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英雄伝説~西風の絶剣~

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第71話 幽霊船

side:リィン


 フィー達と別れた後、俺は姉弟子とケビンさんと共に導力ボートに乗ってマリノア村に向かった。村近くの浜辺にボートを泊めて風車小屋を貸してもらい夜まで海を見張ることにした。


「フィー達は大丈夫かな……」
「まあ幽霊船と比べればまだ白い影の方が可愛い物かもしれないよ」
「せやで、経験者から見てもこっちの方がヤバそうや、恋人が気になるのは無理ないやろうけどこっちのほうに集中した方がええで」


 フィー達を心配する俺に姉弟子が慰めてくれてケビンさんが注意しろと言う。まあそれ自体は正論なのでいいんだけど……


「ケビンさん、だからフィーは妹ですから……」
「嘘つけ、あんなラブラブオーラ出しといて恋人じゃないって世のモテへん男どもにケンカ売っとるんか?」
「なんであなたが怒るんですか……」


 少なくとも今はそう言う関係じゃないので訂正すると何故かケビンさんが怒った。


 いやケンカを売りたいなんて思ってないし頑張れば彼女位すぐに出来るんじゃないのか?


「弟弟子君、それは人前で言ったら駄目だよ」
「心の中を読まないでください、姉弟子」


 そんなやり取りをしながら時間が過ぎるのを待つ俺達、時刻は夕方辺りになり日も沈み始めてきた。


「そろそろ夕ご飯の時間だね、私が何か買ってくるよ」
「えッ、でも……」
「いいからいいから!お姉ちゃんに任せてよ!」


 姉弟子はそう言うと夕飯を貝に行ってしまった。ケビンさんと二人きりか……


「ケビンさんはいつも古代遺物の件で動いているんですか?」
「せやな、巡回神父として各地を周りながら古代遺物などの被害がないか確認してまわるんや。ああいうのは気が付いたら異変を巻き起こしとるパターンが多いからな。まあ直接七曜教会に連絡が来て向かうっちゅうパターンもあるんやけど……今回は両方やな」
「なるほど……」


 そういえばルーアンの元市長であったダルモアが所持していた古代遺物を回収しに来たって言っていた、まさか同じ町で二回も古代遺物の件で関わるとは思っていなかったんだろうな。


「ところで少年、君なにか悩み事でもあるんか?」
「えっ?」
「隠しても分かるわ、そう言う人間は沢山見てきたからな。どや?ここに神父がおるんやし相談でもしてみんか?」


 ……これは鬼の力の事を言われているのだろうか?この人隠してるけど唯の神父じゃないのは分かっている。教会のそういう裏事を担当してる人なのは間違いないだろう。


 だから素直に話すのは控えるべきだ。そもそも完全には信用できないしね。


「えっと……実は俺、二人の女の子に告白されて……どっちを選ぶべきか悩んでいまして」
「なんやそれ!やっぱり世の男どもにケンカ売っとるんやな!?ええで、そのケンカ買ったるわ!」
「なんでホウガンを構えてるんですか!そっちが話せって言ったんでしょうが!」
「やかましい!そんな不純な悩みやとは思わなかったんや!まったく最近の若いモンは……」
「貴方も若い方でしょうが」


 なんなんだこの人、これが素なのか演技なのかつかみにくいな……


「まあ冗談はここまでとして……せやな、リィン君はその子達の事どう思っとるんや?」
「……最初は俺って死にたがっていたというか自分が犠牲になれば皆が幸せになるっていうような考え方をする人間だったらしいんです」
「なるほど、自己犠牲が強かったんやな」
「はい、でもフィーが教えてくれたんです。俺が死んだら一生悲しむ人たちがいるって……だから俺はもう自分だけで厄介ごとを抱え込まないようにしようって思えたんです」
「いい子やな、その子の言う通りやで。自己犠牲を否定する気はないけどやっぱ好きな人が死んだら人間は悲しいもんや、大人になってもそれは変わらん事や」


 いつの間にかガチの人生相談になり始めたね。でもこの人は神父だしそう言う人ともかかわってきた経験があるかもしれない。ここは渡りに船でもう少し相談してみよう。


「フィーちゃんの事が大好きなんやな。それでもう一人の子は?」
「ラウラは俺にとって好敵手であり高め合っていきたい相手でした。俺が剣士として高みに行きたいって思えるのはラウラのお蔭だと思っています。それに彼女はとてもまっすぐである意味憧れの存在なんです。そんな彼女が俺の事を好きだって言ってくれて……なんかすごく意識しちゃって……」
「つまり憧れの存在から告白されて凄い意識してしまうって訳やな。なんや、二人にベタ惚れやないか、聞いとるこっちがむず痒くなってきたわ」
「うぅ……」


