イベリス
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第四十八話 東京という街その八
「私も結婚なんてね」
「考えてないわね」
「結婚どころか彼氏もね」
「いないのね」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「結婚なんてね」
「とてもなのね」
「いや、彼氏もね」
「いないのね」
「というか出来るなんて」
首を傾げさせつつ言った。
「とてもね」
「考えられないのね」
「今はね、学校の授業に部活に」
それにというのだ。
「アルバイトにお姉ちゃんと遊びに行ったりして」
「それでなのね」
「恋愛は」
それはというのだ。
「とてもね」
「考えられないのね」
「何か恋愛のことは」
このことはというのだ。
「考えられないわ」
「そうなのね」
「いや、言われてみればね」
「咲はこれまでそうした話なかったな」
「中学まではまさに漫画、アニメ、ラノベのヲタで」
そうした風でというのだ、咲は父に話した。中学までの自分を振り返るとそうとしか思えなかったのだ。
「インドアだったしね」
「それで今はだな」
「部活にお洒落にで」
「アルバイトにだな」
「それでお姉ちゃんと一緒にね」
「遊んでだな」
「他のことはね」
それこそというのだ。
「考えられないわ、充実してるわ」
「そうなんだな」
「だから彼氏いなくても」
それでもというのだ。
「私は別にね」
「いいか」
「ええ、いいわ」
こう言い切った。
「そう思うわ」
「そうなんだな」
「それに変な人を好きになって」
そうしてというのだ。
「そしてね」
「大変なことになったりすることもか」
「怖いしね、ヤクザ屋さんとか好きにならなくても」
それでもというのだ。
「変なトラブルでとんでもない振られ方して皆から嗤われるとか」
「ああ、そんなことあるわね」
母は咲のその言葉に頷いた。
「お父さん八条石油の社員でしょ」
「それと今の恋愛のお話に関係あるの?」
「八条グループの企業でしょ」
「八条石油もね」
「八条グループは八条学園も経営してるわね」
「私その東京校に通ってるけれど」
「神戸の本校で何かそうした話があったらしいのよ」
こう娘に話した。
「ある女の子を好きになって友達に告白する様に言われてね」
「告白したら振られたのね」
「それもかなり酷くね」
「そんなことがあったのね」
「それでけしかけた友達も」
告白する様にだ。
「言ったのに自分が告白した友達だと周りに自分達も言われると思って」
「逃げたのね」
「縁を切ったらしいのよ」
「失恋して裏切られて?」
「それでその子は暫く一人の友達に支えられていたけれど」
「物凄く傷付いたのね」
「そんな話があったそうよ、幸い本当の恋人が出来たらしいけれど」
それでもというのだ。
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