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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~

作者:黒井福
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GX編
  第118話:手を取り合っても

 発電施設では自衛隊による必死の抵抗が行われていた。アルカノイズの位相差障壁は以前のノイズほどではない事が幸いし、通常兵器でも何とか対抗が出来ていた。
 しかしそれでもやはりただの人間では限界があるのか、僅かな隙を突かれ戦線が一気に崩壊。施設を守る為に展開していた自衛隊の隊員達が次々とアルカノイズにより屠られていった。

 奏達はその様子を本部の発令所から見ているしかできない。

「くそぉ、アイツら好き勝手しやがって!」
「ギアの強化が済んでいれば、我々も戦えるのに……」
「強化はまだ終わらないのかよ!」

 発令所に居る装者達がもどかしさに身を震わせていると、突如モニターの向こうの状況が変化した。

[α式 百輪廻]


「あれは!?」

 突然アルカノイズ達に無数の丸鋸が飛来し次々と切り裂き倒していく。丸鋸の雨が治まると、アルカノイズの1体を踏み台にしてギアを纏った調が着地する。

 調が戦場に降り立つと、続き煌めくのは切歌のアームドギア。3つに分かれた刃が鎌鼬の様に飛来しアルカノイズ達を切り裂いていく。

[切・呪りeッTぉ]

 調と切歌、2人の参戦により発電施設での戦線は再び大きな変化を見せた。自衛隊相手には優勢を保っていたアルカノイズでも、シンフォギア相手には分が悪い。従来型のシンフォギアはアルカノイズの解剖器官に強くはないとは言え、当たらなければ意味はない。互いに一撃を喰らう訳にはいかないと言う状況で、自己の判断力と機動力に優れるシンフォギアが優勢に立てるのは当然の事であった。

「悪くないデス!」

 一度背中合わせになり、互いを守り合いながら再びアルカノイズ達の殲滅に移る2人。

 その様子は当然弦十郎達の目にも留まった。

「シュルシャガナとイガリマ、交戦を始めました!」
「お前達! 何をやっているのか分かってるのか!!」

 勝手な戦闘を開始した2人に、弦十郎は思わず声を荒げる。それに対して、2人は通信機越しの声にも怯まず答えを返した。

『勿論デスとも!』
『今の内に、強化型シンフォギアの完成をお願いします』

「ぬぅっ――――!」

 調と切歌、2人の覚悟を感じさせる声に弦十郎も思わず唸り声を上げた。現状を考えれば、2人が少しでも時間稼ぎをしてくれると言うのは素直にありがたい。魔法使い3人は未だ戻らず、そしてシンフォギアの強化もまだ終わらない。このまま発電施設の破壊を許せばシンフォギアの強化は勿論、メディカルルームに居る響の容態にも影響するのだ。大局的に見れば、出せる戦力は惜しみなく出して時間を少しでも稼ぐと言うのが正しい判断なのだろう。

 問題なのは、その頼るべき相手が年端も行かぬ少女たちという事か。その事に弦十郎の良心が悲鳴を上げた。

 弦十郎達が見守る中、モニターの向こうでは調と切歌が尚も湧いてくるアルカノイズをたった2人で相手取っていた。

 多勢に無勢、しかも一発でも敵の攻撃を喰らえば即アウトと言う緊張感のある戦いの中で、それでも2人は良く戦っていた。

「当たらなければぁぁぁっ!!」

 次々と飛んでくるアルカノイズからの解剖器官の攻撃をギリギリで回避しながら、調と切歌はまだまだ無数にいるアルカノイズを倒していく。

 その様子を離れた所からオートスコアラーのミカが眺めていた。

「ニコイチでもギリギリ? これはお先真っ暗だゾ」

 何処か失望を匂わせる声でミカがそんな事を呟いているとは知る由も無く、2人はアルカノイズの群れを食い止めていた。

 2人が戦っている様子は本部でもモニターされていたが、戦っている2人のバイタルを見ていたあおいがある事に気付いた。

「シュルシャガナとイガリマ、装者2人のバイタルは安定? ギアからのバックファイアが低く抑えられています!」

 それは普通に考えておかしなことであった。マリアを含めたF.I.S.組の装者は奏と同じく、完全な装者という訳ではなくギアを纏う際にLiNKERを必要としていた。LiNKER無しでギアを纏えば、ギアのバックファイアをまともに喰らい満足な戦闘など行えぬはずである。
 それが問題なく戦えているという事は、考えられる可能性は1つしかなかった。

