イベリス
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第五十八話 東京の紫陽花その七
「時間があればです」
「行かれていますか」
「そうしています。京都は他にも名所がありますので」
「そうですね、あちらは」
「小山さんも行かれたことがありますか?」
「一家の旅行で」
その時にとだ、咲は答えた。
「そして中学の修学旅行で」
「行かれましたか」
「そうしました」
速水に微笑んで答えた。
「二回程」
「そうして色々な場所を巡られましたね」
「金閣寺に銀閣寺、清水寺も」
「ですが平安神宮は」
「なかったです、ですが今度行く時があれば行ってみます」
「そうされて下さい。いい場所ですから」
速水は微笑んで答えた。
「是非」
「また京都に行けば」
「いい街です」
速水は教徒自体についても述べた。
「夏と冬はどうにもですが」
「夏は暑くて冬は寒いですね」
「盆地なので」
「冬は東京より寒いんですよね」
「はい、からっ風よりもです」
さらにというのだ。
「京都の冬は堪えます」
「そこまで寒いんですね」
「盆地ですので」
「あっ、盆地は夏は暑くてですね」
「冬は寒いので。空気が籠りますので」
盆地のその中にというのだ。
「ですから」
「冬は物凄く寒いですか」
「東京も確かに寒いですが」
「その東京よりも寒くて」
「冬はお勧め出来ないです」
そうした街だというのだ。
「そして夏も」
「暑いからですね」
「東京は夏は涼しいです」
「京都と比べて」
「大阪よりも」
この街よりもというのだ。
「さらにです」
「東京はそうなんですね」
「平地で拓けてるので」
その為にというのだ。
「夏もです」
「涼しいんですね」
「そうです、ですから東京は夏も冬もいいです」
「京都に比べてですね」
「そうです、ですから私はこれからも生活の基盤は東京に置きたいです」
この街にというのだ。
「何かと便利ですし」
「何でもあるって感じしますね」
「それに面白い街です」
速水は微笑みこうも言った。
「清濁、光と闇が共にある」
「そんな街ですか」
「あらゆるものがあるならです」
それならというのだ。
「いいものだけでなくです」
「悪いものもですか」
「ありまして」
「それで清濁と光と闇ですか」
「どれもあるのです」
「それが東京なんですね」
「この街です」
まさにというのだ。
「その東京も好きですので」
「これからもですか」
「生活の場を置きたいです、世界の色々な街を巡ってきましたが」
「それでもですか」
「東京に一番の魅力を感じます」
速水の顔は微笑んだままであった、そして微笑んだまま咲に話すのだった。彼は咲に対してこうも言った。
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