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イベリス

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第六十話 何があっても自分はその四

「けれどね」
「そうでしょ、その娘はそうも言われたから」
「覚えてるのね」
「悪意をそのまま向けられたら怨んでね」
「一生そうなりかねないのね」
「そういうことよ」
「そうなのいね、けれどその人幸せそうじゃないわね」
 咲は話を聞いていて思った、それで悲しそうな顔で言った。
「ずっと怨んでいて延々とやり返して」
「咲ちゃんもそう思うわね」
「ええ、どう考えてもね」
「私もそう思うわ」
 愛もというのだ。
「飲んだらいつもその頃のこと言ってね、怨みに満ちた目で」
「忘れてないからよね」
「今の体型維持に必死になって運動もしてね、太ってる男の人に攻撃的になったり」
「自分が太ってたのに?」
「太ってるから振られたからよ」
 だからだというのだ。
「自分が振った男の人が太っていたら」
「自分を振った人でなくても」
「見たらいつも怨みを思い出して」
 そうしてというのだ。
「それでなのよ」
「言うのね」
「そうなの」
 これがというのだ。
「男のデブは見苦しいとかね」
「もう怨みと憎しみで心が荒んでるのね」
「かなりねじ曲がったと言えばね」
「そうなるのね」
「そうなの」
 愛も否定しなかった。
「根はいい娘でも」
「物凄き傷付いて」
「その傷が化膿してね」
 心の傷、それがというのだ。
「そうしてね」
「心が曲がったの」
「闇が出来たっていうかね」
「そうなったの」
「もう過去は絶対に忘れないで」
「延々と仕返ししてくるのね」
「その相手は全否定で」
 そうなっていてというのだ。
「太っている人にもね」
「男の人にも」
「そうするのよ」
「その人どうにか考えあらためて欲しいわね」
「親しい人は皆思ってるわ」
 その様にというのだ。
「実際にね」
「やっぱりそうよね」
「けれどね」
 これがというのだ。
「中々ね」
「難しいのね」
「時間が経てば忘れるって最初皆思ってたけれど」
「忘れないのね」
「怨みはそうよ、あまりにも酷く傷付けられるとね」
 その場合はというのだ。
「どれだけ経っても生々しい今なのよ」
「今されたみたいに怨むのね」
「そうよ」
 実際にというのだ。
「あまりにも痛かったしずっと痛むから」
「心が痛むのね」
「トラウマになるからね、トラウマは時としてずっと痛みが消えないの」
 まさにどれだけ歳月が経とうと、というのだ。
「そうしたものなのよ」
「何か聞けば聞く程怖いわね」
「だから覚えておいて」
 咲に強い声で言った。 
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