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妖精のサイヤ人

作者:貝殻
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第十話:動き出す宿命…始まった悪意による絶望

 
前書き
 

 
「な…なんなんだよこれ…!!」

初友人宅(友人の部屋で)お泊りを経験し、朝で顔を洗った後にネロの部屋に戻ろうとしたラクサスはある部屋を見つけ、ただの興味本位でその部屋――書物蔵の机の上に置いてあったとある本を読んでいた。
机に置いてあったその本を読むたった数分の内、ラクサスの顔が青色へと変化し、本を持つ手がただ震える。

「こ、こんなのって…ネロの姉ちゃんってこんな…」

昨晩ネロの部屋に行く前、一度この部屋のことを教えてもらっていた。
書物蔵は姉が各地で集めた本であり、歴史やら絵本やら参考文献やらあらゆるジャンルの本が置いてあるという。
本を雑に扱わないのなら読んでもOKと許可はもらっている。
じゃないとこうしてわざわざ興味本位だけで本を取ろうとはしなかっただろう。
しかし、ラクサスはただ机の上に置いてあったからという理由でその本を読んでしまった。
まだ10歳という年齢であるラクサスにとってはただ刺激が強すぎてあり、そんなラクサスに甘々であったマカロフでさえハッピーエンドの本しか読ませたことがない。
故に純粋無垢でピュアであるラクサスにとって途轍もない程のダメージだったりして、後ろに近づいてくる気配に気づかせない程麻痺させるには十分であった。

「――その本、ひでえよなシナリオ」


「~~!?!?」

大きな声をあげそうになるラクサス。 思わず持っている本を離してしまい、落としそうになるが隣からその本を受け止めた見覚えのある片手が彼の目に映った。
前日何度も拳で語り合ったその手はネロ・ハバードその本人である。


「落としたら姉さんがキレちまうだろ。 わざわざ虎の尻尾を踏むようなマネとかやめてくれよ?」

この部屋を教えたオレも巻き込まれちまうから、と残してその本を机の上に置く友人を見て未だ心臓の音がうるさいその左胸を手で押さえるラクサスに若干ネロは同情するように見た。


「姉さんの本の趣味、びっくりしたろ。 オレも初めて見た時は腰抜かした」

「びっくりところじゃねー!!なんなんだよあの冒頭!?」

「姉さんが書いたハッピーエンドまっしぐらなほのぼの系神話」

「ほのぼの要素まったくねえし最後の神話の部分のとこ以外しか当たってねーんだよ!!」

「って教えてくれたのがオレの姉さん」

「嘘だろセイラ!!?」

昨晩「呼び捨てで構いませんわラクサス様」と言って未だに敬称やめてないあの人がこんな趣味悪い本をそんな風に言うの!!?
ハッピーエンドじゃなくてバットエンドでほのぼのでもなければただの殺戮してて世紀末系神話の間違いじゃねえのか!!!

と脳内の中で駆け巡る言葉を口にできないほどの衝撃的な体験したラクサスの顔を見てネロはただただ同意するように深く頷いた。
まるで口にしなくても解ると頷くこのダチ公、被害者1号だったのか。

「とりあえずリビングに行こうぜ。 今頃姉さん朝飯の準備していると思うから」

そうして朝御飯を迎えようとする少年たち。
どんな顔をしてセイラと会えゃいいんだよとダチ公に愚痴りながら、ラクサスはネロに着いていく。
部屋のドアを閉めようとするネロはある本棚に目を向け、すぐにラクサスと共にリビングに向かった。

その日の朝はただ気まずそうに食事していたラクサスにセイラは首を傾げたり、なんたか落ち着かない朝になっていた(ネロ談)


★★★★★★★


目の前で友人が姉にフルボッコされている件について。
何故か前世で読んだことのあるラノベみたいなタイトルと現在の状況を合わせた言葉が思い浮かんでしまうほど、改めて自分の姉の異常性を目のあたりにしてしまった。

今のラクサスは完全に大会の決勝戦でやり合った時以上の魔力とスピードを使って、目の前の姉に挑んでいた。
前日でも一度ラクサスと軽い手合わせして分かったのは、オレだけじゃなくラクサスまでも強くなっていた事実。
ラクサスはサイヤ人というわけではなけく、普通の魔導士なわけだが…どうやら大会で闘った時にオレとの戦闘で''何か''を掴んだらしく…オレよりまた上の一歩強くなっていた。
それに対してライバルのオレにとって悔しいことであると同時に活力を沸かせることだったのだが、そんな強くなったラクサスでさえ、姉の顔を歪ませていない。

