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恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS

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第百二十話 于吉、埋伏を作らんとするのことその十

「あれで火を噴くこともできますよね」
「殆どアルコールだからな」
「火を点けたら燃えるからな」
 それがウォッカなのだ。
「本当に火を噴くことできるからな」
「そうした酒だからな、あれは」
「それで芸もできますね」
 ウィップはこんなことも言う。
「要注意ですね」
「それやって火傷するなよ」
「顔にかかったりするからな」
「ちょっと風が吹いたらだからな」
「来るぜ。火は」
 ラルフは確信していた。
「今は空気が乾いているからな」
「そうですね。最近雨も降っていませんし」
「しかもこの時代は船も陣地も木だしな」
 ウィップに応えてだ。ラルフはさらに話す。
「弓矢にしても槍にしてもな」
「火を使えば一発ですね」
「ああ、大炎上だ」
 ラルフは真顔で言った。
「それでそこで風でも起こせばな」
「陣全体がキッチンだな」
 クラークはわざとジョークを入れたが顔は真剣なものだった。
「洒落にならないな」
「ましてや奴等には火を使う奴もいる」
 ラルフはクリスのことを念頭に入れていた。
「来ない筈がないんだよ」
「それに対する備えはしていますが」
「それでも来るな」
 今度はレオナに応えて言うラルフだった。
「間違いなくな」
「そうなりますね。やはり」
「さて、どう来るのかわかっているならな」
 ここでは明るくだ。ラルフは仲間達に言ってみせる。
「やり方は幾らでもあるさ」
「幾らでもですか」
「ああ、水も用意してある」
 見ればだ。あちこちに木のバケツが置かれそこには水がなみなみと入れられている。
「それに船も離してるんだ。そうそうな」
「火で来られてもな」
「大丈夫さ。そして奴等がレオナのところに来る」
「そこでか」
「返り討ちにしてやろうぜ」
 不敵にクラークに返す。
「御前もそう考えてるだろ」
「敵の裏をかく」
 クラークも楽しそうに笑って述べる。
「それが戦争だからな」
「そういうことさ。それじゃあな」
「ああ、やってやるか」
「やってやろうな」
 多くの戦いを共に戦ってきた戦友同士が話す。そうしてだった。
 ラルフはまた一杯飲みだ。自分でワインを注ぎ込もうとする。だがここでだ。
 レオナがそっとこう言ってきたのだった。
「待って下さい」
「何だ?入れてくれるのか」
「はい」
 そうするとだ。レオナは実際にワインが入っている瓶を取ってだ。 
 そこからラルフの杯に注ぎ込む。そうしたのである。
「どうぞ」
「悪いな。けれどな」
「けれどとは?」
「レオナもこういうことをしてくれるようになったんだな」
 笑ってだ。こう言ったのである。
「変わったな」
「変わったのですか」
「前はずっと表情だって乏しくてな」
 それでだというのだ。
「しかも戦い以外をするってこともな」
「なかったからな」
「ああ、本当に機械みたいだった」
 それがかつてのレオナだったというのだ。クラークと二人で話す。
「それがここまで変わるなんてな」
「私も変わっていっているのですね」
「人間になってきたよ。それにな」
「それに?」
「可愛くなったな」
 レオナにだ。こうも告げたのである。
「それもかなりな」
「それは」
 そう言われるとだ。レオナは顔を赤くさせた。そうしてこう言ったのである。
「私はそんな」
「こう言われて赤くなるのもな」
「なかったからな」
 クラークがまた言う。
 
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