲鳴を上げる。

頑強な肉体を持つフリーザの血を引く自分の肉体が悲鳴を上げる程の威力にセルは一度距離を取って気弾を連射した。

「…でやあっ!!」

気弾の連射をまともに浴びても悟飯の纏う気がそれを無力化し、逆にまともに悟飯の拳を頬にまともに叩き付けられることになる。

しかし、セルも体勢を整えて距離を取りつつ気弾を中心にしつつ悟飯に反撃し、悟飯は放たれる気弾を鬱陶しそうに弾きながらセルへ向かっていくのであった。

「あの馬鹿…!」

悟林はセルに怒りのままに向かっていった弟に頭痛を感じたが、同時に弟の進化を喜ぶ気持ちもあって複雑な表情を浮かべた。

「仕方ない…ピッコロさんを回収して安全な場所に…」

「それは僕達に任せてくれないか?」

悟天かトランクスにピッコロを任せようとした時、ヘドを抱えたガンマ達が声をかけてきた。

「…えっと、レッドリボン軍の人造人間が何で?」

「分かったんだよ、どっちが悪かってね…傷付いた者を守るのはヒーローの役目だ…彼は僕達に任せて欲しい」

「…分かった、じゃあ…お願い…これをピッコロさんに食べさせてくれる?」

「これは…確か、食べればどんな怪我も治す仙豆か」

ガンマ達に最後の仙豆を渡すとピッコロをガンマ達に任せて悟林達は構える。

「よし、悟飯がヘマする前にやっつけよう。50倍で行くよ」

「…なら、悟天!俺達はフュージョンだ!!」

「OK!トランクス君!姉ちゃんの修行に付き合ってて良かったね!」

最近は平和だったためか、フュージョンをする程の敵は現れなかったが、姉の修行の最低限の相手をするにはフュージョンが必須だったのでフュージョンポーズは目を閉じても完璧に合わせられる自信があった。

