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lineage もうひとつの物語

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冒険者
  アリ穴四階part5

アレンが広場に駆けつけウォレスへと振り下ろされた巨大モンスターの前足をグレートソードで弾き飛ばす。

「助かった!」

「なんですか、このバカでかいのは!」

そこにガンドが追い付き斧を振るい牽制をする。

「よく耐えた!さすがウォレスじゃ!しかしなんじゃこいつは。でっかいのぉ」

「わからん!挟み撃ちを避けるため迎え撃ったがほんとうにやばかった!」

「これアリなんでしょうか?」

グレートソードで前足を防ぎながらアレンは問いかける。

「顎の形と前足は戦士アリと似たものだ。しかし全体像はアリではなさそうなんだが」

モンスターの攻撃が分散されたことにより一息つけたウォレスは余裕のある動きで攻撃も与えている。

前面からしか確認はできないが普通のアリとは体の構造そのものが違うように見える。

「こいつは新種じゃろう!とうとう見つけたがこの状況はちとまずいのぉ」

3人の攻撃は硬い前足と顎に阻まれなかなか決定的なダメージを与えることができない。

通路幅が狭く回り込むことができず、かといって部屋に引き入れてもそこまで広くないため十分な距離の確保が難しく危険を伴う。

弓矢が届くかといえばそうでもなく、天井が低いためなかなか難しい。

最後に魔法という手段があるが体の殆どが通路に入ったままのため狙ってあてるのは難しいだろう。

「やはり回り込まないと無理か」

真正面に立つウォレスは顎を避け剣を叩きつけながら考える。

「一旦撤退しましょう!戦うにしてももっと広い場所でないと!」

ウォレスは自分の考えと同じアーニャの提案をすぐに実行する。

「一時撤退をする!タイミングを合わせて一撃を入れる!その後弓矢で牽制!最後にアーニャ、サミエルででかいのをお見舞いしてやれ!」

アーニャ、サミエル両名は打ちあわせることなく杖を構え同じ魔法の詠唱に入り、エレナ、テオドロス、イオニアの3名は弓を引き絞り狙いを定める。

ウォレスはモンスターの攻撃の合間を縫いタイミングを探す。

「今だ!」

ガンドが斧の腹で攻撃を流したときモンスターの体勢が崩れたのを捉え指示を出した。

前衛の3人のは各々全力で武器を振るい一撃を当て後退する。

間髪入れずモンスターに矢が降り注ぎモンスターの前進を止めることに成功した。

アレン、ウォレスの2名が撤退のためウィザードを通り越したタイミングで魔法が放たれる。

「「サンバースト!!」」

モンスターの頭上で炸裂したサンバーストの魔法は天井を穿ち落石を生み出し土煙によってモンスターの視界を遮ることに成功。

その結果を確認することなく後ろを振り向いたウィザードの二人はイオニア、テオドロスの両名の後に続き走り出す。

その後ろにガンド、エレナが続きモンスターから逃げ出すことに成功するのだった。






ランドル、ブランザ、エミリオの3名はアレン達が通ったであろう通路を慎重に進んでいる。

「止まれ」

ランドルが何かに気付き指示を出す。

「戻ってきている······のか?」

数名の足音が近づいてくるのを察知しその場に留まり前方を凝視する。

通路の奥に光が見え先程まで一緒だったアレンの姿を見つけた。

「まだ居たんですか!こっちは無理です。一旦離れます!」

アレンはランドル達を見つけるとそう伝え駆け抜ける。

「帰還できねぇんだ!合流させてもらうぞ!」

ランドルは仲間と共に撤退する列に加わる。

「訳わかんねぇよ!帰還できないとか聞いたとねぇ!」

ブランザはガンドの横で呻くように吐き出した。

「儂らもようわかっとらん。取り敢えず安全を確保するまで大人しくしとれ」


ガンドに諭され真剣な面持ちになったブランザは頷き前を向いて走る。

ある程度離れたところでスピードを落とし歩きにかえる。

「次右ね」

アーニャの指示に従いメンバーは進んでいく。

「アレ、一体だけなんでしょうか」

アレンは先頭を慎重に進みつつウォレスに問いかける。

