DQ3 そして現実へ… (リュカ伝その2)
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利益を求めて
<エコナバーグ>
以前この町に立ち寄り騒動を起こしたのが1ヶ月前…
たった1ヶ月で、この町の人々は様変わりしていた。
皆が明るい表情で働く様になったのだ。
「エコナさん、上手くやっている様ですね」
「うん。診療所とかも増えたみたいだ…これで心置きなく病気になれる!」
「私達が破壊した劇場はどうなってるんでしょうか?」
「破壊したのはマリーじゃん!私達って…僕、関係無いじゃん!」
「父さん…娘のやらかした事は、親が責任を取る物です!」
「大変ねリュカ…責任重大よ!」
「何で僕だけの責任なの?ビアンカさんもマリーの親だよね?」
「「「こう言う時は父親の責任なのです!」」」
嫁と子供が声を揃えて断定する。
「………ズルイ!」
苦笑いで観念するリュカであった。
「止まれ!此処はエコナ様のお屋敷だぞ!身分の判らない怪しい奴は通すわけにはいかない!」
エコナの屋敷に辿り着いた一行は、以前とは違う門番達に阻まれている。
「その身分ってのは、どうやって確かめるんだよ!?」
リュカが意地悪な表情で問いかける。
「え!?えーと…それは…な、名を名乗れ!」
「僕はリュカ!リュケイロム・エル・ケル・グランバニア!グランバニア王国の国王だ!」
珍しく自分の身分をひけらかし、門番等を威圧するリュカ。
「グ、グランバニアなどと言う国は知らん!適当な事を言うと、後で酷い目に遭うぞ!」
「お前等が知らないだけで、グランバニアは実在するし、僕はその国の王だ!お前等こそ、そんな無礼な態度を取っていると、後悔する事になるのでは?それともお前等は、世界中の人物の事を把握しているのか?誰がどんな人物で、どれほどの権力を持っているのかを!?」
「ぐっ…そ、その…え~と…」
あからさまに狼狽える門番達。
彼等は職務に忠実なだけなのだが、相手が悪すぎる…
すると屋敷から1人の老人が姿を現し、門番達の元へとやって来た。
「お前達、大丈夫!彼等、友達。エコナ、友達。悪い奴、違う!」
現れたのはタイロン老人で、門番達にリュカ等の身分を保証した。
「タ、タイロン殿…分かりました……おい、通って良いぞ!ただ、エコナ様に危害を加えたら、絶対に許さないぞ!」
タイロン老人の口添えの為、門番達は渋々リュカ達を通す事に…
「はぁ!?何で僕がエコナに危害を加えなきゃならないんだ!?彼女は僕の愛人だ!危害なんぞ加えない!………別の物はくわえてもらうかも………」
リュカは、自分とエコナの関係を高々と説明する…最後の方は小声だけど…
リュカ達はタイロン老人の後に続き屋敷内へと入って行く。
「なぁ爺さん…一体何があったんだ?何だかこの屋敷を厳重警戒しているが…?」
以前来た時より警戒度が高く、屋敷の内外を多数の男達が警備している…
その警備員達もプロではなく、町内の有志による者達の様で、装備も棍棒や檜の棒など頼り無い。
「うむ、実は…」
・
・
・
リュカ達は驚愕な事件をタイロン老人から告げられる。
一月前に急遽心変わりをしたエコナは、建設予定だったカジノや酒場など、娯楽施設の建設を一時見合わせて、診療所や学校などの福祉施設の充実を優先させた。
その結果、カジノ等での収益を期待していた連中から、当初の予定通りに進めるようにと脅迫めいた訴えが出され、それを無視したエコナは昨日連中に襲われたと言う…
「…くそ!…なんて事を…」
リュカが呻く様に呟いた。
そして慌ててエコナの元へとかけ出した!
エコナのオフィスに駆け込むと、其処には彼女がデスクに向かい書類の決裁を行っていた。
「リュ、リュカはん…どないしたん?」
思ったほど外傷は酷くない様だが、酷い事をされたのには間違いないらしく、瞳が少し虚ろになっている。
「エコナ…何をされたの?」
リュカはエコナに近付き彼女を抱き締め問い掛ける。
「べ、別に…何も……だ、大丈夫やから…ウチ、大丈夫やで…」
懸命に笑顔を作り無事を伝えるエコナ…
リュカは彼女の瞳を見つめ続け、囁く様に問いかける。
「………レイプされたんだね?」
リュカにだけは知られたくなかった。
命に別状がない以上、リュカにだけは知ってほしくなかったのだ!