 こうして他人に二人への想いを話したことなかったけどやっぱり俺は二人が好きなんだ。でも……


「それでも俺は二人に想いを答えることが出来ないんです。過去に大切な女の子を俺のせいで失ってしまった事があって……それを思い出すとどうしても体が震えてしまって……」
「そうか、トラウマがあるんやな?キツいよなぁ、大切な人を失うのは……」
「ケビンさん?」


 何か雰囲気が変わったケビンさんに困惑してしまう。どうしたんだ?


「……いや、何でもあらへん。とにかく俺が言えるのはリィン君がどうしたいかが大事やと思うよ」
「俺が?」
「せや。リィン君は二人に想いを伝えたいけど怖いんやろ?ならトラウマを無理に起こす必要もない、まずは自分の事を優先するべきや」
「いいんでしょうか、二人の想いを利用してるみたいで……」
「卑怯に感じるんか?でもな、やっぱ人間は自分が一番大事や。自分が苦しいのに無理したっていい結果は出えへんよ。返って二人に失礼や」


 確かに俺は早く二人に返事をした方が良いと思ってたかもしれない。でもそんなの真剣に告白してくれた二人に失礼だ。


「もしかして周りに急かされたりしたんか?まあ全部の事情を知らなければリィン君の方に非があるように見えるけど、それでもちゃんと時間をかけて考えた方がええわ。じゃなきゃお互いの為にならんと思うで」
「……でも」
「大丈夫やって。ラウラって子は分からんけどフィーちゃんはめっちゃいい子や、あの子と一緒にいれば絶対にトラウマも乗り越えられるはずや」
「……」
「だからまずは自分を優先するべきや、そしてトラウマが解消出来たら真剣に二人へ思いを正直に答えたらええ」
「……そうですね。ありがとうございます、少しだけ気持ちが軽くなりました」
「力に慣れたんなら幸いや」


 最初は誤魔化すために話をしたけど結果的には真面目な相談をすることが出来た。心が少しだけ軽くなった気がする。


「話は終わったで、そろそろ入ってきたらどうや」
「えっ?」


 ケビンさんが風車小屋の入り口の扉にそう声をかけた。すると涙目の姉弟子が入ってきた。


「姉弟子!?もしかして今の話……」
「うえ~ん!ごめんね弟弟子君~!なにか嫌な事があったのかなってさっきの会話で思ったけど……まさかトラウマがあったなんて思わなかったの!それなのに私、早く告白の返事をした方が良いって偉そうに言ったりして……本当にごめんね~!!」
「あ、姉弟子!泣き止んでください!はたから見れば俺が最低な事をしてるのは間違いないんですから!俺は気にしてませんから!ねっ?」
「うえ~ん!」
「どうしよう……」


 その後なんとかして姉弟子をあやすことが出来た。ふー、凄く疲れた……


 でも姉弟子もいい人だよな、真剣に俺やフィーとラウラの事を想ってくれているのは間違いない。


(俺もしっかりしよう。見守ってくれた皆やフィーとラウラの為にも……)


 俺は決意を新たにして仕事に励むのだった。


―――――――――

――――――

―――


 その後夕飯を食べてさらに時間が立った、辺りは真っ暗になり海原も星の光を映すほど黒く染まっている。


 俺は双眼鏡で沖を見ているが幽霊船は見当たらないな。


「どう、弟弟子君?何か見えた?」
「いえ、今のところは……ッ!?」


 その時だった。何もなかった海の上に突然青い炎を纏ったボロボロの船が現れた。


「出ました!幽霊船です!」
「ええッ!?」


 俺の言葉に他の二人も双眼鏡で確認する。


「本当に幽霊船だ、実在したんだ……」
「ケビンさん、あれは……」
「まだ断定は出来へんけど、多分古代遺物が絡んどる可能性があるな。アレに近づいて確認せなあかん」
「ならボートに行きましょう!」