「界王拳…50倍!!」

一瞬で距離を詰め、顎を殴り上げると踵落としで追撃する。

そして派手に転倒したセルマックスに追撃の気弾を喰らわせる。

「「フュージョン…はっ!!」」

そして2人もフュージョンを完了させてゴテンクスになると超サイヤ人2ドラゴンボール強化のパワーを更に引き上げる。

起き上がったセルマックスにゴテンクスが言い放つ。

「「オラオラ、化け物!もうお前はおしまいだ。超パワーアップした正義の死神、ゴテンクス様が直々に閻魔様の所に送ってやるぜ!」」

閻魔大王が聞いたら即拒否するようなことを言いながらゴテンクスはセルマックスを挑発する。

起き上がったセルマックスはゴテンクスに襲い掛かるが、ゴテンクスは口笛を吹きながらセルマックスの拳も尾による攻撃も軽々と避けていく。

「「へっへっへ~」」

舌を出しながらセルマックスを煽るとセルマックスはゴテンクスに拳を振り下ろしたが空振りに終わり、ゴテンクスは気弾を連射してセルマックスの全身に浴びせた。

流石にもう連続死ね死ねミサイルとは言わないようだ。

「「それっ!!」」

追撃のかめはめ波を当てるとセルマックスはふらついて倒れ伏した。

「やったね、ゴテンクス君!」

「「へへん、まあね!このゴテンクス様にかかればこんな奴簡単だぜ!」」

得意気に鼻を擦るゴテンクス。

倒れ伏したセルマックスの頭を軽く小突く。

「「それにしてももう終わりか?結構呆気なかったな」」

高笑いするゴテンクスだが、セルマックスが身動ぎするのを悟林は見逃さなかった。

「あっ!ゴテンクス君危ない!」

「「へ?うわあっ!?」」

ダメージから復帰したセルマックスが尾の先端をゴテンクスに叩き付けて吹き飛ばした。

「ゴテンクス君!良くもやってくれたね!1000倍にして返してやる!!」

50倍界王拳のオーラを纏いながらセルマックスとの距離を詰めて腹に強烈な一撃を叩き込んで浮き上がらせる。

「だだだだだだだだ…っ!!!」

拳と蹴りが絶え間なくセルマックスに叩き込まれ、反撃することさえ出来ずにセルマックスは悟林のラッシュを受けるしかなかった。

そして上空に蹴り上げて、真上を取ると気を纏わせた拳がセルマックスの胴体に風穴を開けつつ地面に激突させる。

「はああああっ!!」

「「痛ててて…畜生…悟林姉ちゃんの前で格好悪いじゃねえかあああっ!!」」

悟林が両手に極大の気弾を作り上げるのと同時に恋人兼姉の前で大恥を曝されたゴテンクスは怒りのままに超サイヤ人3に変身する。

金と橙色のオーラに金色のスパークを走らせながらゴテンクスも両腕を掲げて頭上に巨大な気弾を作り上げた。

「終わりだーーーっ!!」

「「くたばっちまえーーーっ!!」」

悟林が突撃してセルマックスの頭部に巨大な気弾を直接叩き込み、ゴテンクスの駄目押しとばかりの一撃をまともに喰らったセルマックスは沈黙した。

「…今度こそ…大丈夫そうだね…ん?」

セルマックスの死体に異変が起きる。

体が異常なまでに膨らみ始め、悪寒を感じた2人はこの場を離脱した。

ガンマ達もピッコロ達もどうやら無事なようで安堵したのも束の間、後方から凄まじい爆発が起きた。

そしてセルマックスの爆発した地点から遠く離れた場所では悟飯とセルの闘いは続いていた。

「だあっ!」

「ぐっ!!」

悟飯が距離を詰めては攻撃し、セルは接近戦に持ち込まずに距離を取って攻撃を繰り返していた。

「…何時まで逃げるつもりだセル…やる気があるのか…?」

冷たく睨む悟飯に対してセルは肩で息をしながら笑みを浮かべた。

スピード、パワー、肉体の強さも全てに置いて自分を上回っている悟飯。

しかし、セルにはどこか余裕があった。

「なるほど、確かに素晴らしいパワーとスピードだ。進化した私を大きく超えている。だが、貴様は私には勝てない……絶対に…」

「…?強がりを言うのもそれくらいにしたらどうだ」

「貴様はやはりどこまで強くなろうと馬鹿らしいな…断言しよう、貴様は私には勝てん」

「なら、試してみろ!!」

悟飯の拳のラッシュをセルは限界まで気を高めて受け止め、可能な限り受け流し、自分の戦闘センスをフル活用してダメージを最小限に抑える。

バリヤーも再生能力も超能力も何もかも利用してだ。

「四身の拳!!」

4人に分裂し、戦闘力も分裂前と変わらない分身が悟飯に迫るが、本体以外は一撃で一蹴される。

「こんな技で!」

「太陽拳!!」

「うわっ!?」

分身に気を取られていた悟飯は太陽拳の強烈な光をまともに喰らってしまい、目を眩まされてしまう。

「ふんっ!」

目が眩んでいる悟飯を蹴り飛ばし、指先に気を溜めて魔貫光殺砲を放った。

「っ!!」

ギリギリで迫る気功波に気付いた悟飯はそれを何とかかわす。

高い貫通力を誇る魔貫光殺砲をまともに受けたら今の自分でもどうなるか分からないからだ。

「頭上ががら空きだぞ」

「ぐあっ!?」

気功波に気を取られていた悟飯の脳天に蹴りを入れて地面に叩き付ける。

「くっ!」

「確かにパワーもスピードも肉体の強さも貴様が上だが、貴様の動きを読むことは出来る」

自らの進化のために厳しい修行に身を置いていたセルにとって悟飯の動きは分かりやすいのだ。

「…これならどうだ!」

更に力を解き放ち、セルとの力の差を広げると間合いを詰めて殴り飛ばし、地面に叩き付ける。

「っ…まだまだ私を倒すには至らんな」 

立ち上がるセル。

しかし、いずれは体力を消耗して闘えなくなるかもしれないが、それよりも早くこの闘いに終わりが近付いていた。

「これを受けてもそんなことが言えるかセル!!」

魔貫光殺砲の体勢を取って指先に気を溜めようとした瞬間にセルが笑みを浮かべた。

「残念だったな孫悟飯。時間切れだ」

「な…っ?が…!?」

全身に激痛が走り、舞空術を維持できずに落下し、立つことも出来ずに地面に膝をつき、通常状態に戻ってしまう。

「その力に貴様の体が追い付いていないのだ。貴様は気付いていなかったかもしれんが私は貴様の変化に気付いていた。時間が経過するごとに貴様の体が悲鳴を上げていることにな」

