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東方絆日録 ~ Bonds of Permanent.

作者:福岡市民
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共存編
  早苗:真相

フラン「うぅ…うーん……」


深夜になってようやくフランが目を覚ました。


(西)「大丈夫?」

フラン「あ、早苗…」


フランが(西)をじっと見つめる。
弾幕ごっこのときは鮮やかな赤に染まっていた瞳も今は通常の深紅に戻っていた。


(西)「フランちゃん、心配してくれてありがとうね」


するとフランが早苗に抱きついてきた。


フラン「ごめんなさい!私…私……‼︎」


言葉に詰まってうまく表現できないようだ。(西)はそんなフランを優しく抱きしめる。


(西)「気にせんでよかよ?ウチには“わざとじゃない”ってことがちゃーんと分かっとったけんね?」

フラン「嘘だ!」

(西)「え?」

フラン「そんなわけないよ!よく遊び相手になってくれる魔理沙だって私があんな状態になっても『気にしなくていいぜ』って言ってくれるけど、どうせ心の中では呆れかえっているに決まってる…。そして私はいつもそのあと落ち込むの。もうずっとその繰り返し」

西(・・・。)


フランは自身の「ありとあらゆるものを破壊する程度の能力」が嫌いだった。とはいえその全てが嫌いというわけではない。彼女は自分の能力に誇りを持っている。
誰にも破壊することができないもの(例えば巨岩や厚い鉄板など)でもフランの能力を以てすればまるで砂山を壊すように容易く破壊することができる。
それはまさに吸血鬼に相応しい能力なのだ。

だがフランは能力に溺れやすい。
「紅霧異変」でフランと戦った霊夢や魔理沙はその時すでに気づいていたが、彼女を気遣いあえて言及しなかった。姉のレミリアはフランに無関心なので気づくはずもない。
フランが自らの能力に溺れやすいことに気づいているのは霊夢と魔理沙、そして紅魔館のメイド長でフランのお守り全般を任されている十六夜(いざよい)咲夜(さくや)しかいなかった。

しかし咲夜は仕事に忙殺されてフランときちんと話せておらず、結局のところフランは半ば放置された格好となっておりそれが彼女の心を荒ませる要因となっている。その荒んだ部分が狂気となって現れるのだ。
もちろんフラン自身もそのことは十分理解しているのだが具体的な対処法までは分かっていなかった。

『変わりたいのに変われない。』
そのもどかしさが彼女を自己嫌悪に陥らせている一番の原因だった。


フラン「弾幕ごっこの度に狂気に堕ちてみんなに迷惑をかける……もうずっとその繰り返しだもん。本当はただ純粋に遊びたいだけなのにいつも最後はそうなってしまうの」

(西)「・・・。」

フラン「だから私はみんなに嫌われるのよ。こうなるってことが始めから分かっていれば生まれてこなければ―――」


『よかったのに』と言おうとしたとき、フランは(西)に胸ぐらを掴まれ身動きが取れなくなった。


フラン「何するの⁉︎離してーーー」

(西)「しゃあしかったい(うるせえんだよ)‼︎」

フラン「!!!」


初めて聞く(西)の怒声にフランは驚いた。しかもよく見ると目に涙を溜めている。


フラン「もしかして泣いてるの?」

(西)「……フランが誰にも構ってもらえんで悩む気持ちは私にも()う分かる。狂気に堕ちるのも…まあしゃあないたい(仕方ないよ)ばってん(だけど)、“生まれてこなきゃよかった”だあ?ふざけるな!」

フラン「・・・。」

(西)「世の中には子どもを作りたくても作れん人が大勢おるんよ?そんだけやない。病気や事故、果ては虐待や貧困など様々な事情で命を落とす不幸な子どももたくさんおるっちぇ(いるんだよ)?それば分かって言いようとや(言ってるのか)?」

(西)「フランも辛かろうし私も辛いけん、もうこれ以上の事は言わん。言わんばってん、次“生まれてこなきゃ良かった”やら言うてみい……。うちくらすぞ、きさん(ぶん殴るぞ、貴様)‼︎」


そして(西)は手を離した。



ーー
ーーー


しばらく経ってフランが口を開いた。


フラン「早苗……ごめんなさい。発言が軽卒過ぎました」


すると(西)は先ほどとは対照的に穏やかな笑顔をフランに向けた。


(西)「よかよ、フランちゃんが分かってくれたなら。今度フランちゃんのお姉さんに会ったらウチからも言っとくけんさ。こっちこそカッとなってしもうて…ごめんね?」

フラン「ううん、もういいの。ありがとう!」




ーーーフランも(西)に負けないくらいの明るい笑顔で答えた。 
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