だがエコナは、リュカに優しく問いかけられ、嘘を吐く事も出来ず泣き出してしまう。
「うわ~ん!ウチ…ウチ…ごめんリュカはん!ウチ…もう…リュカはんの…んむっ!」
泣きながらリュカに謝るエコナの口を、キスで塞ぎ言葉を遮る。
「エコナが謝る事じゃないよ。僕は今でもエコナの事が大好きだから…だから謝らないで。悪いのはエコナじゃないのだから…」
リュカの言葉を聞き、リュカの優しさに触れ、エコナは涙が止まらなくなってしまう。
彼の胸に顔を埋め、ただひたすら泣き続ける。
リュカがアルル達に目で合図を送る…
それを見たアルル達は、この部屋にリュカとエコナを残して立ち去った。
アルル達はエコナの屋敷の別室で、タイロン老人等に持て成されている。
と言っても、持て成される側は沈痛な面持ちを崩せないのだが…
「でもエコナさんの命が無事で本当に良かったですね」
雰囲気を明るくしたかったティミーが、極力明るい声で喋り出した。
「ティミー…今、エコナさんを殺す事に意味は無いのよ…むしろマイナス効果しか無いの!」
沈痛な面持ちのまま、ビアンカが息子に話し出す。
「この町の発展の窓口は、彼女が担っているの…彼女の一言で、お金や物資を動かす事が出来るのよ…でも彼女が死んでしまったら、この町を発展させるリーダーが居なくなり、其処から生まれる利益を吸う事も困難になる!だから殺されなかっただけなのよ…」
「な、何でそんな奴等と、何時までも組んでいるんですか!?さっさと手を切れば良いじゃないですか!!」
ビアンカの言葉を聞き、我慢出来ずに憤慨するティミー。
「お兄ちゃん、以前エコナさんが言ってたでしょ…『特産物のないこの町を有名にする為、娯楽施設を仰山建てるつもりや』って…」
「それが…?」
「つまり、何れは彼等の力が必要になるって事なの。今は、町民の福祉施設を充実させる事が優先されてるけど、この町が末永く発展する為には、何らかの方法で利益を上げなければならないの…それが娯楽施設であり、その鍵を握ってるのがエコナさんを襲った連中なの…」
また重い空気が充満する。
暫くすると、頬を少し上気させたリュカが現れ、タイロン老人にこの事件の元凶共の居場所を問いつめる。
「リュカ、気持ち、解る…、でも、ダメ!、今、不要、でも、何時か、彼等、必要!話し合い、それで解決…」
「うるさい!そんな悪徳業者、必要になる時など無い!もっと優良業者が必ず見つかる…其奴等と縁を切って、違う業者を見つけろ!だからさっさと奴等の居場所を俺に言え!」
リュカの剣幕に驚いたタイロン老人は、思わず居場所を告げてしまう…
「と、父さん…」
リュカはティミーの言葉を手で制し、今後の予定を皆に告げる。
「明日の朝一に船に集合!それまで各自自由行動だ!何をしてても構わないが、俺の邪魔をしたら敵とみなす!解散!」
そう言ってリュカは凄い勢いで出た行った!
翌日この町の一角で、体中の骨が酷い状態でくっついている一団が発見される。
腕や足だけではなく、顎や頭蓋骨なども一度砕かれ、ホイミ系の魔法で即座に治癒された連中が…
彼等は喋る事が出来ず、指もひん曲がり文字も書けない。
だから何が起きたのかを伝える事が出来ないのだ。
しかし調査した町民の有志で結成された自警団は誰の仕業か理解し、そしてその事は口に出さなかった。
今朝早くに出港した一行の事を…
皆がエコナを尊敬し敬っているから…
数日後、驚くような情報がエコナの元に舞い込んでくる。
ロマリア・イシス・ポルトガ・サマンオサの4カ国より、国王の指示でエコナバーグの発展に協力したいとの特使が訪れたのだ!
悪徳企業から縁を切り、優良なる業者が各国を通じて集まってくる。
更には、エルフの女王自らが訪れ、友好関係を築きたいと申し込まれたのである!
そんな状況にエコナは泣きながら呟いた…
「…リュカはん…」
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