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冥王来訪

作者:雄渾
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ミンスクへ
ソ連の長い手
  ミンスクハイヴ攻略 その6

 
前書き
 ゼオライマーは一気にバルト海上より、シベリアにあるハバロフスクまで転移した 

 
 ソ連極東ハバロフスク市にある、ソ連赤軍参謀本部
時間は、18時を過ぎたころで、今まさに日が暮れようとしている
 その建物の目の前に、白磁色の機体が現れた
天のゼオライマーは姿を現すや否や、右手を握り締め、勢いよく打ち込む
拳が風を切って壁を打ち付けると、素早く拳を引く
壁が打ち抜けるまで、正拳突きを繰り返した
拳から繰り出された一撃で、赤レンガの壁が打ち抜かれ、轟音と共に砕け散る

 機体は、右の片膝を立て、左膝を地面につけるような姿勢で駐機させる
右掌を上に向けて、頭部付近にある操縦席に近づける
 マサキは、愛用する回転拳銃と、最新型のM16A1自動小銃を手に持つ
肩掛弾帯(バンダリア)を付けると、コックピットより右掌に乗り移る
機体の上半身を斜めに傾け、地面に手の甲をの付いた状態に持っていく
掌から飛び降りると、勢いよく駆けだした
 彼は駆け出しながら、耳栓を付ける
左手で、弾帯より30連弾倉をとりだすと、弾倉取り出しボタンを押しながら差し込む
右脇に、小銃を挟み、黒色プラ製の被筒を左手で下から支える
右手で棹桿を勢い良く引くと、銃の左側にある安全装置を右手親指で操作する
棒状のセレクターを、時計回りに安全から自動に一気に移動させた
右脇から抜き出した黒色のプラスチック製銃床を持ち上げ、頬付けする
そして、用心金から右の食指を動かし、右掌全体で銃把を握りしめると引き金を引く
次から次に来る警備兵たちに打ち込みながら、建物内を進んだ

 彼が敢て、単身参謀本部に乗り込んだ理由……
それは、ソ連全土を守る核ミサイル制御装置を破壊する為であった
元々は、ミンスクハイヴを焼いて終わりにするという心積もりで動いていた
だが、その様な考えを一変させるような出来事が起きる
ソ連の核攻撃だ。
不意にゼオライマーから降りた時、攻撃を受けたら自身の身は守れない
ならば、遣られる前に遣ろう……
彼は、その様な方針で動くことにした
 
 腰を落とし、銃を構えて建物内を進んでいくと、背後より声がした
「止まれ、木原……」
顔をゆっくり左後ろに動かすと、茶色のトレンチコートを着た男が立っていた
ホンブルグ帽を被り、黒色の短機関銃を構える
「鎧衣、貴様……」
「詳しい話は後だ。核ミサイル制御室まで私が案内しよう」
そう言うと、腰の位置で機関銃を構え、突き進んだ
 
 ある部屋のドアの前に立つと、鎧衣は腰をかがめ右手でドアノブを掴む
即座に反撃できるよう左手に機関銃を持ち、ゆっくりとドアノブを回す
マサキは少し離れた位置で、自動小銃の照星を覘きながら、その様を見ていた
ドアが、ゆっくり開かれると、銃を突き出すようにして滑り込んだ
消音機付きの機関銃は火が吹き、薬莢が宙を舞う
ドアが開いた事に気が付く間もなく、室内に居たソ連兵は全て斃れた
後方を警戒しながら、マサキは室内に入る
ふと彼は、男に尋ねた
「なぜ、貴様は俺を助けた……」
男は、帽子のクラウンを左手で押さえながら、こう告げた
「任務だからさ……」
しばし唖然となる
「それより、君はここで私と無駄話をしに来たのではあるまい……」
ふと不敵の笑みを浮かべる
「それもそうだな」