「一体どういう事なんだ?」
「……あいつら、まさか!?」
「メディカルルームからLiNKERを持ち出しやがったか!」
「奏用のMODEL.Kを!?」

 この場に居るだけではそれしか考えられない事だったが、それを丁度部屋に入って来た了子が否定する。

「ざ~んねんながら、それは違うわ。あの子達が使ってるのは奏ちゃん用に調整した奴じゃなくて、あの子たち用に調整し直したタイプ。云わば試製MODEL.Sと試製MODEL.……あ、Kが被っちゃうわね。どうしましょう?」

 アルドを伴って現れた了子が1人ブツブツと呟く中、弦十郎は了子に説明を求めた。

「どういう事だ了子君?」
「ん? あぁ、あれね。こういう事になるだろうと思って、奏ちゃんのギアの改修と並行して進めておいたのよ。まぁ新しく来た3人用のLiNKERの調整自体は前々から細々と進めてたんだけどね」
「用意が良い事で…………ん? もしかしてこの間アタシがマリアにLiNKER分けた時には……?」
「生憎とその時にはまだ調整は完全じゃなかったわ。ただそれを言ったら、今あの子達に渡した物も調整自体は完全じゃないから、あまり長時間の戦闘はしないで欲しいところなんだけれど……」

 そう言って了子は少々険しい目でモニターの向こうで戦う2人の事を見る。それだけで弦十郎達は調と切歌の2人が依然として爆弾を抱えたままである事を察した。

「いくら何でも無茶をさせ過ぎだ」
「分かってるわ。だからこそこうして急ピッチで奏ちゃんのギアの改修を終わらせたんじゃない」

 了子が白衣のポケットから手を出すと、その指に引っ掛けるようにしてギアペンダントが姿を現した。了子とアルドにより回収が加えられた奏のガングニールだ。

 それを見た瞬間奏の目が戦士の目に変わった。

「使えるのか了子さん!」
「モチのロンよ! アルドの協力もあって、もうアルカノイズの攻撃なんて怖くもなんともないわ。それに、新しい機能も追加して――」
「助かる!」

 了子の説明を全て聞き終える前に、奏はギアペンダントを引っ手繰るように受け取り発令所から飛び出していった。大急ぎで発令所から出て行く奏を、了子は咄嗟に呼び止めようとするが奏は聞く耳持たず扉が閉められた。

「ちょっと、待……あぁ、もう。まだ何も説明できてないのに……」
「必要とあればその時に話せば良いではありませんか」
「ま、それもそうね。その方がびっくりしてくれそうだし」

 溜め息を吐く了子を宥め、アルドは静かに踵を返した。

「私も出ます。アルカノイズ程度なら、私も十分にお力になれると思いますので」

 アルドがそう言って発令所から転移したのを見て、残された者達は再びモニターに目をやる。









 S.O.N.G.が突然の襲撃に何とか対応している頃、チフォージュ・シャトー内部の玉座ではキャロルが各オートスコアラーからの報告に耳を傾けていた。
 キャロルが座る玉座に続く階段の最上段にはハンスが腰掛け、キャロル同様オートスコアラーの様子を見守っている。

『該当エリアのエネルギー総量が低下中。間も無く目標数値に到達しますわ』
「レイラインの開放は任せる。俺は、最後の仕上げに取り掛かる」

 ファラからの報告に、キャロルは静かに立ち上がった。一方で、ハンスは動く気配を見せず階段の上に座ったままだ。

「魔法使いは誰も出てこないのか?」
『今のところ、装者2名以上の抵抗は見られません』
「チッ、つまらねぇ。魔法使いが出てこないんじゃ、俺の出番がねえじゃねぇか。今度こそ仕留めてやろうと思ってたのに。ウィ、ウィ……え~っと? 何だっけ?」

 惚けた顔をするハンスに、キャロルは素早く近付くとその背を蹴り飛ばし階段から突き落とす。無抵抗に蹴り飛ばされ階段から突き落とされ、転がった際に額でも切ったのか顔が僅かに血に塗れる。が、ハンスはキャロルに文句一つ言わないどころか逆に恍惚とした笑みを浮かべていた。

