Fate/WizarDragonknight
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6章
プロローグ
昔から、他の人が嫌いだった。
自らのよりどころとしている大好き。それが、他の人には稚拙だと言われていた。
それでも、自分はずっと大好きは大好きのまま。馬鹿にするやつは大っ嫌い。
でも、そうしているうちに、周りには誰もいなくなっていた。家族なんていなかったから、誰とも会話しない日々が続いた。
学校は行った。でも、行って帰っての繰り返し。惰性としかいえないものが体を動かしたけれど、サボったときも何回もあった。
友達なんてものも出来なかった。クラスにいる他の同級生になりたいと何度も願ったけど、そんな望みを叶えてくれる悪魔も天使もいるわけがない。
そして。
そんな退屈な日々の中、彼がやってきた。
願いを叶えにやって来たと、彼は言った。モニターの中から手を伸ばしてくるのは不気味だったけど、闇って感じがしてとても好きになった。
その後も、実際彼が宣言したように、願いを叶えてくれた。
自分が作ったあらゆるものが現実世界に現れるようになっている。自分が作ったものたちは、気に入らないものを壊していった。
町も。人も。馬鹿にした奴らも、これで黙らせた。
それも、人知れず。行方不明とか言われているニュースの半分くらいは、自分が犯人だって誰も知らない。
彼は時々忙しそうで、自分のもとからいなくなっていた。
先々月は全体的にとても機嫌がよかった。少しボロボロになっても、それ以上に大笑いだった。
でも先月は、少しご機嫌斜めだった。理由は分からない。
ただ彼が自分に言うのは、もっともっと、作りたいものを作ってくれってことだった。
だから、作った。いっぱい作った。
彼は自分が作ったもののうち一つを持っていった。ずんぐり胴体に、首が長い奴。いつかはメタル化したバージョンも作ってみたいと思った奴。でも、壊れてしまったらしい。別にいいけど。
そして今。
「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。閉じよ閉じよ閉じよ閉じよ閉じよ繰り返すつどに五度 ただ、満たされる刻を破却する。Anfang 告げる 告げる。汝の身は我が下に 我が命運は汝の剣に 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に 我は常世総ての善と成る者 我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
彼の指示に従ってその呪文を唱え終え、目を開けると。
「ああ……いい子だマスター。やはり君は最高だ」
彼が感嘆する。
それはいいけど、自分には目の前にあるものが何か理解できなかった。
一見、ただの岩石の塊のようにも思える。左右対称で、脳のような形をしたそれ。
白いゴミ袋だらけの部屋を搔きわける、黒。岩石らしきそれは、見るだけで圧を与えてくる。
これは何、と彼に尋ねてみる。
だが、彼はそれにははっきりと答えない。だが喜ばしいことのように両手を広げ、岩石に近づく。そして、それに手を触れた。
「素晴らしいぞ……! マスター、この戦い、私達の勝利だッ!」
その言葉の意味は分からないけど。
彼の、蒼い仮面の下にある笑みだけは、なぜかはっきりと見えた。
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