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仮面ライダーAP

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第5話 鉄血の砲火

 
前書き
◆今話の登場ライダー

水見鳥清音(みずみどりきよね)/仮面ライダーG-verⅥ(ガーベラゼクス)
 良家出身の「お嬢様」ながら、G-4スーツの装着実験で死亡した自衛官の友人の想いを背負い、装着者に志願した物静かな美女。仮面ライダーG-verⅥのスーツを装着した後は、「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」と呼ばれる一斉砲撃を主体とする射撃戦をメインに戦う。装備ラックが追加されているマシンGチェイサーに搭乗する。年齢は23歳。
 ※原案は魚介(改)先生。
 

 
「……お可哀想に。そういうことにでもしておかなければ、ご自分を保つことも出来ないのですね」
「なにィ……!」

 そんなブロンズフィロキセラに向けられる、怒りでも憎しみでもない、哀れみの色を帯びた女性の声。その声の主はGチェイサーに跨り、遥か彼方から急接近していた。
 良家の令嬢でありながら、自衛官の友人の「遺品」である強化外骨格を装着している水見鳥清音(みずみどりきよね)。彼女が纏っている「仮面ライダーG-verⅥ(ガーベラゼクス)」のスーツは、陸上自衛隊で試験開発が進められていた「G-4」の流れを汲んでいる曰く付きの代物であった。

 黄色に発光する両眼。赤と白を基調とする装甲、原型機のG-4よりもさらにマッシブにしたシルエット。右肩に刻まれた、G-6というコードナンバー。その外観からは、中身が優雅な容姿の美女であることなど誰も想像がつかないだろう。
 怪人とされる者達も元を辿れば「人間」であり、特に主力の3人が日本人である以上、「国民」に軍事力を行使することは出来ない。そのしがらみを抱えている自衛隊から、警察権を持ち武力を行使できる警察に特例的に融通されたデータが、この機体の基盤にあるのだ。
 どれほどの屍を踏むことになろうとも、必ずノバシェードを潰し無辜の国民を守り抜く。その鉄血の信念が、G-verⅥというスーツを形成しているのだと言っても過言ではない。

「聞こえませんでしたか? ……哀れだと、そう申しているのですよ」
「脆弱な生身の女が……どの立場で物を言っているッ!」

 ダウンしているティガーとパンツァーには目もくれず、ブロンズフィロキセラは激昂に身を委ね触手を振るう。G-verⅥのGチェイサーは、その鋭い斬撃を巧みにかわしていた。
 彼女が使用している専用のGチェイサー。その車体の両脇には多目的巡航ミサイル「ギガント改」を搭載するための装備ラックが設けられており、遥花や迅虎が使っている通常仕様よりも、遥かに重量化しているはずなのだが。ブロンズフィロキセラの触手は彼女の愛車に、傷一つ付けられていない。

「ぐおぉおッ……!? こ、こんなバカなことがあるものか……! 通常兵器が改造人間に通じるなどッ!」
「通じますわ。……火力においてはもはや、通常兵器の域ではありませんもの」

 やがて、彼女のGチェイサーが艶やかなカーブを描いて停車した瞬間。そこから降りて来た彼女は、両手に装備した2丁のガトリング式携行型重火器――GX-05「ケルベロスランチャー」での一斉射撃を開始していた。
 従来の携行火器を遥かに凌ぎ、パンツァースマッシャーにも迫る火力を誇るガトリングガン。それを2丁同時に操るG-verⅥの猛攻は、再びブロンズフィロキセラを後退させていく。

「迅虎、紗月。……決めましょう」
「おうとも……!」
「やって、やるさッ!」

 その間にようやく立ち上がったティガーとパンツァーが、必殺技の体勢へと移行していく。ブロンズフィロキセラが攻撃に転じる前に決着を付けるべく、G-verⅥも「全火力」を投入する準備に入っていた。

「はぁあぁあッ!」

 両腕の爪をクロスさせて懐に飛び込み、一気に叩き斬る「ティガーチャージ」。四肢の無限軌道を回転させながら助走を付け、水平キックを見舞う「パンツァーストライク」。
 斬撃と蹴撃。その双方が同時に決まり、ブロンズフィロキセラは激しく吹っ飛ばされてしまう。

「お、おのれッ……ぐぅおッ!?」
「……これで、とどめです」

 さらに、立ち上がる隙も与えず。G-verⅥは2丁のケルベロスを連射し、ブロンズフィロキセラの装甲を削り取って行く。それと並行して、遠隔操作でGチェイサーを操っていた彼女は、車体に搭載されている2基8門のギガント改を敵方に向けていた。
 その弾頭の群れが飛び出す直前、ケルベロスをロケット弾を発射する「GXランチャー」に変形させた彼女は、ミサイルにロケット弾をぶつけるかのように同時発射する。

「うぐわぁあぁあーッ!?」

 ミサイル8発、ロケット弾2発。その絶大な火力を一斉に解き放つことで噴き上がった爆炎は、ブロンズフィロキセラの絶叫すら飲み込んでいた。
 「曼珠沙華(まんじゅしゃげ)」と呼ばれる、G-verⅥ最大最強の砲火。その威力はブロンズフィロキセラの変身すら解除させるほどの威力だったらしく、猛煙の中からは武田禍継の姿が現れている。