「へへ、へへへへ……」

『……いよいよ始まるのですね?」
「いよいよ終わるのだ。そして万象は、黙示録に記される」

 今し方の暴力など無かったかのようにファラとキャロルが会話を続ける。その様子をハンスは血を拭う事もせずに見ていた。









 キャロルが動き出した頃、戦場となっている発電施設でも動きが起こっていた。

 ミカが遂に調と切歌相手に牙を剥いたのだ。

「そぉぉぉりゃぁぁぁぁぁぁっ!!」

 赤い結晶の様なカーボンロッドを手に切歌に飛び掛かったミカ。ギリギリのところでミカの襲撃に気付いた切歌は、アームドギアの柄で振り下ろされた一撃を受け止めた。

「ぐっ!? ぐ、くくっ――――!?」

 落下の勢いを乗せての一撃という事を考慮しても尚、シンフォギアを物理的に押さえ込むミカは流石エルフナインから最も戦闘力が高いと言われるだけの事はあろうか。切歌はミカに対し反撃どころか逃げる事も許されず片手で地面に押さえつけられその場に膝をついてしまう。

 そこに追い打ちをかけるようにミカが左手に新たなカーボンロッドを作り出し、動けない切歌を殴り飛ばした。

「ウリャッ!」

「「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」」

 ミカにより殴り飛ばされた切歌は、援護に向かおうとしていた調を巻き込んで壁に叩き付けられる。

 2人の窮地にクリスが飛び出そうとしたその時、一足先にギアの改修が済んだ奏がミカに挑みかかった。

「Croitzal ronzell Gungnir zizzl」

 ギアを纏いながら戦場に降り立った奏は、壁に叩き付けられた調と切歌を守る様にミカの前に立ち塞がる。

「2人とも、大丈夫か!」
「う、うぅ……」
「奏、さん……」
「よく2人だけで頑張った。そこで暫く休んでな!」

「今度はお前が相手か? お前のギアも分解しちゃうゾ!」
「やれるもんならやって見な!」

 両手にカーボンロッドを構えたミカに、奏はアームドギアの槍を構えて突撃する。

 切歌同様、大振りな武器を手にミカと戦う奏。アームドギアとカーボンロッドがぶつかり合う度に激しく火花が散るが、切歌の時と違い奏はミカの一撃を正面から受け止めるようなことはせず飽く迄受け流しつつ反撃を喰らわせる戦法をとっていた。

「お前、あっちのじゃりン子2人よりも強いな! なかなか楽しいゾ!」
「あぁそうかい! こちとらちっとも楽しかないがね!」

 年長者という事もあるが、何よりも奏には執念と経験があった。その戦いの経験と力に対する貪欲な姿勢が、ほぼほぼ初見である筈のミカと互角に戦うだけの力を奏に与えていたのだ。

 奏が戦っている間に、息を整え持ち直した切歌と調。2人はミカの興味が奏の方に移っているのを見て、悔しさに奥歯を噛んだ。自分達では力不足だと言外に言われ、しかし実際その通りである事に悔しさを感じずにはいられない。自分達2人では、ギアを纏えても奏1人にも及ばないのだという現実を突き付けられたのだ。

 もしここにもう一本LiNKERがあれば、オーバードーズ覚悟で追加投与も出来ただろう。しかし了子から渡されたLiNKERは一本ずつ。最初に使ってしまったので、今2人の手元にはLiNKERは残っていなかった。

 2人が悔しさに唇を噛んでいる間で、奏は1人ミカと互角に渡り合っている。

「オラオラ! そんな棒切れでアタシの相手が務まるってのか!!」

 奏が振り回すアームドギアの一撃は凄まじく、ミカのカーボンロッドも数発攻撃を受け止めれば罅が入り砕け散るほどだった。
 もう何本カーボンロッドを砕かれたか分からないにも拘らず、対するミカは心底楽しそうに笑みを浮かべていた。

「ニシシシ! お前本当に強いな! もっともっと楽しませてもらうゾ!」
「チィッ! 他所の方も気にしなけりゃならないってのに……」

 攻撃を受けているのはここだけではないという事が一つの懸念となって奏の思考をブレさせる。その一瞬のブレが僅かな隙を生み、ミカに付け入らせる隙となった。

「貰ったゾ!」
「くっ!?」

 僅かに遅れた反応。奏はアームドギアで防ごうとするが、それよりも前に奏の前に調と切歌が割って入りミカの攻撃を受け止めた。

「ッ!? お前ら、無茶するな!!」
「無茶だって何だってします!」
「そうしないと、お子ちゃまの私達じゃついて行けないんデス!」

 奏とミカの戦いを見て2人は痛感した。今の自分達には何もかもが足りていない。だが足りていないからと、それで諦めて歩みを止めていてはどんどん引き離されて本当にお荷物になってしまう。それだけは嫌だった。