悟飯が発現した力はあまりの強大さ故に徐々に悟飯の肉体を蝕み、蓄積したダメージが爆発したのだ。

例え同じ力を使おうと悟空達ならば決してこんな無様な姿を曝さなかっただろう。

神の領域に到達している3人のサイヤ人と比べて肉体の鍛練不足が致命的に慢性化している悟飯が自分の才能に見合うパワーを解放すると、肉体の方が保たないのだ。

「貴様の肉体は弱い。そんな脆弱な肉体であのような絶大な力を使いこなせると思っていたのか?もし、そう思っていたのなら、あの時のトランクス以上の馬鹿だ貴様は」

「っ…セル…!」

体を走る激痛に苦しみながらセルを睨む悟飯。

「基本的に貴様は心身が脆弱すぎる。そんな様では何も出来んぞ、私を殺すことさえな!!」

「…っ!」

「だが、つまらん結果になったが悪くはない収穫だ。貴様の真の力も見れた上に貴様の本性を改めて見ることが出来た」

「僕の…本性…?」

「そうだ、随分と楽しそうだったじゃないか?そんなに私との闘いが、命のやり取りが楽しかったと見える。私に攻撃が当たる度に嬉しそうにしてな」

「な、何を…!僕は…」

「隠すことはなかろう?貴様がどれだけ善良な地球人の皮を被ろうと貴様の本質は血と戦闘を好む残忍で冷酷なサイヤ人だ。ベジータが甘くなった今、貴様が最も忌避していた純粋なサイヤ人の在り方に最も近いのが貴様とは皮肉だな?」

「………」

セルを睨む悟飯だが、セルは笑みを浮かべるだけだ。

「あんまり弟をいじめないでくれるかな?」

悟林が悟飯の前に立って気を高める。

「人聞きの悪い。怠け癖のある貴様の弟に正論を説いているだけだ。特別に今回も見逃してやろう。貴様が今よりもパワーアップしてその力を使いこなせるようになれば、今度こそ素晴らしい闘いになるはずだ…今度こそ修行を怠るなよ。」

「ちょっとセル。私とは遊んでくれないのかな?」

「まだ私の進化は完全とは言えん。この闘いで良く分かった…貴様とはまだ闘う時ではない」

「そう、久しぶりに本気を出せそうかなと思ってたからちょっと残念」

「次の闘いの時を楽しみにしているんだな」

それだけ言うとセルは地球から脱出した。

事態を掻き回せるだけ掻き回してセルの良いようにされた気がするが、宿敵が更に強くなろうとしているのは素直に嬉しかった。

「そう言えばフリーザはどうしてるのかな?」

この宇宙でセルと同じく可能性の塊のような男はセルのように強くなっているのであろうか?

悟林はそれが気になって仕方がないが、セルマックスを倒してセルも地球から去ったことで取り敢えず悟飯に気を分け与えて強引に起こして拳骨一発。

「痛っ!?何するんですか姉さん!!」

「この大馬鹿愚弟!!使いこなせない力で怒りのまま強い敵に突っ込む馬鹿がどこにいるの!!」

「兄ちゃん、姉ちゃんに心配かけたんだからね。しっかり怒られなよ」

「そうだよ悟飯さん、正直悟飯さんの気がいきなり小さくなった時は本当に焦りましたから」

フュージョンが解けた2人も悟林に加勢する。

弟や将来の義兄(複雑だが)まで悟林の味方をするので悟飯は口を閉ざすしかなかった。

「でも、確かにお前は殻を破った。それこそいくつもの殻を一度に…口先だけじゃなかったことは認めてあげる」

「姉さん…」

力の大会前に悟林と手合わせした時に言った自分と未来の悟飯とは違う究極の姿は確かに見せてもらった。

「でも頭に血が上ると後先考えずに行動して酷い目見たり、やられるのはお約束かな…」

「うぐっ!」

大人になってからはまず本気で怒ることは無くなったが、幼少期の頃は怒りや追い詰められたことで潜在能力の一端を解放して逆に相手から手痛い反撃を喰らったり、高いところに移動して降りられなくなるのは幼い頃はお約束であった。

