レーヴァティン
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第二百五十四話 両者の再会その十一
「他の政治家もな」
「まあそんなことではな」
「怒らなかった」
「そやったな」
「評判の悪い山縣有朋でもだ」
伊藤博文と対極を為す彼でもというのだ。
「そんなことではだ」
「怒る人やなかったな」
「むしろ感情を出さない人物でだ」
「怒ることもなかったわ」
「そうだった」
「そやな」
「毒のあるものを出すのは相当なことだ」
例え毒のある部分を取り除いてもだ。
「それだけでな」
「そやな」
「それを許すのはかなりの器の持ち主だ」
「後で言われてもな」
「俺もそうならないとな」
理由は伊藤博文をはじめとした明治の主な政治家達に敬意を感じつつ述べた。
「器は大きくだ」
「ならんとな」
「そうだな」
「目標やな、あの人等は」
「山縣公もな」
その評判の悪い彼にしてもというのだ。
「情勢を冷静に見てだ」
「的確な判断を下してたわ」
「日本の為にな」
「そやったな」
「確かに謀略を使い」
このことで有名であった。
「汚職が山の様にあったがな」
「そうでもな」
「汚職の金は政治に使っていた」
日露戦争の前に開戦に反対する議員達に金をやり黙らせる様なこともしていた、ただ彼にしても開戦はロシアとの圧倒的な国力差を見て最後の最後まで迷っていた。
「ほぼ全てな」
「生活は質素でな」
「庭には凝ったがな」
それでもだったのだ。
「極めて粗食でだ」
「槍の鍛錬は欠かさんかったわ」
免許皆伝の槍術で知られていてだ。
「毎食後な」
「乾布摩擦もな」
「それでお酒にも女の人にもな」
「欲を見せなかった」
当時の権勢ある者の常として妾と言われる人はいたがそれ以外は美人を見ても美人だなと言う位で色は見せなかった。
「だから色気がないとさえだ」
「言われてたわ」
「そうした人物だった」
「そやったわ」
「汚職はしてもな」
それでもとだ、英雄はまた言った。
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