 俺達は泊めていたボートに向かい幽霊船に向かってボートを操縦する。だが幽霊船は俺達が接近しようとすると大砲で砲撃をしてきた。


 俺は急いでボートを操縦してなんとか回避する。


「きゃああっ!?」
「マジか!撃ってきたで!?」
「ケビンさん、操縦お願いします!」
「ちょっ!?」


 俺はケビンさんに操縦を交代してもらいボートの先頭に立つ。


「緋空斬!!」


 太刀を振るい炎を纏った巨大な斬撃を放ち砲弾を切り裂いていく。


「凄い!私も溜めないとあんな巨大な斬撃は出せないよ!」
「ケビンさん、今です!」
「よし来た!」


 緋空斬で砲弾を斬った隙をついてケビンさんがボートを一気に船に寄せた。


 俺は姉弟子を抱き寄せるとワイヤーを使って船の上に乗り込む。すると甲板にいた骸骨のような魔獣が襲い掛かってきた。


「疾風……螺旋撃!」
「剣技・八葉滅殺!」


 まず疾風で周囲の骸骨を切り裂き続けざまに螺旋撃で固まっていた所をまとめて吹き飛ばした。姉弟子も怒涛の連続攻撃で他の骸骨たちを一掃していく。


「残月……業炎撃!」


 後ろから斬りかかってきた3体の骸骨をカウンターで返り討ちにして業炎撃で追い打ちを仕掛ける。


「無双覇斬!」
「光破斬!」


 そして周囲を取り囲んでいた骸骨たちを一掃した。姉弟子も巨大な斬撃で骸骨たちを打ち倒した。


「ケビンさん、こっちは片付きました。今縄梯子を下ろしますね」
「弟弟子君、大活躍だね。私殆ど何もできなかったよ」
「そんなことないですよ、姉弟子のフォローが無かったらもっと苦戦していました」


 二人でハイタッチをしてケビンさんを船の上に引き上げる。さて、これで終わりだとは思わないけど……


「あれ?」
「どうしました、姉弟子?」
「なんか周りが変じゃない?霧が出てきてる」
「そう言われると確かに一瞬で濃い霧に包まれていますね」


 さっきまで晴れていたのにいつの間にかまったく前が見えないくらいに霧が出てきていた。


「これはまさか……」


 ケビンさんは何かに気が付いたようで船の外……海がある部分を見る。そして大きなため息をついた。


「やられたわ……二人とも、下を見てみい」


 俺は言われたとおりに下を見ると……何と海が無かった!霧の上をまるで飛ぶようにこの船は進んでいるんだ。


「どうなってるの!海がないわ!?」
「特異点に引き込まれたんや」
「特異点?」
「簡単に言えばゼムリア大陸に作られた別次元の事や。古代遺物を追ってると稀にこういう場所に引き込まれてしまうケースがあるんやけど……」


 ケビンさんがこの空間について教えてくれた。特異点という全く別の空間に引き込まれてしまったらしい。


「特異点から出るにはこの空間を作っとる元凶を叩くしかあらへん」
「じゃあまずはそいつを探すしかないって事ですか」
「せやな。ただ注意せえや、特異点は生み出した奴のテリトリーや。何が起こるか分からへん」
「分かったわ。いつも以上に注意して進みましょう」


 特異点から出るのはこの空間を生み出している元凶を倒すしかないようだ。俺達は元凶を探して幽霊船を探索する事になった。


「ここから中に入れそうだな」
「でもこの船そんなに大きくないし案外早く元凶が見つかるんじゃないかな?」
「確かにそうですね」


 俺と姉弟子は船の大きさからしてすぐに元凶が見つかると思っていた。だが……


「えっ、なにこれ!?」
「明らかに船の大きさ以上の空間が広がっている!?」


 そう、外見はそこまで大きくなかった船の内部はまるで遺跡のように複雑な構造をしていた。


「だから言ったやろう、ここは敵のテリトリーやと」
「なるほど、常識は通用しないって事ですか」
「そう言う事や。ここを船やと思わんほうがええ」
「なら何が起こってもおかしくなって想いながら慎重に進みましょう」