姉さんは変わらずいつも通りに涼しい顔をしてラクサスの攻撃を避けたり流したり、時々雷を食らっても顔色を変えることなくラクサスにカウンターだけしていた。 
何よりも驚かされるのは…さっき述べた通りカウンターだけしている、という事実。
オレとの手合わせ時と同じく、無駄に動くこともしないでただ攻撃された瞬間に的確に掌底打ちを繰り返しているだけ。

「――クソ!!魔法すら使わねえでこの強さかよ…!!」

姉さんの頭上で組んだ両手でを振り下ろそうとしたラクサスは姉さんの届く瞬間にその顔面は姉さんの掌が打ち込まれてしまい、また吹き飛ばされていくが空中で体制を整えたのかまた雷を纏い、今日一ともいえる程の速度で姉の背中に飛ぶ――がそれはフェイントだったようでいつの間にか別の雷光と化してオレの視界ですら映らない程のスピードで姉の懐へと接近していてアッパーを仕掛けようとしていた。

「がっ!!?」

それでもなお、ラクサスの拳は届かない。
ラクサスの拳が届く前にその真上から姉は掌を振り下ろし、何の手入れもされていない地面へとアイツを沈ませた。

「…マジかよ」

正直今の姉にならオレの攻撃が通じるとか、ラクサスなら姉さんといい勝負ができると思っていた。


そんな憶測を打消すほどに脆いものだったことを、今目の前の現実がオレに突き付けられる。
1年前のオレより強いオレよりも強者であったはずのラクサスを、今オレの姉さんは表情を変えずに魔法を使わずただの身体能力で叩き伏せた。
何が強くなっただ、目の前で今もなお強さを表す姉の前じゃ、まだ全然紙屑と同然のままだ。
ラクサスの雷を食らったら今のオレでも平然といられない。
大会の時よりパワーアップしたのはラクサスだけじゃなくオレもなのだが、それでも今のラクサスにまだ敵わない。


姉さんをギルドに連れて行ったら、また一から鍛え直してもらおうと思っていたが…うん、鍛え直すところかいっぱい稽古してもらわないといけないらしい。

じゃないと、目の前の二人に並ぶ程強くなれないだろうから。

「…これでよろしいのでしょうか。 実力を見せてほしいと言われたので、御手合わせをしたのですが」

「…………。」

「…ラクサス様?もしや気絶―」

「……………ちくしょうっ」

「――してないのですね。 驚きました、予想以上に打たれ強いのですね」

ここに向かう道中、ラクサスは大人の魔導士よりも強いと聞いたことがあった。
大半大人より、ラクサスの方が実力者で、アイツは一部の人間にしか圧倒されたことないということも。
だから、何気にラクサスがこんなに悔しがるのもしょうがないんだろ。
身内の魔導士より会ったばっかりのダチの姉にこうもボロボロされるというのは、今まで築き上げてきた誇り(プライド)を傷ついちまうのは。



★★★★★★★



「強えよ…なんでこんなとこに…こんなに強いヤツがいるんだよ…」

(わたくし)、あまり騒がしいのは好みませんので。 こういう人里の離れた場所で弟と過ごすのが性に合ってますの」

「…アンタ、今どこかに所属しているギルドでもあるのか?」

ボロボロで汚れた服をたたきながらラクサスが立ち上がり、セイラの目を見つめながら、そしてその弟であるネロをチラ見してから本来の目的であるセイラの勧誘のために質問した。
可能であれば、このまま一緒にギルドに連れていき、また強くなったら決闘しようとラクサスは内心を燃やす。

ライバルであるネロより、その姉の方が強かった。
今のネロ・ハバードならば並大抵の雑魚魔導士より実力者だ。 それは今のラクサスも言えることだが、同年代でラクサスといい勝負できる人間は彼の周りにはいなかった。
だからこそ、そんな自分たちより強者であるセイラという存在は、ラクサスにとっても超えるべき壁の一つになるのは当然の結果だろ。

「ネロはオレと同じギルド、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入る。 そこでだ、アンタもまだギルドに所属していねえなら姉弟一緒に入らねえか」

