俺が魔王の息子ってマジですか!?
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
15話 ベルと高校生 下
ーヒルダー
電柱の上で、ベルゼ様を発見した私。
しかし、見つけたベルゼ様の傍に人間の男が二人居た。
一人は銀髪でキモそうなクソ虫。
もう一人は、黒髪で頭の悪そうなクソ虫だ。
そして、最悪な事にベルゼ様は頭の悪そうなクソ虫に抱きかかえられている。
もし、幼いベルゼ様にあの男の頭の悪さがうつったら大変だ。
ベルゼ様をかわいがっておられる紅蓮様がお怒りになるに違いない。
そう思った私は電柱から降りて、ベルゼ様を奪還しようとクソ虫達の前に飛び降りた。
~喫茶店~
クソ!何てことだ!!まさかベルゼ様がこのようなクソ虫を契約者に選ぶなんて!!
クソ虫どもに案内された喫茶店の席で、コーヒーを飲みながら怒りを抑えつつ、
人間界に来た目的を話す私。
何故、このようなことになったのかと言うと、原因は目の前でベルゼ様を抱えて
座っている、クソ虫のせいだ。
この喫茶店に入る前に、ベルゼ様を奪還しようとしたのだがベルゼ様がそれを拒み
クソ虫と離れてくださらない。
もしかしたらベルゼ様はクソ虫を契約者にしようとお考えなのかもしれない。
『契約者』
それは簡単に説明すると、悪魔が人間界で力を発揮するための触媒。
幼すぎる悪魔の場合は別名『親』と呼ばれる。
ん?今更だが、もし紅蓮様にベルゼ様の親がこのようなクソ虫と知られたら……。
想像したら、背中に冷や汗が流れる。
紅蓮様は魔界に居られた時、世話を私に任せると言いつつも、よくご自分で世話をしていた
ほどベルゼ様を可愛がられて居られたのだ←(正直羨ましい)
クソ虫が契約者などと、もしバレたりしたら烈火のごとくお怒りになるに違いない。
一体どうしたものか……。
先程まで抑えていた、怒りはどこへやら、私は未来の自分を心配した。
「誰が親なんかやるか!さっさと帰りやがれ!!」
おや?どうやら私は無意識のうちに最低限の事をクソ虫に説明したようだ。
さすがだな。
心の中で自画自賛していると、とてもいいことを思いついた。
思わず顔がにやけてしまいそうになるほどのよい案。
それは……
目の前のクソ虫を殺すこと!
後、うまくすればベルゼ様に近寄るクソ虫をよく排除してくれたと紅蓮様に
褒めてもらえるかもしれない!!←(こっちが本命)
~広場~
喫茶店から逃げたクソ虫を追い詰めた私。
これで紅蓮様に褒めてもらえる!と思いながら剣を振るった。
しかし……。
「びえぇぇぇええええええええ!!」
ベルゼ様の泣き声と共に私は空中へ吹き飛ばされてしまった。
少し驚きはしたが、うまく着地をして泣いておられるベルゼ様を見る。
私の視線の先に居られるベルゼ様は倒れている(死んだか?)クソ虫の背中に
張り付き、大泣きをしていた。
もう、この場に居る誰にも止められない。
クソ虫を自分の手で排除できなかったのは少々残念だが、幼いベルゼ様が
クソ虫を退治したと聞けば紅蓮様はお喜びになるはず。
今回はベルゼ様の勇姿にお喜びになる紅蓮様を見るだけで我慢しよう。
「ちょっと!やばくないっスか!?保護者なら止めてくださいよ!!」
計画の変更を考えていると、隣から声が聞こえたので振り返ってみると。
銀髪のクソ虫が居た。
なんだ、まだ居たのか。
正直、どうでもよすぎてすっかり忘れていた。
まあ、ベルゼ様が泣き止むまで暇なのだ、少しぐらい相手をしてもいいだろう。
「無理です。あのような大泣き、大魔王様か紅蓮様にしか止める事は出来ません」
「マジですか!?」
私の話を聞いて驚愕するクソ虫。
正直このようなクソ虫に敬語を使うのは嫌なのだが、私は紅蓮様の侍女悪魔。
いつでも、どこでも最高の侍女でいなければならない。
それはそうと、紅蓮様にお会いしたらまず、一緒に暮らす家を見つけなければ。
広い庭で遊ぶ、ベルゼ様。
それを見守る、仲のよい私と紅蓮様……最高だな。
そんな感じに、紅蓮様との家族計画を考えていると先程まで発生していた
雷撃が止んだ。
どうやら、ベルゼ様が泣き止んだようだ。
さっさとベルゼ様を回収……ではなく、奪還せねば。
そう思い、ベルゼ様に近づこうと歩き出す。
しかし……。
「男がそう簡単に泣くんじゃねーよ。バカにされるぞ」
「アウ」
クソ虫はしぶとく生きていた。
ベルゼ様の頭を撫でている様子から、おそらくベルゼ様を泣き止ませたのだろう。
頭を撫でて泣き止ませる。
簡単な事だが、簡単ではない。
さすがはベルゼ様が選んだ『親』ということか……。
ふう、とため息をつきながらあたりを見渡す。
ある場所は地が抉れ、ある場所は木が薙ぎ倒されていた。
なるほど、ベルゼ様の触媒としての資質も『親』として問題はない……か。
ただの大泣きでここまでの力を引き出す、この男。
見かけと品位と性格以外は、ベルゼ様の『親』に相応しいのかもしれん。
私の中で、クソ虫がドブ男にランクアップした瞬間だった。
この男を調教し、まともに仕上げれば紅蓮様は納得するだろうか?
