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イベリス

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第六十一話 ドーナツその十一

「耳に入らないだけね」
「そういうことなのね」
「ええ、それで叔父さんも叔母さんも言わなくなったのね」
「ファッションが問題じゃないってわかってね」
 そのうえでというのだ。
「もう言わないわ」
「そう、どんなファッションでもね」
「根が真面目だったらなのね」
「それでいいのね」
「そう、人の道を踏み外してないのなら」
 そうでないならというのだ。
「例えお酒飲んで煙草吸って夜遅くまでどんちゃん騒ぎしてもね」
「暴力とか麻薬ないなら」
「そのどんちゃん騒ぎも近所迷惑でないならね」 
 そうであるならというのだ。
「いいのよ」
「そうなのね」
「カラオケで歌えばいいのよ」
 どんちゃん騒ぎをするならというのだ、愛は紅茶最後の一杯を咲に入れて自分もそうしてそのうえで話した。
「それでいいのよ」
「ああ、カラオケは騒ぐし」
「文字通りのどんちゃん騒ぎでしょ」
「確かにね」
「そうしたらいいしね」 
 こう話すのだった。
「それにね」
「それに?」
「お酒飲む位普通だし煙草も私は吸わないけれど」
 それでもというのだ。
「二十歳になればね」
「それでいいのね」
「そうよ、犯罪をやらなかったら」
「それで真面目ね」
「そうよ、だから叔父さんも真面目で」
「もう糞真面目で」
「咲ちゃんも真面目でね」 
 彼女にも言うのだった。
「それで私もね」
「そうなるのね」
「そうだと思うわ、真面目であったら」
 範囲の広いそれはというのだ。
「いいのよ」
「そうなのね」
「そうよ、日本にも人の道を外した人もいるけれどね」
「ヤクザ屋さんとか麻薬密売人とか」
「特にこの街はね」
 東京はというのだ。
「賑やかなだけにね」
「日本一人が多いからね」
「それだけにね」
「日本で一番そうした人も多いのね」
「そうよ」
 そうした街だというのだ。
「それでね」
「そうした人達にも気をつけないといけないのね」
「これまで何度かお話してるけれどね」
「目や人相が普通じゃない人ね」
「イキっていたり濁っていたり」
 目や人相がというのだ。
「そうした人はね」
「道を踏み外してる人だから」
「絶対に近寄ったら駄目で」
 それでというのだ。
「関わることもね」
「駄目よね」
「咲ちゃん入学してすぐに渋谷でそうした人に会いそうだったのよね」
「道玄坂の方のコンビニでね」
「だったらね」
 それならというのだ。
「尚更よ」
「避けるべきね」
「極力ね」
 まさにというのだ。 
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