「……」

「聞いてくれよ姉さん、そのギルドにも滅茶苦茶強い人がいるみたいでさ、それにギルドメンバーの人たちも個性あふれるヤツばっかりで面白そうなんだよ」
 
今まで離れてみていたセイラの弟であるネロも近寄り、先日ラクサスが話してたギルドの話をする。
ギルドの人間たちのアホ話。
強い魔導士。
冒険になるであろうクエスト。

どれもネロが今まで味わったことのない日常がそこにある。
姉と一緒にその日常に溶け込めばどれだけいいのか。
きっと退屈なんてさせてくれないであろう日々がそこにあるのだろう。
強敵と闘い、強くなって、美味しい姉の料理を食べて強い姉と稽古。
そしてラクサスとの勝負、ラクサスより強いであろう魔導士とラクサスの祖父であるマカロフの強さ。

どれも魅力的なことであり、既にそれが楽しみになっているラクサスとネロがいる。
だから彼らはその手が拒まれるという発想は、ハナからなかったのだ。

「折角の申し出ですが、お断りさせていただきます」

ギルドの加入を断り、彼女はただ淡々としていた。
 
(わたくし)、もうギルドに所属しておりますので」 

「…え、姉さん本当にギルドに入ってたの!?」

「嗚呼、そういえば今まで教えたことがございませんでしたね」

「…マジか、ギルドを変える気とかも…」

「ありませんわね」

すでにギルドに所属していたという事実を明らかにするセイラに弟であるネロは驚き、そして一か八かの異動の可能性を求めるラクサスに彼女はやはり淡々とその可能性を切り捨てる。
風に吹かれる髪を手で押さえながら、弟であるネロを見つめて。

「ネロさまは、ラクサス様の所属するギルドに加入する…ということでよろしいのですね?」

姉の質問になぜかネロは問い詰められているような、まるで悪いことをして怒られてるような気分になる。
何故、姉から怒気を感じるのだ。

「そう、だけど…何か悪いのか?」

「――いいえ、悪くはないですわ。ええ…ネロさまの歩むべき道は、貴方さまが決めるべきことですので」

「姉さん…?」

「アンタ、ネロに同じくギルドに入ってほしいと思ってんだろ」

困惑気味に姉を呼ぶネロの前にラクサスが出て、彼女の核心とも呼べる感情を指摘した。

「……。」

「家族、同じギルドがいいもんな。 離れ離れっつーのは結構辛えことだし、何よりアンタ――」

「――ブラコンだろ」

「否定しません」

「!?」

突然ラクサスが姉に対して「アンタブラコンだろ」発言に目を点にするネロに姉の否定のない即返答にネロはぎょろぎょろと二人を見渡してしまう。
いや、突然何言ってんだ。というか姉さんも何を真顔に答えてんだ!?

「可能であるのなら、ネロさまには(わたくし)と同じギルドに所属していただきたかった。 同じ居場所で過ごせば、同じ時間を共にし、同じ志を示せればどれだけ良いか」

「ね、姉さんェ…」

「ならアンタも入りゃいいだろうに、ウチのギルドに」

所かジト目になってセイラを見るラクサスに彼女は首を振り、悲し気な表情でネロを見つているだけ。

「それはダメです。(わたくし)には(わたくし)の目的のために、そしてあの御方の為に今のギルドに居なければなりませんので」

「あの御方…?誰だよソレ、姉さんのとこのマスター?」

「いいえ、マスターではありません。 しかし、ネロさまと同じく大事で恩を報いらなければならない御方」

「恩……?」

ネロは姉との話題で彼女の人間関係について触れたことはない。
何故ならこんな山奥に家を建てて住んでいるのだから、きっとそれなりに重い話だろうと遠慮して聞いたことがなかったのだから。
聞いておけばよかった、と思うのは…次の瞬間であった。


『あとは僕が説明するよ、セイラ』

その声は――否、魔力は不気味といっても過言ではないほど濃厚なマイナスを感じさせる程の色を持つ''誰か''の声であった。

「「!!?」」

その声を聞いてネロとラクサスは初めて自分たちの身体が動けないという現象を理解した。
いつから…と考えるが彼らは気づかないのも無理ない。
この現象はいつというよりもこの声が響き渡った瞬間に彼らの身体の自由を奪ったことなど、一瞬過ぎる出来事に彼らは悟ることができない。

