イベリス
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第四十五話 考えは変わるものその六
「実際にな」
「私から見たら物凄い馬鹿だけれど」
「けれど咲もそんな奴は聞いたことあるだろ」
「それでいつも馬鹿って思ってるけれど」
「昔はそんな奴も結構いたんだ」
今から見ると恐ろしいまでの愚か者だがというのだ。
「けれどあの国にしても実態がわかってな」
「皆そう思わなくなったのね」
「赤軍派もな、カルトもな」
その彼等もというのだ。
「オウムの事件があってな」
「変わったのね」
「そうなんだ」
「成程ね」
「しかしな」
それでもとだ、父はさらに言った。
「本当に咲もカルトには注意するんだ、それと人の考えはな」
「今変わるって言ったわね」
「実際にな、だからお父さんもなんだ」
「所沢に行くのね」
「今は何とも思っていない」
「それはいいことね」
「西武ドームに行くつもりはないけれどな」
それは言うのだった。
「ヤクルトの試合がないとな」
「交流戦ね」
「交流戦パリーグが強いけれどな」
「確かに強いわね」
「阪神が毎年交流戦でも優勝していてもな」
「阪神はもう無敵じゃない」
それこそとだ、咲は話した。
「だから比べたら駄目でしょ」
「毎年勝率七割だからな」
「特に巨人に強いから」
かつての自称球界の盟主にだ。
「いつも勝ってるからね」
「それも圧勝でな」
「巨人に負けるのって年一回や二回でしょ」
「本当に巨人に強いな、阪神は」
「というか巨人が弱過ぎる?」
咲はふとこう思った。
「あれはね」
「まあな、勝率一割台だからな」
「しかも防御率毎年七点台でチーム打率二割いくかいかないかじゃない」
「ホームランは七十本でエラーは二百普通にいくからな」
「怪我人は異常に多いしお家騒動ばかりでね」
それでタイトルホルダーも長い間出ていない。
「もう何もかもが駄目な」
「人気もないからな」
「そんなチームでね」
「阪神は特に強いからな」
その巨人に対してだ。
「毎年巨人にそこまで勝つとな」
「強いわよ」
「それもそうだな」
「他のチームにもいつも勝ち越してるけれど」
最早ダメ虎という者はいなくなっている、甲子園では六甲おろしが鳴り響き風船が気持ちよく上がっている。
「巨人にはああだからね」
「まあ阪神は仕方ないな」
「それで阪神勝ってると日本にもいいことがどんどん起こるわね」
「阪神の優勝自体がいいことだって言うしな」
それで日本の景気浮揚にも貢献する程だ。
「だからな」
「阪神が勝つことは日本にいいことね」
「ああ、しかしお父さんが十代の頃は」
父はまたこの頃のことを話した。
「阪神は弱かった」
「滅茶苦茶弱かったのよね」
「最下位の常連だったんだ」
俗に暗黒時代と呼ばれている。
「投手陣はよくてもな」
「打線が打たなくてエラーばかりで」
「それで勝てなくてな」
「それでよね」
「あまりにも弱くて」
そうしてというのだ。
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