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イベリス

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第六十一話 ドーナツその七

「それでよ」
「素敵な場所になるのね」
「そうよ、東京でなくてもね」
「住むとそれでいい場所になるのね」
「そうよ、逆に東京じゃないと暮らせないって人は」
「おかしいのね」
「おかしいわよ」 
 まさにというのだ。
「むしろね」
「そうなるわね」
「チャキチャキの江戸っ子とかね」
 愛はこの言葉も出した。
「そういうのもね」
「どうかなのね」
「それで?って言われたらね」
「終わりなのね」
「そうよ、江戸っ子てさっぱりとかいうイメージあっても」
 よく言われる江戸っ子に対してのイメージだ、男はつらいよのシリーズで定着したと言えるであろうか。
「ネチネチした人もね」
「いるのね」
「というかそう言うのってね」
「チャキチャキの江戸っ子って」
「それって葛飾とかでしょ」
 東京といってもというのだ。
「下町の」
「あの辺りね」
「そこでもそんな人いるのよ」
「ネチネチした」
「それで本人は飄々としているつもりでも」
 主観ではそうであるがというのだ。
「実はエゴ丸出しでね」
「そうじゃないのね」
「しかもネチネチしていて」
 今言った様にというのだ。
「超嫌な人もね」
「いるのね」
「江戸っ子でもね」
「自分でそう言っていても」
「目が笑ってなくてね」
 それでというのだ。
「そうした人もいるし」
「東京にこだわることないのね」
「というか東京にずっと住んでいる人いる?」
「代々ってこと?」
「そうよ、江戸時代からね」
 その頃からというのだ。
「そんな人いる?」
「そう言われたら」
 咲はチョココレートのドーナツを食べつつ答えた。
「どうかしらね」
「まずいないでしょ」
「戦後に引っ越してきた人多いわよね」
「早くても明治からね」
「それで江戸時代にしても」
 咲はさらに話した。
「幕府が出来るまでは」
「殆ど人がいなかったわね」
「それまで只の湿地帯だったのよ」 
 江戸はというのだ。
「江戸城だって廃城みたいで」
「ボロボロだったのよね」
「それで周りには何もない」
「そんなところだったわね」
「それが幕府が開かれてね」
 徳川家康によってだ。
「お城が築かれて大名屋敷も建てられていって」
「人も集まって」
「それでよ」
「江戸の街が出来たのよね」
「だからそれ以前に人がいたか」
 幕府が出来る前にというのだ。
「もうそう言うとね」
「誰もいないわね」
「そうよ」
 これがというのだ。 
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