恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百二十二話 闇、近付くのことその五
そうしてだ。満足している面持ちで言うのだった。
「やはり白米だ」
「そういえば御主は常に白米だのう」
「これ以上美味いものはないぞ」
その顔で柴舟に言うタクマだった。
「やはりこれが第一よ」
「確かにな。白米はいい」
柴舟もそのことは認める。とはいっても彼は今はうどんを食べることに専念している。
そうしてだった。こうタクマに言うのだった。
「美味い。ただな」
「栄養だな」
「それだけでは脚気になるからな」
白米の問題点だ。実はそれだけだと栄養が偏るのだ。
それでだ。柴舟もそのことを今言うのだ。
「うちのがよく言っていたわ」
「貴殿の奥方は医者だったな」
「それで言っていたのだ」
白米のことをだというのだ。
「白米はおかずを考えないとだ」
「よくないのだな」
「そうじゃ。白米だけでは脚気になるぞ」
柴舟はまた言った。
「それはかつて問題になったしな」
「日露戦争だったな」
ハイデルンがその戦争の話をした。日本にとって国家の存亡をかけた戦いだった。
「あの戦争において日本軍は脚気で多くの死者を出しているな」
「ああ、そんな話もしていたな」
柴舟の妻がだというのだ。
「その前の戦争でもじゃったな」
「日清戦争だったな」
「どちらにしても脚気はじゃ」
「死に至る病だ」
ハイデルンは言うのだった。
「栄養については考慮しなければならない」
「その通りじゃ。白米は確かに美味い」
だがそれでもだというのだ。
「だが大事なのは栄養じゃ」
「うむ、それでおかずもだな」
「考えて食うことじゃ」
こうだ。あらためてタクマに話すのだった。
「それはよいな」
「わかった。そういうことだな」
「そうじゃ。それではじゃ」
あらためてそのカレーうどんを食べながら言う柴舟だった。
「どんどん食うぞ。よいな」
「わかった、それではな」
こんな話をしてだった。彼等はだ。
カレーうどんを食べていく。そうしてだった。
腹ごしらえもしてだ。敵を待つのだった。
それは月も同じでだ。星空の下にいてだ。守矢に言われていた。
「刹那も来るな」
「はい、間違いなく」
「それならだ」
どうかというのだ。兄は妹に切実な顔で話す。
「御前はやはりその命を」
「なりませんか、それは」
「駄目だ」
強い声でだ。彼は妹に告げた。
「何としてもだ。ここは私達に任せろ」
「私達にですか」
「そうだ、私もいれば楓もいる」
守矢は弟の名前も出した。そうしてだった。
「だからこそだ」
「しかし刹那は」
「案ずることはない。必ず封じる方法はある」
守矢の声も切実なものだった。
「だからだ。はやまるな」
「しかし刹那は」
「生贄なぞ必要ないのだ」
「では私は」
「何度も言うが私も楓もいる」
何としてもだった。守矢は妹の命を失いたくなかったのだ。
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