| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百二十一話 張勲、昼に寝るのことその七

「全く。困ったことだ」
「公孫賛殿の影の薄さは変わらないのか」
「そうみたいですね」
 夏侯淵と顔良は彼女を知っている。だからこそ言うのだった。
「悪い御仁ではないのだが」
「こればかりはどうしようもないですね」
 二人は彼女に深く同情していた。だがそれでもどうにもならなかった。そして何はともあれだった。
 妖怪達を見張りに残し全軍昼に休息に入った。誰もが天幕の中に入り寝る。
 その中でだ。ふと荀彧が己の天幕の中でだ。こう姪に言った。
 二人は同じ天幕の中で並んで寝ている。寝たまま言うのだった。
「ねえ」
「はい、何ですか?」
「この戦いが終わったらあんたどうするの?」
「この戦いが終わればですか」
「ええ、どうするの?」
 問うのはこのことだった。
「それはどうするの?」
「華琳様にお仕えしていくつもりですが」
 これが叔母への返答だった。
「これからも」
「そう。実は私もね」
「叔母上もですか」
「叔母さんと言うのは止めてね」
 荀彧は仰向けに寝たままむっとした顔で返す。そのことは彼女にとっては許せないことなのだ。
「いいわね」
「ですが私にとって桂花姉様は」
「姉様って呼べばいいじゃない。まだおばさんって言われる歳じゃないわよ」
「それなら女王陛下は」
「世界が違うわよ」
 それでだ。その呼び方も駄目だというのだ。
「言っておくけれどオートマも野良メイドも駄目よ」
「何か関わりある世界多いですね」
「色々とあるのよ。とにかくね」
「はい、これからのことですよね」
「そうなのね。じゃあ同じね」
 また言う荀彧だった。
「私もそうするから」
「華琳様にお仕えしていかれるのですね」
「もっと言えば漢王朝にね」
 この国にだというのだ。まさにだ。
「そうしていくわ。私もね」
「わかりました。ではこれからも二人で」
「陳花もそうみたいだけれど」
 彼女の名前を出して荀彧は自分で不機嫌な顔にもなった。
「忌々しいけれどね」
「陳花叔母上とはまだ」
「あいつにはおばさんって言ってもいいから」
 こう言う荀彧だった。
「わかったわね」
「左様ですか」
「お婆さんって言ってもいいから」
 こうまで言う始末だった。
「いいわね。そう呼びなさいよ」
「それは命令では」
「いいのよ。ただね」
「ただ?」
「劉備殿のところの馬超だけれど」
 不意に口調が穏やかになり言う荀彧だった。
「何か妙に妹に思えるのよね」
「ですから女王陛下ですから」
「それかしら。もっともそれを言ったら凪は私の御主人様?」
「確か野良メイドでしたから別の方がそうなるのでは」
「そうだったわね。それにしても野良メイドって」
 そのことについてだ。荀彧は首を傾げさせて話す。
「何か凄い設定よね」
「私もそう思います、それは」
「そうよね。有り得ないっていうか」
「叔母上のお声はメイド向きだと思いますが」
「だからおばさんじゃなくて。まあとにかくね」
 とにかく呼び方のことは注意してまた姪に言う。
「結構腹黒い女の子の役は得意だから」
「企むタイプはですね」
「何かいつも失敗するけれどね」
 何かとややこしい彼女だった。そんな話をしてだ。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