恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第百二十話 于吉、埋伏を作らんとするのことその六
その笑みに企みと余裕があるのをハイデルンは見た。その隻眼に。
しかしそのことは今は言わずにだ。黙って見ただけだった。
その二人がだ。こう彼等に告げてきた。
「では。名残惜しいですが」
「今回はこれでね」
「ふん、撤退ということか」
「はい」
ゲーニッツはにやりと笑って柴舟の言葉に応えた。
「そうさせてもらいます」
「できればここで始末したかったのだがな」
「残念だったわね」
ミヅキもだ。楽しそうに笑って返す。
「また今度になるわね」
「月並みな言葉だが次は逃さぬ」
タクマも彼等に対して告げる。
「覚悟しておくのだな」
「はい。それでは次は」
「完全に滅ぼしてあげるわ」
こう言ってだった。二人はだ。
闇の中に消えていった。その彼等を見送ってからだ。
ハイデルン達はレオナを保護してそのうえで本陣に戻った。その頃には既に船での戦いも終わっていた。
話を聞いてだ。孔明が深刻な顔で述べた。
「では船での戦いは囮だったのですね」
「おそらくはな」
そうだったとだ。タクマも答える。
「レオナを洗脳することが目的だったのだ」
「そういえばレオナさんは」
鳳統はタクマと同じくそのレオナ、俯いている彼女を見ながら述べた。
「オロチの血が」
「ああ、オロチ一族八傑衆の一人なんだよ」
「親父さんが元々そうだったんだ」
ラルフとクラークが一同にこのことを説明する。
「あのゲーニッツが親父さんの血を覚醒させようとしてな」
「その時にこいつの血が暴走してな」
二人もだ。そのレオナを見ながら説明していく。
「で、まあ何だ」
「親父さんをな」
「そのことは以前聞いていましたが」
鳳統はやや暗い顔になって述べた。
「今その血を狙って来るとは」
「正直俺も予想していなかった」
「奴等の謀略は何度も退けてきたしな」
「こうしてレオナを狙って中から乱してくるなんてな」
「想像すらしていなかった」
「はい、それは私達もです」
「まさか。こんなことをしてくるなんて」
孔明も鳳統も項垂れた顔で述べる。そしてそれは他の軍師達もだった。
誰もが困惑している顔だった。想定すらしていなかったのだ。
そしてだ。その中でハイデルンがこのことを話したのだった。
「しかもだ」
「しかも?」
「しかもといいますと」
「レオナへの洗脳は完全には解けていない」
そのことをだ。ここで言ったのである。
「何時オロチの血が覚醒するかわからない」
「ああ、それは間違いねえぜ」
何とだ。意外な人物が話してきた。
山崎だった。彼にしては珍しく真剣な顔で言うのである。
「オロチの血ってのは目覚めさせるとな。半端な状態でも何かちょっとあれば目覚める様になるんだよ」
「じゃあやっぱり」
「レオナさんは」
孔明も鳳統もだ。そのことを聞いて通訳。
「またオロチが出て来ればそれで、なんですね」
「オロチの血が覚醒するんですか」
「俺は大丈夫だけれどな」
山崎は今度は面白そうに笑って述べた。
「俺はオロチの血なんて全く関係ねえんだよ」
「それ何でや?」
張遼が不思議そうにその山崎に問うた。
「あんたもオロチやっちゅうのに」
「俺は俺の生き方をするだけなんだよ」
そうだと答える山崎だった。例え闇社会に生きていてもだ。
「世界がどうとか関係ねえんだよ。それにな」
「それに?」
「それにっていいますと」
「入れとか運命に従えとかいうのは嫌いなんだよ」
山崎の考えではないというのだ。
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