 それはマリア曰く、償いでもあった。誰も信じる事が出来ないが故に、迷ったまま独走した彼女ら。その結果、奏達は勿論多くの者に多大な迷惑をかけてしまった。子供だから等言い訳にもならない。それだけの力を彼女達は振るってしまったのだ。

 にも拘らず、奏達は彼女らを温かく迎えてくれた。それに対して何も返さずにいる事は、ある意味で罰を受けること以上に彼女達の心を苛んだ。

 故に、彼女達は動いたのだ。

 その心意気は奏にも伝わった。

「ったく、仕方ないなぁ。いいか、無茶だけはするんじゃないぞ?」
「はいデス!」
「お供します」

「今度は3人で来るのか? それでもいいゾ! 私の強さについてこられるなら!」

 余裕を崩さぬミカに、憤りそうになる調と切歌だったが奏が2人を宥めた。

「落ち着け。バラバラにやっても勝てないのは分かるだろ? 特にお前達2人は」
「うっ……」
「はい……」

 厳しい奏の言葉に意気消沈しそうになる2人だったが、察した奏は2人が落ち込むよりも先にアドバイスを口にした。

「だからこそ、お前達は2人で力を合わせるんだよ」
「2人で?」
「力を?」
「あぁ。相棒ってのは良いぞ。一緒に居れば二倍どころじゃない力を発揮できる。コンビを組んでるアタシが言うんだ、間違いない」

 奏のアドバイスは通信を通して翼にも伝わっていた。自分達の事を例に挙げてもらえたことに、翼はこんな状況だと言うのに嬉しそうにはにかむ。

 調と切歌はと言うと、奏からのアドバイスに何か感じるモノがあったのか頷き合いミカに向けてギアを構える。

 3人が話している間に、ミカは暇を持て余して地面に立てたカーボンロッドの上で曲芸の様に立っていた。余裕を感じさせるその姿に、今度は2人も心を乱すことなく唄を紡ぐ。

 その唄は今までのものと少し違っていた。今2人が唄っているのは、言うなればデュエットの様な唄。それぞれが担当するパートを互い違いに歌う事で一つの唄としているような、そんな感じのものであった。

 その唄が生み出す相乗効果は、今までの戦いが嘘の様にミカに対しても有効に作用していた。切歌の一撃はカーボンロッドを砕き、調のギアを大きく変形させての突撃はミカでも受け止めきる事が出来ず弾き飛ばされた。

 見違えるような2人の戦いに、傍で見ていた奏も舌を巻く。

「やるねぇ、2人とも。こりゃアタシも負けてられないな!」

 先輩としての意地もあり、またそもそも不完全な調整のLiNKERによる時間制限の事も考え奏は2人の攻撃に合わせてミカへの攻撃を試みる。

 2人の身に起こった変化を誰よりも理解していたのは、発令所でモニターしていたオペレーターの2人だった。

「2人のユニゾンが、数値以上の効果を発揮しています!」
「相性が良かったのもあるんでしょうね。あの子達は、2人で一人前以上の力を発揮できるのよ」
「だが、この輝きは時限式だ」

 奏に次ぐ力を2人で発揮し始めた調と切歌に、僅かな希望を見出す了子達。しかし弦十郎は状況を冷静に分析し、あれがあまり長続きしない事を察していた。

 弦十郎の危惧は奏の危惧でもあった。同じ時限式の装者である彼女は、自分も2人も限界時間が近付いている事を理解していた。

「これ以上はあまり時間を掛けていられない。勝負をかけるぞ!」
「「はい(デス)!!」」

 発電パネルの上に降り立った3人と1体。
 ミカに対していの一番に攻撃を放ったのは奏だった。

「オリャァァァァァァッ!!」
[LAST∞METEOR]