「――よろしいのですか、今ここで…」

『構わないさ、どうせあのギルドに行くのなら…明確に成長させる材料が必要なんだよ。 この子がこのまま腐るようなら処理する必要があるけど』

「それについては大丈夫かと。 ネロさまは旅に出る前から強さに対しては積極的な子ですから」

『うん、順調のようだね。 ああ、そうだ。 ちゃんと彼に力の使い方教えてあげた方がいいよ、まだ魔法の使い方が間違っているみたいだから』

「承知しました。 このセイラ、最後の教えをネロさまにご教示します」

『よろしくね』

二人の少年を差し置いてどんどんと進む会話にネロとラクサスは口をはさむことができなかった。
二人が会話している中、なんとか身動きしようとしたり、魔力で身体強化して金縛りから解放を行おうとするが…うまくいかない。
会話が終わったのか、セイラは地面に膝をつき面を下げる。まるで王の御前とも思われるその敬服にネロとラクサスは益々状況が読めなくなっていった。

『二人とも待たせたね。 まさかキミがラクサスと友達になるとは思わなかったけど、これもあの二人の血筋による結果かな。 ゆっくり見てみればラクサス、ユーリに似ているね。彼の面影がよく残っている』

次に謎の声が彼らに意識を向いたのだろう、どこにもいないのに二人は途轍もない程の巨大な気配の視線を感じて先ほどより金縛りが強くなったと感じた。
話しかけられたラクサスは上がる圧迫感により息がうまく吸えないのだが、それでも辛うじて謎の声の言葉をゆっくり聞き取っていた。
ユーリ、という見知らぬ人間の名前を持ち出されて本人は一体何に巻き込まれているのが理解できずに。

『ああ、ごめんね。 できることなら顔を合わせて話をしたいけど、友人に止められていてね。 一応テレパシーの魔法の範囲を上げて話しかけているが、使う魔力が大きすぎて君たちに苦痛を与えているみたいだ。 少しの辛抱だけど、耐えておくれよ。いい修行にもなると思うしね』

魔力の圧迫、ただそれだけの現象で少年たちは身動きできないほどの金縛りを発生させているのかと彼らは背筋を凍らせた。
この声主は…まるで親しい人間に接しているような話し方も含めてラクサスとネロにとってはただ不気味で仕方ない。

『さて、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入るんだってね?いいと思うよ。君を強くなるのにもってこいの環境だ。 ただ行くのならちゃんとセイラの教えを聞くんだよ? 君、魔法を使うときに魔力の通し方があまりにも酷いものなんだから」

『今はそれでもいいんだけど、あまり記憶頼りに動くのは良くない。 人間誰しもまずは基本から一歩を踏み出すのだから、間違った方法をし続けると――壊れちゃうよ』


――記憶通り…?

声の主の言葉にギリギリ意識を保っていたネロにとって、心臓を掴まれるという感覚にさせられる程迫っていた。
その言葉は、ネロという人間の魂の正体を知っているかのような口ぶりに恐怖に震わせるのに十分な言葉であった。


『彼と同じ''技''、そしてその心の底から恐怖を表している顔…やっぱりそうか。 君は――記憶を引き継いでいる…いや、漠然とした感じで持っているか。 …興味深いね』

まるで今までの自分の行動を見てきたかのように感じられる、今までそれを気づけなかったネロの行動はただ恐怖で震えることだけ。

『よし、君がギルドに入った後から、理不尽をぶつけることにしよう。 っといっても、君に試練を与えるのは僕の友人なんだけどね』



『らしくもなく長話したけど…僕が何言いたいかと表すとね――君に期待しているんだよ、ネロ』

初めて名を呼ばれたネロはただ震えるしかできない身体を震わせながら、早く終われと強く祈っていた。 

『この僕を滅ぼしかけた''彼''の血統を受け継ぐ君が、強くなって僕を殺してくれるのをね』

声を聞くたびに、森全体の木々が自分と同じように恐怖で震えているようにすら見える。

『最後は僕の名前も残して去ることにするよ、よく覚えるといい』

次の瞬間、ネロとラクサスの前の視線にあっただろうその森は――死滅していった。
まるで命を吸い取らていくように枯れていく自然を目の当たりした彼らに、ソレは最後に名前を明かす。彼らにとっても忘れられないであろう誰かの名前が。

