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イベリス

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第六十話 何があっても自分はその五

「何度も言うけれど」
「そうするわね」
「怨まなくて怨まれない」
「恋愛ではそれが大事ね」
「復讐鬼にはならないし作らない」
「本当にそうね」
 咲も頷いた。
「そうでないとね」
「恋愛はね、まあ怨みは恋愛以外でも持つけれどね」
「怨みも色々ってことね」
「そうよ、日本の怨霊は左遷されたり殺されたりが多いでしょ」
「政治で負けたりしてね」
「それで怨みを呑んで死んでね」
 そうしてというのだ。
「魂は残ってね」
「怨霊になるのよね」
「そうなるからね」
 だからだというのだ。
「またね」
「別なのね」
「そうよ、しかし本当に人の恋愛のことは笑ったら駄目ね」
 愛は手を組んで考える顔になりあらためて話した。
「絶対に」
「そうよね、今つくづく思うわ」
「そうでしょ、自分も笑われたらどうか」
「そのことを考えないとね」
「嗤わないことよ」
「絶対にね」
「それが大事よ」
 まさにというのだ。
「私も気をつけるわね」
「お姉ちゃんも笑わないのね」
「怨まれたくないからね」
「それでよね」
「しかもそうして人を傷付けるって好きじゃないし」
「お姉ちゃん人を傷付けたりしないしね」
「それは悪いことだからね」
 このことがわかっているからだというのだ。
「それでよ」
「そんなことはしないわね」
「絶対にね」
「やっぱりそうあるべきね」
「人はね、それとね」
 愛は咲を見てさらに話した。
「若し咲ちゃんが失恋したらうちに来てね」
「ここになのね」
「そうした時は飲んで忘れることよ」
「そうしたらいいの」
「とことん飲んでね」
 そうしてというのだ。
「もう完全にね」
「忘れることね」
「そうよ、だからその時は私に連絡して」
 是非にと言うのだった。
「いいわね」
「それじゃあね」
「私の家が駄目だったら咲ちゃんのお家に行って」
「一緒に飲んでくれるの」
「お話聞くから」
 咲の話をというのだ。
「飲みながら好きなだけ泣いて愚痴ってね」
「聞いてくれるのね」
「聞くだけしか出来ないかも知れないけれど」
 それでもというのだ。
「そうさせてもらうわ」
「それじゃあね、じゃあ私もね」
「咲ちゃんもなの」
「若しもよ」
 従姉、実の姉の様な存在である彼女に話した。
「お姉ちゃんも失恋したら」
「お話聞いてくれるの」
「それで一緒に飲もう」
 愛に微笑んで話した。 
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