リュカ伝の外伝
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やっぱり僕は歌が好き 第四楽章「性格の悪い者選手権開催」
前書き
何とか間に合った。
抗がん剤の所為で
書く時間が少なかった。
(グランバニア城)
ジョディーSIDE
まぁそこそこ忙しく仕事をしていると、この世の終わりの様な顔をした軍務大臣閣下と泣きそうな顔のレクが、陛下に連れられて歩いてくる。
超小声でレクに尋ねると……
「昨日の件……」
と、教えてくれた。
昨日の件とはプーサンの件だろう。
昨日の3時休憩の時に、死人の様な顔のレクと満面な笑みのポンが3階中庭で休憩していたので聞き出したのだ。
レクは言いたがらなかったが、ポンはベラベラ喋った。
これは楽しそうな事になるだろうと思い、私も陛下に付いて行く。
すると案の定、ポンの執務室へ……
扉を開けるなり、
「おい平宰相、面貸せ」
と陛下からのご指名が入る。
だが性格の悪いポンは、
「あ゛ぁ? 忙しいのが解らねえのか、なんちゃって国王!」
と、駄々をこねる。
いいから来い、話が進まねーだろ!
「良いのかなぁ、そんな事言っちゃてぇ? 面白いモノを見逃すぞぅ」
「……それは俺が楽しめるモノか?」
「性格の悪い奴なら楽しめるモノだ」
「行くぅ(笑顔)」
先刻までの険しい表情が嘘の様に満面の笑みで立ち上がるポン。
半ばスキップで我々の集団に合流すると、私を見て、
「何だ、性格悪い事を認めたのか?」と言ってきた。
「あの……僕と軍務大臣閣下は皆さんと違って性格悪くないので楽しめないと思います。仕事に戻ってイイですか?」
一言嫌味を入れてくるのがレクらしい。
「勿論ダメ。出世すると、それ相応の責務が付いてくるのだよ。諦めたまえ」
「『皆さんと違って』とか言う当たりが、お前もこっちサイドの人間って事だよ。諦めたまえ」
そういう事よ、諦めたまえ。
・
・
・
暫くグランバニア城2階を歩き、眼下に兵士等の訓練場が見下ろせる廊下へと到着。
「ここで待ってろ」
と陛下は言って、近場の階段を優雅に降りてゆく。
そして1階に到着した陛下は……
「あぁちょっと済まん。訓練を止めて僕の話を聞いてくれ」
と切り出した。さぁお楽しみの始まりだ!
「え~っと……この隊の隊長は?」
「はっ自分であります」
「あぁ君か。え~っと……中佐?」
「はっ! ジュガン・スターク中佐であります!」
「悪いね忙しいところ。実はとある噂を聞いてしまってね。一応確認に来たんだ」
「噂……ですか」
「そ……う・わ・さ。ほら、メイドとか噂話好きじゃん。んで、耳に入ってきちゃったわけよ」
「ど、どのような噂でありましょうか……?」
「うん。昨日ね、中央地区の中央公園でね、ウチの兵士がね、一般人にいちゃもん付けたんだってさ」
「い、いちゃもん……ですか」
「うん。しかもね、口論の末負けて、思わず斬り殺そうとまでしたんだってさ」
「そ、それは……い、一大事ですね……」
「しかも詳しい内容は、その一般人ってストリート・ミュージシャンなんだって。で、中央公園で活動してるんだけど、それを商売として取り締まろうとしたそうなんだ。ほらあそこは商売禁止じゃん。ストリート・ミュージシャンも少額ながら金銭を受け取るじゃん。だからあそこで音楽奏でるのダメって言ったらしいんだけど、口論の末ストリート・ミュージシャンは商売じゃないって結論になって、いちゃもん付けた兵士が逆上しちゃって暴力で解決しようとしたらしいんだ。 ……中央地区の警備をしてるのって、この部隊だよねぇ?」
「た、確かに小官の部隊が中央地区……並びに地区内の中央公園の警備をしておりますが……あの……そ、その様な報告は上がっておりません!!! も、勿論……昨日とは言わず以前も、その一般人との間に、多少の確執があったのかもしれませんが、小官の知る限り大きな問題にはなっておりません!!!」
「ふむ……じゃぁ只の噂かな?」
「……であると小官は確信しております!」
「部下思いだねぇ」
「き、恐縮であります」
「一応噂が出たって事で注意喚起して置くけど、音楽活動をしている人を迫害しないでほしい。勿論、法に触れる事をしてたら取り締まるのは当然だけど、音楽に関する興味の無さから差別するのは止めてくれ。そして……こっちの方が重要だけど、我が国で軍は国民を守る為に存在させている。その延長線上で王家を守ってもらってるが、納税者である国民を守る事こそが主目的である! 口論で負けてカッとなったからといって、守るべき対象に刃を向けるなどと言う所業は国王として看過できない。その点は重々注意してくれたまえ」
全員直立不動で陛下の話を聞いていた。
そして立ち去る陛下に、見事とまで言える敬礼で見送る。
ここまで伝わるくらいの緊張感だ。
あの中の一人が今回の件の関係者だ。
隊長さんを含め、隊員は誰も知らないのだろう。
知っていたら今頃皆にボロクソに詰られてるだろうに。
そんな事に思いを馳せながら1階を観察していると、我々の下に陛下が戻ってこられた。
因みに訓練してた部隊は、あまりの緊張感に襲われた為か、一時の休憩に入っていた。
う~ん。思ってたほど面白くなかったかも?
「アンタ本当に性格悪いわぁ……」
「お前が言うな! お前がこの道標を作ったんだろが! 昨日お前が最後に、性格の悪さを発揮しなければ、僕だってこの件は穏便に済ませてたんだ」
おやおやおや、如何言う事かね?
「あれ、バレてる?」
「あの部隊に、昨日の件が通達済みなのはピピンから報告は受けている」
となると、あの隊長は陛下に嘘を吐いた事になるが?
「全て通達済みで『今回の件を大きくしないようにと』指示してあるんだ。お前を飛び越して、僕に直接報告済みなんだよ!」
「うわぁ……軍務大臣も存外人が悪い(笑) やっぱりこっちサイドの人間だな」
「リュカ様との付き合いは少年時代からになります。性格もねじ曲がりますよ。ヨメも陛下と縁者ですし」
こ、これは……性格の悪い者選手権開催だな。
私がエントリーされてるのが不本意だけれども。
ジョディーSIDE END
後書き
サブタイトルの選手権……
あちゃ さんは
ノミネートもされないと思ってるよ。
だって あちゃ さん、
素直な良い子だもの!
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