 強烈な竜巻がミカに襲い掛かる。ミカはそれを両手で展開した障壁で持って防ぐが、それは目くらまし。
 本命は調と切歌のユニゾン攻撃だった。

 調と切歌は唄を合わせ、力を合わせてミカに強力な一撃を放つ。それぞれの片足が丸鋸と刃に変化し、ミカに向けて蹴り落とされる。ミカはそれも作り出した巨大な結晶で受け止めてしまうが、2人の勢いはその結晶すら貫くほどだった。

 だがミカの表情に焦りはない。それどころか、待ってましたと言わんばかりの様子だ。

「ッ! マズイ、離れろ!?」

「ドッカーン!」

「「はっ!?」」

 いち早く危険に気付いた奏が警告するが僅かに間に合わず、2人はミカの結晶が起こした爆発に巻き込まれて吹き飛ばされてしまった。
 なお悪い事に、その爆発により発電施設が完全に崩壊。本部の電源が完全に落ちてしまった。

「内臓電源に切り替えます!」

 即座に電源が切り替わり、一瞬暗闇に包まれていた発令所に再び明かりが灯りモニターも状況を映し出した。

 そのモニターには、今の爆発で吹き飛ばされボロボロになった調と切歌の2人が映し出されていた。
 しかし奏の姿は見当たらない。

「このままじゃ、何も変わらない……変えられない」
「こんなに頑張ってるのに、どうしてデスか!? こんなの嫌ですよ! 変わりたいデス!!」

 結局発電施設は破壊され、2人はボロボロ。爆発で別の方向に吹き飛ばされたのか、奏の姿は見当たらない。何一つ良い事が無い状況に、口惜しさからくる慟哭が辺りに響く。

「まぁまぁだったゾ! でもそろそろ遊びは終わりだゾ!」

 ミカの髪がバーニアのように火を噴き一気に加速。切歌の懐に入り込むと、カーボンロッドでギアコンバーターを一撃で破壊した。

「バイならー!」

 コンバーターを破壊された切歌はその勢いのまま吹き飛ばされ、地面に倒れるとギアが解除されてしまう。

 慌てて調が切歌を助けに行こうとするが、それはミカにより防がれた。

「余所見してると後ろから狙い撃ちだゾ~!」
「そりゃお前の方だ!!」
「ッ!?」

 調の動きをカーボンロッドで遮ったミカだったが、その背後から2人ほどではないが傷を負った奏が飛び掛かる。振り向きざまにカーボンロッドを振るうミカだったが、奏はそれをアームドギアで弾くとそのままの勢いでミカを蹴り飛ばした。

「わぁぁっ!?」
「調! 今の内に切歌を!」
「はい!」

 奏の援護を受け、改めて切歌を助けに向かおうとする調だったが、ミカは飽く迄も2人をこれ以上好きにさせるつもりは無いようだった。

「邪魔はさせないゾ! 仲良しこよしでアイツのギアも壊しちゃうゾ!」

 ミカは奏に向けてカーボンロッドを放ちながら、調の周りにアルカノイズをばら撒き召喚する。
 今の傷付いた調では、アルカノイズでも相手をするのは危険すぎる。奏は調の援護に向かおうとしたが、それはミカが許さない。

「あのじゃりン子はもうどうでもいいゾ。適合係数の低いあっちは、始末しろってマスターが言ってたゾ」
「だからってやらせるか!」

 奏がミカに足止めされている間に、調は周りに群がってくるアルカノイズを必死に倒していた。先程は安定して倒せていたアルカノイズ。しかしLiNKER投与から時間が経ち、しかもミカとの戦闘により傷付いた今、動きや判断力は精細さを欠き、例え雑魚と言えるような相手であっても大きな脅威として彼女の前に立ちはだかった。

 次々と放たれる解剖器官からの攻撃に、調のギアが徐々に砕けていく。

 そして遂に、最悪の事態が訪れてしまった。

「あっ!?」

 解剖器官が調のギアコンバーターを捉え、シュルシャガナも砕かれてしまった。ギアが破壊され、調も力無くその場に倒れる。

 ギアが破壊され裸体を晒す調に、アルカノイズが迫っていく。そして、無数のアルカノイズの解剖器官が調べに襲い掛かろうとした。

 その時、調の周りにいたアルカノイズが何者かにより切り裂かれた。 
 

 
後書き
という訳で第118話でした。

多分奏だったら、ミカと互角に渡り合っても許されると思う。漫画版だと最強の装者言われてたし。

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。 
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