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赤い果実

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第二章

「一体」
「わからないわね」 
 ティスペーも理解が及ばずそれが顔に出ていた。
「どうしてなのか」
「桑に何かあるのか」
「私達の想いを適えてくれるものが」
「それはこれからわかる、思いも寄らぬ知恵を出すのが神ではないか」
「人間にはとても及ばない」
「それを出して下さって」
「そして人を幸せにするのがな」 
 それがというのだ。
「まあイシュタル様は気まぐれで時折不幸も与えられるが」
「今回は違うか」
「そうなのね」
「不幸せにするならそのまま放っておく」
「僕達についてはそうか」
「このままだと結ばれないから」
「最初からわしをよこさぬ、それでだ」
 二人にさらに話した。
「兎に角だ」
「街の外れの桑の木か」
「あそこに行けばいいのね」
「そうだ、それで女はだ」
 ティスベーに対して特別に告げた。
「ヴェールを持って行け」
「ヴェールをなの」
「それを持って行くのだ」
 こう言うのだった。
「いいな」
「桑の木にヴェールなんて」
「どういうことなんだ」
 ピュラモスはまた首を傾げさせた。
「わからないな」
「本当にね」
「だから人間には及びつかない知恵でだ」
 ライオンはまた二人にこう言った。
「人を幸せにするのが神だからな」
「それでか」
「私達はなのね」
「わしの言う通りにしろ、いいな」
 ライオンは二人に強く言った、そうしてだった。
 ティスベーにヴェールを持たせて二人をバビロンの街の外れの桑の木のところまで行かせた、そしてだった。
 ライオンはその桑の木に実っている実を数個食べた、すると。
 その口そして実を触った前足も赤く染まった、そのうえでだった。
 ティスベーのヴェールを借りるとその口を前足で引き裂いた、そうしてから二人に対して告げた。
「後は暫くイシュタル様の神殿に隠れておれ」
「貴方をつかわしてくれた」
「そのイシュタル様の」
「神官や巫女達は事情を聞いているからな」 
 二人のことをというのだ。
「イシュタル様からな」
「それでか」
「暫くなのね」
「そこに隠れておれ、あと男は髪の毛を少しここに置け」
 ピュラモスにはこう言った。
「わしが少し取るからな」
「僕は髪の毛か」
「そうだ、この牙と前足でな」
 赤く染まったそれでというのだ。
「そうする、いいな」
「何かわからないけれどそれでは」
「うむ、そうするぞ」 
 ライオンは彼の髪の毛を少しそうした、二人は彼の髪も済むとイシュタルの神殿に匿われて隠れた。その翌朝。
 二人がいないことにそれぞれの家の親達は騒いだ。
「何処に行ったんだ」
「朝起きたらいないけれど」
「まさか外に出たのか」
「お家の何処にもいないわ」
 彼等はそれぞれの家の隅から隅まで探した、しかし。
 何処にもいないので外に出た、すると。 
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