「それにしてもセルの奴も凄く強くなってたな…私も負けてられない。あいつに負けないよう修行しないと!!」

セルの進化に感化され、悟林も修行に更に精を出そうとする。

トランクスと悟天はこれからの修行の過酷さを考えると溜め息を吐く。

「2人も手伝ってくれるよね?」

しかし、悟林に対して強く出れない2人は頷いた。

「でも姉ちゃん、僕もそろそろ彼女を見つけたいからトランクス君と修行デートしてくんない?」

「お前って子はもう…そんなに彼女が欲しいの?」

「うん、だって僕以外のサイヤ人ってパンちゃん除けば相手がいるじゃない………冗談抜きで独り身は寂しいんだよ…姉ちゃん…何だかんだで姉ちゃんもトランクス君とイチャイチャするじゃない」

物凄く暗い影を背負った弟に悟林は思わず引いた。

「そ、そう…じゃあ悟天。正義の味方でもしてみたら?」

「正義の味方?」

何故、正義の味方をやらねばならないのか?

悟天は首を傾げた。

「いや、だってお前強いじゃない。お前の強さを見てもビビらないような女の子じゃないと交際とか結婚って難しいんじゃ…」

「…確かに…」

悟林の言葉にトランクスは頷いた。

自分の母も悟林の母も悟飯の妻も胆力があると言うか、夫の異常な力やら変身やら神の御業をあっさりと受け入れるような人物だ。

正直悟天もこの宇宙ではトップクラスに強い人間だ。

そんな人間の力を見ても受け入れられる地球人女性がどこまでいるのか悟林とトランクスには分からない。

「悟天、母さん達は平気だけどやっぱりお前の力は普通の人からすればビックリするぞ…だからある程度強いことは知ってもらった方が良いと思う」

強さを隠して交際してもいずれボロが出るだろうから、どうせならある程度強さを隠さない方が良いのではないだろうか?

「うーん、正義の味方か…」

「っ!悟天!グレートサイヤマンの後継者になるつもりは…」

「「「却下」」」

「な、どうして!?」

名案だと思ったグレートサイヤマン3号案は3人に一蹴され、悟飯はショックを受ける。

「悟飯、今度それパンちゃんに見せてみたら?絶対に拒絶されるから」

「悟飯さん、いい加減グレートサイヤマンは止めた方が良いですよ…」

「正直、ダサいから着たくない」

3人の言葉に悟飯はショックを受けて硬直した。

「全くこの馬鹿弟は……」

「はは、お疲れ様悟林さん」

「本当にね…あ、そうだ。トランクス君、あの時はありがとね」

「?」

悟林の言葉に首を傾げるトランクスに悟林は微笑む。

「セルマックスの攻撃から助けてくれたじゃない…格好良かったよ?」

「か、格好良い…(は、初めて言われた…!)」

交際して初めての彼女からの“格好良い”の評価にトランクスは感極まって悟林を抱き締めてしまった。

正直交際して多少の変化はあっても基本的に態度は変わらなかったのでこの評価はトランクスを感動させるのに充分だったのである。

「…あのさ、トランクス君。あんまり人前でこういうのしちゃ駄目なんじゃないの?」

トランクスの背をポンポンと叩くと我に返ったトランクスはすぐに離れた。

「す、すみませんでした…(やっぱりまだまだ意識はされないかなぁ…)」

まだまだ進展は厳しいと涙するトランクスだったが、悟林は先程の抱擁が突然だったこともあり、顔を真っ赤に染めて俯いていた。

悟林はサイヤ人の性質が強いが、地球人の性質も多少はあるのである。

「あ…あの…さ…こういうの…いきなりだと…そのビックリすると言うか…照れるから…こういうのは徐々に…ね?」

今までの悟林の中ではどうしても幼い頃のトランクスが過って異性を感じなかったが、不意打ち2回もの接触で感じた体の大きさと固さにもう子供ではない異性なのだと強烈に感じさせられた。

