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第三十一話 しっかりした人その一

                第三十一話  しっかりした人
 一華はかな恵達に朝の教室で昨夜母に食事中に言われたことを話した、すると富美子が眉を顰めさせて言った。
「そんな人になったらね」
「やっぱり駄目よね」
「あの、その人何処かで聞いたけれど」
 こう言うのだった。
「本当に誰からもね」
「見捨てられたの」
「あんまりにも酷くてね」
「それでよね」
「その人物凄く図々しかったとも聞いてるわ」
「そうだったの」
「親戚のお家にね」 
 そこにというのだ。
「今日行くって言ってね」
「行ってたの」
「行っていいかじゃなくて」
 そうでなくというのだ。
「行く、よ。それも三時か四時に行って」
「お昼の?」
「お邪魔しますとも言わないでお家に上がり込んで」
 そうしてというのだ。
「ご飯何杯も遠慮なく食べておかずもで」
「本当に遠慮しないわね」
「お風呂入ってお布団出してもらって寝て」
「それも図々しいわね」
「朝ご飯も何杯も食べて帰っていたのよ」
「遠慮も知らない人だったのね」
「しかも人の部屋に勝手に入って本を漁る」
 そうしたこともしたというのだ。
「そうした人だったのよ」
「お友達でも嫌ね」
「でしょ?だから親戚の人達にもね」
「嫌われていたの」
「母親が甘やかしたって聞いてね」
 富美子は右の人差し指を立たせて話した。
「ピンときたわ」
「その人だって」
「ええ、お寺にお世話になって文句言ってたこともね」
「そこからもなの」
「あんまりにも酷い人だから」
 それでというのだ。
「もうね」
「そのことでもわかったのね」
「ええ、もうその人死んだと思うわ」
「死んだの」
「だって誰からも見放されて」
 そうしてというのだ。
「お仕事もないのよ」
「ホームレスね、そうなったら」
「そんなのだとホームレスの人達の中でも相手にされないから」
 そうした人間性ではというのだ。
「だからね」
「そうなっても生きていけなくて」
「野垂れ死にでしょ」
「そうなってるのね」
「いや、それわからないわよ」
 留奈が言ってきた。
「世の中ね」
「いや、そんな人普通にでしょ」
 富美子はその留奈に言った。
「もうね」
「誰からも見捨てられてるから?」
「そうよ、何の取り得もないし」
「性格も悪くて」
「だからね」
 そうした輩だからだというのだ。 
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