「がはッ! はぁ、はぁっ……!」
「清音、あいつまだ……!」
「大丈夫です、迅虎。……我々も全火力を使い果たしてしまいましたが、あなたもすでに戦闘を続行出来る状態ではないでしょう。人間らしく、降伏なさい」
「これ以上の争いなんて、こっちだって御免なんだからさ……!」

 都市迷彩の戦闘服を纏う、ノバシェードの幹部。指名手配書通りの顔を持つその男は、息を荒げて膝を付いている。
 そんな彼に降伏を勧告するG-verⅥ達も、先ほどの一斉攻撃ですでに消耗し切っていた。1人の死者も出さずに決着を付けるには、このタイミングしかない。
 それが彼女達の判断、だったのだが。

「……ふっ、くくく。まさかただの人間如きに、ここまで追い詰められるとは思わなかったぞ。確かに俺は、実に哀れな存在だったのかも知れんな」
「何が……可笑しいのですか」
「認めてやると言ってるのだよ。貴様らは人間としては、あまりにも強い。そして俺は改造人間として、あまりにも弱い」

 禍継は満身創痍の身でありながら、薄ら笑いを浮かべてなおも立ち上がっていた。その眼にはまだ、諦めの色がない。

「人間共の真似をしているようで癪に障るからと、今まで封印してきたこの『力』も……貴様らを認めてしまった今となっては、もはや使用を躊躇うこともない」
「……!? あ、あれはまさか……!」

 そんな彼の腰に巻かれていたのは――仮面ライダーGや仮面ライダーAPと全く同じ、ワインボトルが装填された「変身ベルト」であった。
 かつての英雄達を想起させるその規格に気付いた瞬間、ティガーは思わず声を上げる。それと同時に、禍継は歪に口元を吊り上げながら、ベルトのレバーを倒してしまうのだった。

「……変身」
「くッ……!」
「させるかァッ!」

 その瞬間、ベルトを中心に広がる輝きが禍継を包み込んでいく。不吉な「予感」を覚えたG-verⅥとパンツァーは、GXランチャーとパンツァースマッシャーを同時に撃ち込んでいた。
 それぞれの得物に残されていた最後の弾頭は、やがて禍継を飲み込むほどの爆炎を生み出していく。だが、猛煙の向こうにはまだ、両の足で立っている彼のシルエットが浮かび上がっていた。

「やったか!?」
「いえ、彼はまだ……!」
「こうなったら……もう1回ッ!」

 すでにGXランチャーも、パンツァースマッシャーも弾切れ。ならばとティガーは最後の力を振り絞り、再び爪を振り上げ猛煙に向かって突っ込んでいく。
 そして何もさせまいと、煙の中に爪を刺し込んだのだが。

「な、なんだとッ……!?」
「迅虎……!?」
「どうしたのですか……!?」

 その爪から伝わる「感覚」に驚愕し、ティガーはその場で硬直してしまっていた。G-verⅥとパンツァーも、何事かと仮面の下で目を見張っている。

「……貴様らもしていることだ。よもや、文句などあるまいな?」

 やがて煙が晴れると同時に、禍継の声が響き渡ると。3人の女性ライダーは、同時に瞠目していた。

「あ、あれは……!?」

 仮面ライダーGと瓜二つの外観を持つ新たな仮面ライダーが。ティガーの爪を、指2本で挟むように受け止めていたのである。
 Gと同一のデザインでありつつも、本来なら赤色である部分が全て銅色に統一されているその姿は、まるでかつての英雄が敵に回ったかのような錯覚と威圧感を齎していた。

「お前ら……旧シェードの技術も接収していたって言うのか……!?」
「俺達改造人間が絶対的強者でいるためには、この鎧がどうしても必要だったのだよ。……不本意なことにな」

 かつてのシェードが開発していた、仮面ライダーGことNo.5と同規格の外骨格。それを手に入れていたノバシェードの幹部は、軽く指先を捻るだけでティガーの爪をへし折ってしまう。

「突然変異により授かった、ノバシェードの奇跡たる俺達の『力』。旧来のシェードが培っていた、外骨格の『力』。その双方が混ざり合うことで、真に最強たる『力』のカクテルが完成する」
「ぐうぅッ!」
「迅虎ッ!」

 その「力」で軽く平手打ちされただけで、ティガーは勢いよく吹き飛ばされていた。彼女を咄嗟に受け止めたG-verⅥとパンツァーも、外骨格を得た彼の力に戦慄を覚えている。

「俺にこれを使わせた褒美だ。……貴様らには、『実験台』という役職をくれてやる。光栄に思いながら、死ね」

 全ての力を使い果たし、ブロンズフィロキセラを打ち破ったG-verⅥ達だったが。武田禍継という男にとっては、これからが第2ラウンドなのである。
 彼が変身する銅色の魔人――「仮面ライダーニコラシカ」は、ここからが本領なのだ。
 
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