そしてサイヤ人の女性は強い男に惹かれる傾向もあり、サイヤ人の血を引く悟林もその例に漏れなかった。

その表情は赤面しながら初めての感情に戸惑っており、普段のサイヤ人の戦士としての自分しか知らなかった悟林が初めて“女性”としての顔を発露させた瞬間であった。

「え?あ、はい!!」

初めて見る悟林の“女性”の顔にトランクスは背筋を伸ばして返事をする。

しかし、同時に確かな手応えも感じた。

悟天もまた姉と親友の仲に変化が起きたのを感じた。

「(姉ちゃんってば顔真っ赤…!姉ちゃんって不意打ちに弱いんだ…!)」

「ご、悟天…あれは誰なんだ…!?あ、あんな反応を姉さんがするなんて…恐ろしすぎる…宇宙の終わりかもしれない…うわああああっ!!な、何でえっ!!?」

「うるっさい!この愚弟!!」

余計なことを言う双子の愚弟に超ギャリック砲を叩き込んで吹き飛ばす。

「兄ちゃんってさ、本当に姉ちゃんを怒らせることに関しては宇宙一上手いよね」

少なくとも同じくらい鈍感な悟空だってここまでの失言はしないだろう。

超ギャリック砲をまともに喰らって黒焦げになった悟飯を哀れむように見下ろす悟天であった。

「なあ、悟天。俺達…進展したのか…?恋人なのか微妙に分からない関係から進展したのか!?」

悟天は無言でサムズアップをした。

正直進展のきっかけがセルマックスだったのは予想外だった。

あの化け物がまさか2人の仲を進展させるキューピッドになるとは。

「やった…やったぞ!」

「おめでとうトランクス君!!いやあ、僕も姉ちゃんのレアな表情が見れたよ!!」

黒焦げになっている悟飯を他所に、悟林との進展に歓喜するトランクスにからかい混じりに祝福する悟天。

「と、とにかく…気絶してるパンちゃん連れて帰ろうか…」

「兄ちゃんとパンちゃんは僕が送ってくよ」

「え?良いの?」

「姉ちゃんはトランクス君ちに行けば良いんじゃないの?」

「おい!悟天!!」

「トランクス君…姉ちゃんは不意打ちに弱いと見た!隙を見て攻め続ければきっとイケると思う」

「…本当か?」

「姉ちゃんの弟の僕を信じろトランクス君…そもそもトランクス君も奥手だから恋人なのに進展が遅いんだよ…全く手の掛かる幼なじみなんだからさ…」 

「よし、悟天…しばらくお前の勉強手伝わないからな…」

「…え?…え?」

2人の会話は小さすぎて悟林には聞こえず、不思議そうに2人を見つめている。

それを最後の仙豆を食べて復活したピッコロが見つめていた。

「れ、恋愛か…やはり俺には分からん…しかし、悪い変化ではなさそうだ…」

初めて見る弟子の表情だが、悪い物は感じないので良い変化なのだろう。

一応、ヘドとガンマ達を連れてカプセルコーポレーションに連れていき、余計なことをされないようにと理由付けし、ブルマは若さを保つためにヘドのカプセルコーポレーションの入社を認めるのであった。

そして後日。

「あの、お母さん。お願いがあるんだけど…」

「何だべ改まって?」

「その、トランクス君の好きな料理…他にも何か知ってたら教えてもらえるかなあって…」

「………」

チチは娘の顔をマジマジと見た。

普段の悟林なら有り得ない、どこか恥じらいのある顔。

それを見たことでトランクスとの仲に進展があったのが理解出来た。

「お母さん?」

「しばらくはトランクスに足向けて寝られねえだよ…」

「は?」

今まで女らしくとは無縁だった悟林の変化にチチはトランクスに胸中で感謝したのであった。

更に後日、一度地球に戻ってきたベジータはブルマから息子の恋の進展があったことを延々と聞かされていた。

「いやあ、悟林ちゃんね。レッドリボン軍との闘いの後に家に来たんだけどトランクスに不意打ちでぎゅうっとされた時の慌てようなんて面白かったわ~。悟林ちゃんったら顔を真っ赤にしちゃってさ、意外に悟林ちゃんって不意打ちに弱いのねえ…からかいのネタが出来たし私の願いにケチを付けたりしたり、こっそりついていこうとしたのを邪魔されたお返しをしてあげないとね~。ねえ、ベジータも最近悟林ちゃんが私に厳しすぎないと思わない?将来の義母に対して」

「…当然の対応だ大馬鹿者」

当時のことを聞かされたベジータはブルマの奇行に頭痛を覚え、ジュースを飲んで頭痛を誤魔化しながら何時か堪忍袋の緒が切れた悟林にキツいお仕置きをされる妻の未来が容易に想像出来たのであった。 
 

 
後書き
闘いが長引いたせいで肉体が耐えきれずに自滅しました。

後もう少し変身が保てばセルを倒せていましたが。

天才の悟飯も努力した天才のセルに勝つには悟飯も心身を徹底的に鍛え直さないと勝てないです。 
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