「そう思いたいな。あれが何体もいるとか考えたくもない。ボスであれば一体だけだと思うが」

「たしかにそうですね。一度に複数と遣り合うとか考えたくないです······止まって!」

前方に気配を感じたアレンはメンバーに停止指示を出した。
ウォレスはテオドロスに偵察へ行くよう指示をだす。

テオドロスは頷くと弓を背に移し素早く通路の角まで移動する。
そっと覗き込んだテオドロスは先程とは打って変わって急いで戻った。

「先程と同じのがいます、部屋も似たような広さでした」

ウォレスは一瞬考え

「別の道を行く、アーニャちゃん頼む」

アーニャは頷くと地図に目を落とし素早く頭に叩き込む。

「大丈夫よ」

それを確認すると荒れを先頭に素早く移動、アーニャの指示に従い歩く。

「右で次まっすぐね」

アレンは気配を感じ停止指示を出す。

「まただ。またアイツがいます」

戻ってきたテオドロスは吐きつけるよう報告する。

それから何度も前進、引き返しを行いアーニャの地図はどんどん更新されていった。
もう何度目だろうか既に未知の領域へ踏み込んでからずいぶんと回り道をしている気がする。

「これ、誘い込まれてる気がするんだよね」

アーニャの言うとおり地図を見てみると明らかに階段から遠ざかっているのがわかる。

「小休止だ」

ウォレスはそう告げると腰を降ろしガンドは見張りへと移行する。

「アーニャちゃん、どう考える?」

「ランドルさん達の探索してた場所、モンスターに襲われた場所を書き込んでみたんですが、階段の反対側へと誘導されているように思えるんです」

地図を手渡されたウォレスは通ってきた通路を辿り考える。

「通路自体が曲がりくねってるからわかりにくかったが、こうやって見るとたしかに階段から離れる方向へと誘導されてるな」

ウォレスは地図を睨みながらどうやって危機を脱するか考えを巡らす。

「通路であのデカブツと対峙するのは避けたいがそうも言ってられんか」

「卵?」

アレンが何かを見つけたようでしゃがみ込みながら放った言葉に思考が一旦中断される。

「卵じゃと!?」

ガンドが足早に近付きウォレスもそれに続く。
そこには人間の頭部くらいの大きさで薄い膜に覆われ中にはアリの幼体が一体浮遊している。

「これは卵じゃ。間違いない。」

「なんてことだ。初の発見だぞ。持って帰ればとんでもないことになるぞ!」

興奮するウォレスの言葉を聞きながらサミエルは何かひっかかりを覚えた。

サミエルは新しい場所へ行く場合徹底的に調べてから赴くようにしている。
今回もその例に漏れずアリのダンジョンへ来る前にある論文を読んでいたのだ。
それは【ジャイアントアントの生態に関する考察】というタイトルであった。
通常の昆虫であるアリとモンスターであるジャイアントアントの生態を比べてみたもので、未知の部分は多々あるもののその殆どに差異が見られないという内容だった。
更にジャイアントアントは古い文献には存在が確認されておらずウッドベック地方が砂漠化してから出現したモンスターだということだ。
突然変異から生まれたモンスターなのかはたまた人為的に作られたのかそれはわからないが突然歴史に出てきたモンスターであることには変わりがないようだ。
考察の中ではモンスターと昆虫の生態が似すぎているため昆虫を巨大化、凶暴化させたのがジャイアントアントではないだろうかと書かれていた。
そして最後に綴られていたのは
『ジャイアントアントも頂点に君臨する女王が居て地中奥深くで産卵しているのではないか。』
とあったのを思い出した。
それが本当ならばこのダンジョンにも女王が居てこの通路の先に居るのではないか。

「ウォレスさん!この先に女王がいるのではないでしょうか」

今まで見なかった卵が見つかったのがその証拠で我々は女王の餌として誘導されているのではないかと思い至った。

「我々は女王の餌として誘い込まれてるかもしれません」

ウォレス達が驚きに目を見開いていると

「後ろからお客さん!それも大勢きてる!突破は不可能よ!」

エレナがそう叫び瞬時に全員戦闘体制へ移行する。

「後ろが無理なら進むしかない!アレン行くぞ!」

そしてアレンを先頭に奥へ進んでいくのだった。

 
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