 50インチ以上はあろうかという大画面モニターの有る室内
そこに複数並べられた操作盤に近づくと、彼は核ミサイルの発射設定を変更し始めた
キリル文字は分からなかったが、出鱈目に操作する
一通り荒した後、配電盤の電源を落とすと、ラジオペンチで配線を切る
持ってきた手榴弾を、操作盤内に設置すると部屋を後にした

 ドアを開けると既にKGBの制服を着た一団に囲まれていた
「武器を捨てろ」
その問いかけに鎧衣は応じ、静かに足元に機関銃を置く
マサキも、弾倉を抜き取り、M16を放る
カラシニコフ自動小銃を構えた男達の後ろから、軍服姿の老人が現れる
回転拳銃を片手に、無言のまま近寄ってくる
不敵の笑みを浮かべると、口を開いた
「東独の工作員より連絡を受け、我々は計画を立てた」

「参謀本部に誘い込み、襲撃現場を押さえる。
貴様には偽の核操作ボタンを破壊させ、我々がゼオライマーを無事に頂く」
KGB少将の階級章を付けた男が、脇よりしゃしゃり出て来る
「で、貴様もその男も殺す」
そう言うと後ろに振り返る
兵達は、銃を突きつけられ、驚くよりも早く銃弾を撃ち込まれる
ボロ・モーゼルと呼ばれる大型自動拳銃は、轟音を挙げながら火を噴いた
男達は脳天に一撃を喰らい、後ろ向きに勢いよく倒れ込む
白い床は撃ち殺された兵士達の血によって、瞬く間に赤く染まった
「我等の部下は何も知らない……この連中と君達は凄惨な銃撃戦の末、果てた」
マサキは、色眼鏡を掛けた老人を睨む
「貴様がKGB長官か」
老人は不敵の笑みを浮かべる
「御想像に任せよう」

「ガスパージン・木原、この人類最高の国家で最期を迎える。
本望であろう」
KBG少将は、彼を煽った
「ゼオライマーが存在する限り、君の名も伝説としてついて回る。
核を奪おうとして、KGBに撃ち殺された日本帝国陸軍の有能科学者としてね」

「末期の水の替りと言っては何だが、葉巻を吸わせてくれないかね」
そう鎧衣はKGB少将に問いかけた
「構わぬが……」
シガーカッターで葉巻を切ると、口に咥える
金属製のオイルライターを取り出すと、葉巻を炙る
出し抜けに、胸元を開けて見せた
 
 (はだ)けた胸元には、縦型に袋状になった前掛け
袋状の部分には、縦にダイナマイトが6本、均等に並べてある
「さあ、打ち給え。
私が吹き飛べば、貴方方も、ビル諸共一緒に吹き飛ぶ。
無論、ゼオライマーも無傷ではあるまい」
老人は、額に汗を浮かべるも、強がってみせる
「どうせ偽物だ。やれるものならやって見よ」
男はダイナマイトを取り出すと、導火線に葉巻を近づける
彼等の面前に放り投げると、同時に伏せた
マサキは、あまりの急転直下の出来事に身動ぎすらできなかった 

 男達は、大童でその場から立ち去ろうとした
その矢先、鎧衣は自分が放った短機関銃を拾い上げると、素早く撃つ
わずか2発の銃弾は、正確に男達の眉間を貫く
立ち上がると、こう吐き捨てた
「KGBの上司と部下がゼオライマーを巡って、打ち合い双方とも果てる。
哀しいかな……」

 恐る恐る、投げたダイナマイトを見る
すでに立ち消えしており、端の方へ転がっていた
「おい、今のダイナマイトは……」
「火薬の量を調整して置いた」
そう言うと、もう一つのダイナマイトの封を切り、床に火薬をぶちまける
先を描くようにして、振りかけながら別の道へ進んでいった
通路の角に差し掛かると、男はブックマッチを取り出し、火を点ける
燃え盛るマッチは火薬の上に落ち、勢い良く火花を散らす
その様を一瞥すると、素早く立ち去った
 
 

 
後書き
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(2022年6月15日 加筆修正) 
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