 予想以上の異常な光景に困惑しながらも直ぐに思考を切り替えて進むことにした。どの道元凶を倒さないことにはここから出られないからな。

「ギキャアッ!!」


 するとまた骸骨たちが襲い掛かってきた。しかも今度は武器を構えて海賊らしい姿だ。


「来たよ、二人とも!」
「ええ、迎撃します」
「援護は任せときな」


 俺達も武器を抜いて戦闘態勢に入った。目の前から迫ってきた骸骨の一帯を上段から切り裂き更に横一閃に振るい二体を倒す。


 上から奇襲をかけてきた骸骨を攻撃しようとするが、そこにボウガンの矢が刺さって骸骨は消滅してセピスになった。


「ケビンさん、ありがとうございます!」
「気にせんでええ、そっちも気を付けや」


 ケビンさんは正確な射撃で骸骨たちを倒していっている、更に接近されても仕込み刃で迎撃するという遠距離も近距離もどちらもこなす高い技量を持っているようだ。


(……敵には回したくないな)


 何か隠しているのかもしれないが味方なら頼もしいな、今は存分に頼りにさせてもらおう。


「ギギ……」


 骸骨たちは俺達を倒せないと分かるとそのうちの一体が壁を推すような動作を取る。すると壁の一部が引っ込んで辺りに地響きが起こった。


「なに?なにが起こったの!?」
「嫌な予感がするわ……」
「二人とも、後ろです!」


 地響きの正体は巨大な岩だった。通路を覆い隠すほどの巨大な岩がこちらに向かって転がってきたんだ。


「なんやあの大岩は!?アカン、このままじゃ全員ぺちゃんこにされてまうで!?」
「逃げるよ!」


 俺達は大岩から逃げるが何故か通路を曲がっても俺達を追いかけるように大岩も曲がって追いかけてくる。


「どうなってるの!?」
「これも特異点を生み出した元凶の仕業なんでしょう!俺達をつぶすまであの大岩は止まらないはずです!」


 ケビンさんはこの特異点は元凶の意のままだとさっき話していた。つまりあの大岩も元凶が操っているのだろう。


「アカン!?行き止まりや!」


 通路の先が壁で塞がれていた。追い込まれたか……!


「どうしよう!このままじゃ一巻の終わりだよ!」
「誰かガイアシールドとか使える奴はおらへんのか!?」
「使えるのは多分エステルだけですね……どのみち間に合わないでしょうけど」


 完全防御できるアーツはあるが生憎俺達は使えない。仮に使えても発動までに間に合わないだろう。


「こうなったらあの大岩を破壊するしかないですね」
「えッ!?流石にあんな大きな岩を斬るのは無理じゃないかな!?」
「一人なら無理でしょうね、でも姉弟子とケビンさんが協力してくれれば必ず何とかできます!」
「ならその自信にかけてみようやないか」


 俺は大岩を破壊する提案をして二人は乗ってくれた。まずは……


「姉弟子、光破斬で何処でもいいから大岩に切れ込みを入れてくれませんか?俺はその間にクロックダウンを駆除しますから」
「分かったよ!」


 俺はアーツの準備を始める、クロックダウンなら間に合うだろう。その間に姉弟子は光破斬で大岩に切れ込みを入れた。


「ケビンさん、俺がクロックダウンで大岩の動きを遅くしたら姉弟子がいれた切れ込みにボウガンを打ち込んでヒビを作ってください!」
「任せときな!」


 そして俺はクロックダウンを発動して大岩の時を遅くして転がるスピードを減速させる。そこにケビンさんが放ったボウガンが切れ込みに突き刺さって大岩にヒビが入った。


「後は俺がやります……!」


 俺は刀を構えて突きの体勢に入った、放つのは勿論時雨だ。


「今までの時雨じゃ駄目だ、安定していて尚且つ凄まじい威力の技にしないと……」


 今まで一番威力のあった時雨は『時雨・零式』だが相手に近寄らないと使えないという弱点があった。


 だが普通の時雨では威力に欠ける、だから時雨のように素早く出せながらも威力を高めた新技を考えていたんだ。


「これが俺の新しい技……『水龍脈』だ!!」


 突きを放つ瞬間、つま先から手首に至る全身の関節を回旋させてねじり込むように大岩の切れ込み目掛けて突きを入れた。


 すると大岩のヒビが広がっていき、最後には木っ端みじんに砕けた。


「凄い凄い!弟弟子君、今のって八葉一刀流の技なの!?」
「いえ、螺旋撃を参考にしましたけどあれは俺が好んで使う時雨を改良した技である『水龍脈』ですよ。強烈な回転の力を突きに入れて威力を向上させたんです」
「へぇぇ……!自分で技を作っちゃうなんて凄いね!」
「あはは、恐縮です」


