イベリス

　　　　　　　　　　　　　　　　第五十五話　　速水の食事
　咲は速水にもヴィーガンの話をした、アルバイトに出てそうしたが速水はヴィーガンの話を聞くとこう答えた。
「私はお野菜も果物もよく食べます」
「そうなんですか」
「食事はバランスよく、ですが」
　それでもとだ、速水は咲に話した。
「お肉やお魚もです」
「召し上がられますか」
「はい、ですからヴィーガンではありません」
「そうなんですね」
「勿論牛乳も飲みますし」
　速水はさらに話した。
「卵もです」
「召し上がられますか」
「そうしています」
「じゃあ普通ですね」
「そうですね、それにお酒もです」
　こちらもというのだ。
「よく飲みます」
「それはヴィーガンとは違いますね」
「そうですね、ヴィーガンといってもです」
「お酒はですね」
「仏教では基本禁じられていますが」
　だから般若湯と称して飲むのだ、道教では精進酒がある。
「しかし西洋のヴィーガンではです」
「お酒はですね」
「特に禁じられていない様です」
「そうなんですね」
「その様です、ただ私はまことにヴィーガンではなく」
　咲にこのことをあらためて話した。
「特にお酒はです」
「お好きですか」
「非常によく飲みます、お店にも行きますし」　
　酒が出る店にというのだ。
「それに自宅でもです」
「飲まれますか」
「特にワインが好きです」
「ワインですか」
「赤も白も」
　そのどちらもというのだ。
「そしてロゼも」
「そうなんですか」
「どの国のワインも飲みます」
「お国もこだわらないですか」
「フランスのワインも飲みますし」
　ワインの代名詞と言っていいこの国のものもというのだ。
「イタリアのものもスペインのものも」
「どちらも有名ですね」
「モーゼルも」
　こちらのワインもというのだ。
「ドイツの。アメリカやチリのワインも飲みます」
「チリもワインあるんですね」
「はい」
　そうだというのだ。
「そして日本や中国のものも飲みます」
「色々飲まれるんですね」
「特にハンガリーのものが好きです」
「ハンガリーですか」
「トカイが」
　速水は右目と口元を微笑まさせて述べた。
「私は大好きです」
「トカイっていうワインもありますか」
「ハンガリーが誇る最高級のワインでして」
「店長さんはそのワインが特にお好きですか」
「そうなのです、ですから他のワインを飲む時も多いですが」
「トカイもですか」
「飲みます」　　
　そうしているというのだ。
「その様に」
「そうなんですね」
「高いものもありますが」　
　トカイの値段は様々だ、王侯貴族が飲む様なワインであったがその値段はとびきり高いものもあれば他のワインより少し値が張る程のものもあるのだ。