おかしな作家
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第六章
「どうせ」
「ああ、ああした主張の奴は市民の為とか言うが」
「その市民は運動家だな」
「プロ市民だよ」
市民は市民でともというのだ。
「そうなんだよ」
「そういうことか」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「そうした奴ということでな」
「見ていくことか」
「ああ、ああした奴はそうそう変わらないしな」
「自分が偉いと思っていたらな」
「何を言われても聞かないしな」
程度の低い連中が言っていると思ってだ。
「そうだからな」
「それでだな」
「もう放っておけ、もう駄目出しされまくってるからな」
「そのうち誰からも相手にされなくなるな」
「お前だってあいつの本読んでなかったな」
「これからも読まないな」
このことも決めたというのだ。
「絶対に」
「そう思うのはお前だけじゃないんだよ」
「他の人も同じか」
「だからネットでも散々言われてるんだよ」
「そうだな、批判されっぱなしだな、それにな」
彼はここでだった。
平野のもう五十近いというのに茶色にした髪の毛に二十代の様なファッションそして変に鋭く全てを見下した様な目をネットで見て言った。
「五十近くのおっさんがこんな外見じゃな」
「そっちからも察しがつくだろ」
「ああ、年齢よりもな」
「ずっとって奴だな」
「若づくりじゃないな」
「作品と合わせればわかるな」
「成長してないんだな、ずっと」
それこそ若い頃からというのだ。
「あの賞を取ってから」
「そうだよ、そうした奴ってことだ」
「そうなんだな、他の人はどんどん成長していってるがな」
「こいつはそのままだ」
「どんどん読まれなくなるな」
彼はわかった、そして以後平野について言うことはなかった。
平野はそれからも発言一つ一つが批判されていき。
書いた本も売れなくなっていった、最早ごく一部のプロ市民やそういった者達の中で生きていくだけだったが。
彼は仲間内でだ、こう言った。
「最近の日本はおかしい」
「そうですね、右に行き過ぎです」
「どうかしています」
「マイノリティーのことも考えていません」
「右傾化も甚だしいです」
「そんな世の中は駄目だ、市民の為にこれからも言っていく」
こう言うばかりだった、だが。
そんな彼を見るのはもう仲間内だけだった、本が出てもプロ市民だけが買っていた。そのプロ市民達も寿命で減っていき。
後には誰も残っていなかった、平野自身何時の間にかいなくなっていた。彼がどうなったのか殆ど誰も知らなかった。そういえばそんな作家いたなで終わった。それだけだった。
おかしな作家 完
2022・1・16
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