ドブ男の調教計……もとい、まともな契約者育成計画を考えていると……
バギン!!
金属の破砕音が聞こえ、音のした方を見ると鉄塔がベルゼ様に向かって倒れ始めた。
まずい!!
「ベルゼ様ーーー!!!」
急いでベルゼ様の元に駆け出すが、間に合わない!
必死で間に合うように足を動かす。
すると、ベルゼ様に駆け寄る一人の男が居た。
ドブ男!?
なんと、いつの間にかどこかに行ったドブ男が現れ←(計画を考えていて見えてなかった)
ベルゼ様を抱きかかえた。
「男鹿ーーーー!!!」
しかし、逃げ出せる時間はもうない。
近くのクソ虫もそう判断したのか、ドブ男の名を叫ぶ。
もう、間に合わない。
そう、諦めかけていた時。
ここで奇跡が起こった。
見覚えのある緑の長髪に、凛々しいお顔。
私が人間界に来て会いたかった人。
紅蓮様
その紅蓮様がドブ男の前に現れ、迫り来る鉄塔を魔力の塊をぶつけて消し飛ばした。
「やるな、人間」
紅蓮様がドブ男の勇気を称えて褒めるが、助かった事に安心したのか
ドブ男は倒れてしまった。
まあ、それよりも今は……。
「紅蓮様。この度の件ですが……」
「別にいい、気にするな」
「はっ」
今回の事を報告しようとしたのだが、どうやら紅蓮様は全てお見通しのようで
報告を断られてしまった。
もしかして、見ておられたのだろうか?
「ヒルダ、この男を鍛えろ。きっと面白い事になるぞ」
「了解しました」
どうやら、ドブ男は紅蓮様に気に入られたようだ。
とても不愉快だが、しかたがない。
「じゃあ、引き続きベルを頼む」
「はっ!」
紅蓮様はそれだけを言って、転送術でどこかに行ってしまわれた。
ん?
えええぇぇぇぇぇええええ!?
「紅蓮サマーーーーー!?」
おそらくドブ男を鍛えるのとベルゼ様の傍に居ろと言う事なのだろうが……
「紅蓮サマーーーーーーーー!?」
叫ばずには居られない私だった。
ー男鹿辰巳ー
突然、俺の目の前に現れた、いけすかないロンゲ野郎。
その男は、俺に迫り来る鉄塔を消し飛ばし
「やるな、人間」
と言って来た。
コイツも悪魔かよ……。
くそ、今日は本当についてねぇ……。
視界がぼやけ、俺は意識を失った。
「あれ?夢オチ?」
目が覚めると、見覚えのある自分の部屋だった。
そうか、夢だったのか。
胸に手を置き、心の底から安心する俺。
「そうだよな、よく考えたら悪魔なんてこの世に……」
「ようやく目覚めたか、ドブ男」
「NOooooo!!!」
声のした方に顔を向けると、夢に出てきたガキを抱きかかえて座っている
金髪女が居た。
どうやら、さっきまでの光景は嘘ではなく……
「それと、貴様のせいで紅蓮様と暮らせなくなったではないか!!」
「誰だよ、紅蓮って!しらねーよ!!」
現実だったようだ。
「うるさい!貴様には地獄のトレーニングが待っていると思え!!」
「ギャーーーーーー!!」
これが、『子連れ番長』誕生の瞬間だった。
ページ上へ戻る