赤い果実
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第一章
赤い果実
バビロンの話である。
この街のピュラモスとティスベーという若い恋人同士がいた、二人共愛し合っていたが。
隣同士の二人の家は親達の仲が非常に悪かった、それで何かあるとすぐに喧嘩をしていて二人もだった。
親に隠れて会うしかなかった、ピュラモスは黒髪が鬣の様であり引き締まった細い長身に涼し気な黒い目と顎が尖った細面の青年でティスペーはきらきらとした黒い目に腰まである絹の様な黒髪と細面で小柄ながら見事な身体の持ち主だ。二人は家と家の間にある僅かに崩れたところでいつも会っていた。
その中で愛を育んでいたが二人の両親は仲が悪いままだった、それで何時結婚出来るのかと悩んでいた。
そうして毎晩会っていたがある日のことだ。
二人が会っているとそこにだった。
一匹の雄ライオンが来た、二人は慌てて身を隠したが。
「おい、街にライオンが出ると思うか」
「そう言われると」
「そうよね」
「わしはイシュタル様に言われてきたのだ」
ライオンはその二人に言ってきた。
「街に入ってきたライオンではない」
「イシュタル様の使いか」
「そうなのね」
「そうだ、街にライオンが出てみろ」
このバビロンにというのだ。
「すぐに大騒ぎになるぞ」
「それが豹や狼でもそうだな」
「そうね」
「一瞬危ないと思って隠れたが」
「考えてみればそうね」
「そうだ、それで話を戻すが」
ライオンは二人にあらためて言った。
「わしはイシュタル様の使いと言ったな」
「あの愛と戦いの女神の」
「そのイシュタル様よね」
「愛の女神としてお主達がこっそりと会っていることが忍びなくてな」
イシュタルがそう思ってというのだ。
「それでわしをよこしてお主達の恋愛成就を適えようというのだ」
「そうなのか、イシュタル様が」
「そうお考えなのね」
「それでわしが来たのだ」
こう二人に話した。
「別に取って食わぬから安心せよ」
「それなら」
「私達もね」
「うむ、それでお主達だが」
ライオンは二人に対して話した。
「桑の木のところに行け」
「桑?」
「桑の木の」
「街の外れ、城壁の傍のな」
そこのというのだ。
「そこに行くのだ」
「どうして桑の木なんだ」
ピュラモスはライオンの言葉に首を傾げさせた。
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