イベリス
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第五十三話 雨の東京その十
「しかしその広さは途方もないものです」
「もう距離を測ることもですね」
「出来ないまでの」
そこまでのというのだ。
「距離です、光でもです」
「この世で一番速いですよね」
「そうされていますが」
その光でもというのだ。
「宇宙を横断、縦断するのにどれだけかかるか」
「そこまでの距離ですね」
「だから何十万年光年と呼ばれます」
この言葉が生まれているというのだ。
「光年と」
「光の速さで進んでも一年かかる距離ですね」
「そうです、そしてその何十万光年が」
これだけの距離もというのだ。
「宇宙ではほんの一部です」
「ほんのですね」
「それが宇宙なのですね」
「その宇宙だけでなく」
広大極まるその場所もというのだ。
「あらゆる並行世界がありますが」
「パラレルワールドですか」
「その全てを誰がどう動かしているのか」
速水は真顔で話していった。
「そう考えるとです」
「神様や仏様ですか」
「そうです、神仏が存在してです」
そうしてというのだ。
「動かしています」
「そうなんですね」
「神や仏なくしてです」
「この世は動かないですか」
「そうです、決して」
咲にその顔のまま話した。
「私はそう考えています」
「そうですか、そう考えますと」
咲は速水のその話を聞いて言った。
「私もです」
「そう思われますか」
「はい」
まことにというのだ。
「私も」
「よく宗教がどうかと言って」
「無神論ですね」
「それで神仏の存在を否定して」
そしてというのだ。
「唯物論等を言いますが」
「共産主義ですか」
「そうした考えの人とはです」
速水はというのだ、咲にこのことは強い考えがあるその顔で以て真剣な声でさらに話していくのだった。
「違うと自覚しています」
「そうですか」
「私は神も仏も信じていて人間はです」
この存在はというのだ。
「小さいとです」
「お考えですか」
「左様です」
まさにというのだ。
「そう考えています」
「そうなんですね」
「ですから」
咲にさらに話した。
「お寺や神社にもよく行きます」
「そうした場所にもですね」
「東京はそうした場所も多いですね」
「ええ、何かと」
咲もそれはと答えた。
「有名な場所も多いです」
「それは神仏が東京の人達と東京という場所を護る為でもあります」
「よく言われていますね」
「東京は結界の塊です」
この言葉も真剣な顔で話した。
「まさに」
「それでお寺も神社もですね」
「江戸の街が開かれた頃より」
この頃からというのだ。
「多くのそうした場所が置かれ」
「江戸を護ってきたんですね」
「そうです、他にもです」
お寺は神社だけでなくというのだ。
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