恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百二十四話 黄龍、娘を救うのことその十四
二人が防いだその隙に間合いを一気に離してだ。こう言うのだった。
「忌々しいけれどね」
「今日のところはこれで」
「何っ、逃げるのか」
「勝負を捨てて」
「ええ、そうよ」
赤くなっている目でだ。司馬尉は関羽と呂布に返した。
「そうさせてもらうわ」
「おのれ、させるか!」
「逃がさない」
二人はその得物を振るい衝撃波を放った。それで撃とうというのだ。
しかしそれはだった。
二人は姿を消し衝撃波は虚しく空を切った。そうなってしまった。
そしてだ。二人が姿を消すと共に。
オロチの面々もだった。
ゲーニッツは二人の気配が消えたのを察するとだ。神楽に恭しく一礼して述べた。
「では今宵はこれで」
「撤退するというのね」
「はい、そうです」
こうだ。慇懃に述べるのだった。
「そうさせてもらいます」
「後日再戦ね」
「そうなります」
「私としてはここで決着をつけたいけれど」
「この度はこちらの事情を優先させてもらいます」
「わかったわ」
無論本意ではないがこう答える神楽だった。
「それではね」
「はい、それでは」
「けれど。次こそは」
去るゲーニッツにだ。神楽は告げた。
「わかっているわね」
「無論です。我々にしてもです」
「次にというのね」
「決戦とさせて頂きますので」
こう答えるのだった。
「それで宜しいですね」
「そういうことね。次こそは」
「ではまた御会いしましょう」
ここでも慇懃なゲーニッツだった。その態度は変わらない。
そうしてだった。彼は天にその右手を掲げてだった。
風の中に消えた。そうしてだ。
刹那もだ。黄龍に対して述べた。
「では俺もだ」
「消えるのいうのだな」
「今はそうさせてもらう」
黄龍にまた述べる。
「返答は聞かない」
「そうか。ではだ」
「貴様を倒し、今度こそだ」
「その常世をか」
「この世に出す。覚悟しておくことだ」
言うことは変わらない。
「ではな」
「貴様はわしが封じる」
そしてそれは黄龍もだった。
その刹那を見据えてだ。言うのだった。
「この世界の、そして子供達の為に」
「その為にか」
「一度は死んだ身、惜しくもない」
最早彼にとって命はそうしたものだった。
そのことも言ってなのだった。
「では次だ」
「その時にこそ」
「貴様を完全に封じる」
この考えをまた口に出してみせたのだ。
「何があろうともだ」
「では今度会った時にだ」
刹那は姿を消す直前にまた述べた。
「常世を導き出すとしよう」
こう告げてだった。彼は姿を消すのだった。そうしてだ。
他の者達も消えてだ。後に残ったのは。
連合軍の者達だけだった。まずは曹操が言った。
「勝った、のかしら」
「はい、おそらくは」
「そう考えていいかと」
夏侯姉妹がその彼女に答える。
「敵は消えました」
「残っているのは我々です」
「そうね。そうした意味では飼ったわ」
曹操も言う。そのことはだ。
しかしそれでもだ。釈然としない顔になってこうも言うのだった。
「けれど。完全な勝利ではないわね」
「敵は逃げました」
「何処かに」
「また。戦わなければならないわね」
曹操は苦い顔で述べた。
「奴等とは」
「限定的勝利ですわね」
曹操のところにだ。袁紹が来て述べた。彼女の周りには袁紹軍の五大明王、それに審配がいて警護、袁紹の突出を防いでいる。
「どうやら」
「そうね。完勝では絶対にないわ」
それは曹操も言う。
「今度こそはね」
「ですね。残念ですけれど」
「リターンマッチですよね」
顔良と文醜が述べた。
「けれどとりあえずはですね」
「勝ちましたし。それじゃあ」
「ええ、劉備に伝えて」
曹操は顔良と文醜の言葉にすぐに応えてだった。
傍にいた兵士にだ。こう告げたのだった。
「勝ち鬨よ」
「はい、ではすぐにお伝えします」
「戦いは勝ったわ」
そのことは紛れもない事実からであった。
「それならね。今はね」
「畏まりました。それでは」
こうしてだった。劉備に勝ち鬨のことが伝えられてだった。
実際に陣に勝ち鬨があがる。赤壁での戦いは連合軍の勝利に終わった。しかし戦いそのものは終わってはいない、誰もがそのことを噛み締めていた。
第百二十四話 完
2011・11・13
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