 姉弟子はぴょんぴょんと目を輝かせて褒めてくれる。凄く恥ずかしいな……


「でも大したもんやな。流石はあの猟兵王の息子なだけあるわ」
「やっぱり知っていたんですか?」
「そりゃ荒事に関わっとる人間なら知らんほうがおかしいやろ」


 ケビンさんは俺の正体を知っていたらしい。まあ俺も彼が唯の巡回神父じゃないのは分かってるし裏事を担当してるなら知らない方がおかしいか。


「まあ別に七曜教会は猟兵と敵対しとるわけじゃないからそんなに警戒せんでもええで。俺の目的は古代遺物やからな」
「えっと、気を遣わせてしまいましたか?」
「別に気にしとらんよ。カンのいい人には怪しまれる事もあるからな」


 どうやら彼は俺が警戒してることを感づいていたみたいだ。やはり只者じゃないな。


 ただ彼の言う通り俺達も七曜教会と争っている訳じゃない。あまり警戒しすぎるのも良くないな。


「まっそんなことはいいんや。今はココから脱出することが先決やからな」
「そうですね、ならここから先も協力していきましょう」
「おう、頼りにしとるで」


 彼の言う通りまずはココから脱出するのが先決だ。その為にも彼の力は必要だし個人を警戒してる場合じゃないな。


 そう思い俺はケビンさんと握手を交わした。相談にも乗ってくれたし猟兵っていう立場じゃなきゃ個人的には好きなタイプだ。


 それから俺達は遺跡を進んでいくと通路から洞窟のような場所に出た。本当になんでもありだな。


「さっきまで綺麗に作られていた遺跡から手入れがされていない洞窟になったね。通路もボロボロの木の板になってるし危なっかしいよ」
「せやな、いきなり足元が崩れて真っ逆さまなんてならんように気を張っておかんとな」


 俺達が歩いている通路は今にも崩れそうなくらいボロボロの木の板で出来ていた。ケビンさんの言う通り足元には注意しておかないとな。


「キシャアッ!!」


 すると通路の前と後ろからまた骸骨のような魔獣が襲い掛かってきた。


「挟み撃ちされた!」
「姉弟子は後ろを、ケビンさんは俺達のフォローをお願いします!」
「了解や!」


 俺は前の魔獣達目掛けて緋空斬を放った。狭い足場なのもあって緋空斬を喰らった魔獣たちは下に落ちていく。


 姉弟子も同様に光破斬で魔獣たちを迎撃していく。


「いくで!ダークマター!!」


 ケビンさんは空属性のアーツである『ダークマター』を崖側に発動した。強力な重力の塊が魔獣たちを引き付けて下に落としていく。


 俺達は巻き込まれないように必死で踏ん張った。


「今や!前に向かって走るんや!」


 ケビンさんの合図とともに俺達は走り出した。このままマゴマゴしていたらまた囲まれてしまうからだ。


 すると背後から爆発する大きな轟音が聞こえた。左右を見ると大砲を構えた骸骨たちが崖の上から俺達を狙っていた。


「マズイ!狙われているぞ!」
「走れ!とにかく走るんや!足を止めたら終わりやで!」


 あの数では3人だと迎撃する間もなく砲弾の餌食になってしまう、そう判断した俺達はとにかく逃げることにした。


「きゃあああっ!」
「もう少しや!二人とも気張れや!!」


 確かに先を見ると洞窟の終わりが見えてきた。あそこに出れば砲弾は届かないだろう。


「あっ……」


 その時だった。足元の跳ね上がった木材に運悪く足を撮られてしまった姉弟子が大勢を崩してしまったんだ。


「姉弟子!」


 俺は直ぐに姉弟子の元に向かい彼女を起こした。だがこの絶好のチャンスを魔獣が見逃すはずもなく俺達に目掛けて砲弾を撃ってきた。


(回避できない……なら!)


 回避は不可能だと判断した俺は姉弟子を抱えて下に跳んだ。


「リィン君!アネラスちゃん!」


 上からケビンさんの声が聞こえるがどうする事も出来ずに俺と姉弟子は落ちていった。


  
 

 
後書き
 ―――オリジナルクラフト紹介―――


『水龍脈』


 全身の関節や筋肉を使い時雨に強い回転の力を加えて放つ。弱い相手なら防御や硬い盾も打ち砕くことが出来る。 
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