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イベリス

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第四十三話 麦わら帽子その七

 その美女を見てだった、咲は思わず見惚れたが。
 美女は人ゴミの中に消えた、その美女のことを翌日学校でクラスメイト達に話すと彼女達はまさかという顔で口々に言った。
「そんな人いたの?本当に」
「渋谷に」
「道玄坂の方から来たの」
「そんな凄い美人さんが」
「ええ、女優さんよりもね」 
 東京にいれば時折見る機会がある、それで咲も言った。
「遥かにね」
「奇麗だったの」
「スタイルもよくて」
「モデルさん顔負けな位に」
「ええ、黒いスーツでね」
 その美女のファッションのことも話した。
「赤いネクタイでね、スカートじゃなくてズボンで」
「ズボン?」
「スカートじゃなくて」
「そうしたスーツなの」
「靴は黒のヒールで。黒髪を後ろでお団子にしていて」
「目は切れ長ね」
 クラスメイト達は咲が話した美女の外見の確認をした。
「細面で顎の先が尖ってる」
「そんな風なのね」
「色白でね、誰かしら」
「ひょっとして」
 ここでクラスメイトの一人が話した。
「道玄坂から来た人よね」
「そうだったわ」
 咲もその通りだと答えた。
「その人はね」
「道玄坂に魔法のアクセサリーのお店あるでしょ」
「ええ、有名よね」
「そこの店長さんがそうした外見らしいのよ」
「そうなの」
「もう驚く位美人で」
 それでというのだ。
「魔女って噂もあるの」
「魔女なの」
「それか魔法使い、魔術師だってね」
「それ本当?」
「いや、魔女とか魔術師っていうのは噂だけれど」 
 クラスメイトはこう返した。
「美人さんっていうのはね」
「本当なのね」
「それでその人の外見とファッションがね」
「私が見た通りなの」
「そうなのよ」 
 咲に真顔で話した。
「これがね」
「そうなのね」
「だからそのお店に行けばね」
 そうすればというのだ。
「その人にお会い出来るかも知れないわ」
「そのお店の店長さんだから」
「だからね」
 まさにその為にというのだ。
「若しかしたら」
「お会い出来るのね」
「そのお店でね」
「じゃあ今日もアルバイトあるから」
 それでとだ、咲はそのクラスメイトに答えた。
「時間があったらね」
「そのお店に行ってみるのね」
「そうするわ、いや本当に凄い美人だったから」
「確めたいのね」
「本当にそのお店におられるのか、そしてもう一度ね」
「お会いしたいのね」
「同性でも憧れるわ」
 そこまでの美人だったというのだ。
「その人は」
「あの、ひょっとして」
 別のクラスメイトが咲のこれまでの言葉を聞いて怪訝な顔で言ってきた。
「咲ちゃんその人に惚れたとか」
「女の人に?」
「違う?」
「違うわよ、私そういうの趣味じゃないから」
 同性愛はとだ、咲は慌てて否定した。 
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