lineage もうひとつの物語
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冒険者
アリ穴四階part4
脇道から出てくるアリをグレートソードで捌きながら走る。
満足に治療を行えなかった怪我人だが必死の形相で食らいつくように走る。
まだ全てのマップが解明されていないこの階層。
あの場で集まったアリがいつ何処から回り込んでくるのかわからない。
普通は仲間を呼ぶことはないが今の異常事態を見ていると仲間を呼ばないとは限らない。
少しでも距離を稼ぐためひたすら走った。
「もうすぐ仲間のとこに着きます。がんばって!」
サミエルが助けた怪我人へ励ますよう声をかける。
声をかけられた冒険者は声を出すのも苦しいのか首を縦に僅かに振るだけで返事をする。
ここまで自己紹介する気力もなく時間もない。
先頭を走るアレンやガンドは殿を努めていた戦士と会話をしているのでもしかしたら名前くらいは聞いているのかもしれないがサミエル、テオドールの二人にはわからない。
サミエルはどこかで見たことがある冒険者だと思いながら後で尋ねればいいかと前方へ集中をする。
「戦闘音がする・・・」
アレンが気が付きガンドが皆を止めポーションを飲みながら指示を出す。
「皆止まれ。急いで回復をするんじゃ。」
ポーションを飲んだ後、更にブレイブポーションを飲む。
それを見たアレンもブレイブポーションを飲み干した。
「広場へ着いたら坊主、サミエルは右、ワシとテオは左へ回ろう。他の奴らは十分回復した後、帰還すればええ。」
冒険者は自分達だけ帰還するのも悪いと考えたのだろう、逡巡する。
しかし自分のひしゃげた盾を見、怪我から立ち直ったばかりの仲間を見て頷いた。
その返事を待つと同時にアレン達は広場へと走り出す。
戦闘音がする方向へ行けばいいのでサミエル達が指示を出すこともない。
「よし、じゃあ帰還するか」
残された冒険者三人はポーションを飲み体力の回復をすると帰還スクロールを取り出しタイミングを合わせるためカウントダウンをする。
だが、
「なぜだ!なぜ反応しない!」
唸りながら数回繰り返すもスクロールは反応しない。
アーニャ達と違い過去にも起こった事態という予備知識を持っていない冒険者からすればパニックとなってもおかしくはない程の事である。
怪我をしていた戦士が焦りながらリーダーであろう戦士に向け問う。
「くそっ!どうするよランドル?」
ランドルと呼ばれた殿を努めた戦士は即座に決意する。
「俺達も合流しよう。すぐに戦闘へ移行する可能性が高い。ブランザ、怪我の具合は?」
「大丈夫だ。さっきのように天井の崩落がなければいける」
「よし、エミリオの魔力はどうだ?」
エミリオと呼ばれた戦士は長い耳にかかった髪の毛を払い除けるような仕草をし応える。
「半分程だ。さっきよりは、な」
撤退時ブランザに肩を貸していたのはエルフだったようで端整な顔には疲労が浮かんでいる。
弓を持っていないことから完全な前衛タイプのエルフのようだ。
エルフは一般的に人間より戦士としての適性は低い。
人間は魔法の適性があるかないかでハッキリと分かれるがエルフは違う。
全員がある程度の魔力を有しているため、魔法による底上げが独自に可能な点は強みでもある。
上級者になると魔法で火力と防御力を底上げし、ヒールで回復しながらモンスターの弱点属性の魔法での攻撃も織り混ぜて戦う。
弓を持つ者も同じように闘うが接近戦で効果を発揮する火属性の聖霊魔法を忘れるわけにはいかないだろう。
武器に炎を纏わせることのできる聖霊魔法は相手が生物である限り絶大なる効果が期待できるのは明らかだろう。
その時の火力は瞬間的にだが人間の戦士を上回り一対一の戦いに於いては他の追従を許さない。
その代わり魔力が切れると一気に戦力ダウンとなってしまうという欠点も存在するのだが。
先程の助けを求めていた撤退戦がいい例だろう。
勿論のことだがその聖霊魔法はパーティーメンバーであるならばメンバー登録の魔法石を通して他人へも宿すことができる。
「ブルーポーションで回復しながらやるさ」
エミリオはブルーポーションを喉に流し込みながらランドルを見る。
「俺が先頭を行く、エミリオとブランザは並んで支援だ」
二人は頷くとランドルに着いて歩きだした。
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