『僕の名前は――醜い妖精、スプリガン。 また会おう――次に顔を合わせるときは、今よりもうんと強くなっていてくれ』



一方的であったその会話にあった圧倒させられていた魔力は、まるで初めからいなかったかのように消えた。
それを実感した途端ネロとラクサスは地面に膝をつき、過呼吸になっていた息を急いで整えようとする。

「ハァッ…ハァッ…ハァッ…!!!」

「な、なんなんだよ…今のは…げほっ…!!」

必死に状況を理解しようとする彼らに、今まで敬服していたその女は静かに立ち上がり二人の少年たちが落ち着くまでただ彼らを見ていた。

「ね…姉さん…こ、これって…さっ…さっきの…!!」

「オイ…説明しろよセイラ…!!アイツは…一体…」

(わたくし)が命じます。 ‘’立ち上がりなさい''】

近くにいたレイラに説明を求めていた彼らは、彼女の力を宿す言霊によりすぐさま立ち上がってしまう。
少年たちの意識下ではなく、その身体が本人たちの思惑をよそに勝手に動いたようにしかわからない。

いや、初めての感覚ではない少年――ネロはこれを知っている。
無理矢理相手を己の言葉によって制御させることが可能とする魔法――この魔法は、

「ね…姉さん…何するんだよ…!!」

ネロの姉である、目の前にいるレイラ本人の魔法であった。
弟の問いかけに、彼女は答えない。

「さぁ、あの御方の理想の未来の為に…第一関門として立っておきましょう。かかってきてください。 ハンデとして、私《わたくし》の魔法は使わずにおいておきましょう」

「聞いてないのか姉さん!?アイツ…が、姉さんの言う御方なのか!!?」

「構えなさい、でないければ――」

「っ…!!ネロ!避けろ!!」

家族にそれでもなお言葉で語りかけようとする少年に、女はただ非常に掌を構えて――ネロの横腹へと掌底うちを叩き込んでいた。
せっかく息を整えていたであろう茜色の少年の息を止めかねない程の威力により、ネロは10メートル近く枯れていた3本の内の木を崩しながら吹き飛ばされていった。
その光景にラクサスは己の身体が未だに震えている身体に活を入れるように膝を叩きながら実感してしまう。
今から、もう先ほどの健全な手合わせじゃなく、

「殺めてしまいかねないので」

命のやり取りであることを。

「さぁ、最後の御稽古です――ネロさま」

太陽の輝きが雲によって隠れていく中、打ち込んだ手を戻す女性の頭に牛の角が生えていく。
そして彼女の身体にうっすらと模様が浮かび上がり――ラクサスが感じたことのない魔力と似た威圧感を荒れさせる。

「命かけの御稽古を始めましょう…ワクワクするのでしょう?」

脇腹を押さえながら立ち上がったネロに目に映るのは――9年間接してきた中で見たことのない、愛すべき家族の狂気をはらんだ姉の美しい笑みであった。



 
 

 
後書き
 

ネロ:ボロボロのジャージ
ラクサス:雷のデザインのTシャツ(子供の回想シーンのアレ)
セイラ:豹柄の着物で少し花魁風。なおカチューシャだけ身に着けている様子。

 ゼノバース2ストーリーによるボスたちのレベル
サイヤ人編のベジータ
通常状態<6レベル(18000)
大猿状態<10レベル(180000)

フリーザ編のフリーザ(第一形態)
第一形態<20レベル(戦闘力53万)



現在FTワールドのラクサスとネロのレベル。
ネロ<19レベル
ラクサス<20レベル

尚、FTワールドでは星破壊はない。
もしドラゴンボールのボスキャラ達がFTワールドに来たらおしまいなのですが…そこまたメッセージ次回のあとがきに明らかにします。


★セイラ→涼月天セイラ

FTワールドでは魔法とは別の力、呪法を使う。
★呪法:命令(マクロ)
人を操る呪法であるが、本作では彼女の言霊により相手の身体を制御するものとします。


セイラのレベル:28
なお、FTワールドでは星破壊はない(現在は)


次回予告


異変と化したネロが慕う姉セイラ。
セイラと戦闘を始める少年たちであったが、呪法による攻撃なしでも苦戦を強いられてしまう。
このままじゃ少年たちがやられてしまう中、姉はネロにある言葉を言い放った。
「貴方さまが強く思う力の根源、魔法の使い方をご理解を」

次回、妖精のサイヤ人。

「第十一話:愛すべき家族に祝福を 」 
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